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領主編 86話


 ハルバードウツセミから東。道を外れた先の森に、その前哨基地は位置していた。スターリム国の土手っ腹を突くように建てられたそれは、スターリム王都への侵攻を進めるフォマティクスにとって重要な補給手段のひとつになっている。


 俺たちは最低限の人数かつ、最も結果を出せる構成で補給基地を襲撃を決行中。そう、つまりは何時ものパーティーメンバーである。リンドウ率いるソード・ノヴァエラの警備隊は後方から追いかけるような布陣だ。


 「…サトル、見えてきたわよ」


 フル装備で固めたカルミアが指をさした先には、捕食者の目から逃れるかのように、ひっそりと小さな砦が建てられていた。森の中に上手く姿を隠すように建設されていて、土地勘がある者でなければ見逃してしまいそうなほど。ご丁寧にも壁には隠蔽工作の一環として、壁には近辺の草木を、魔力か何かで付着させている。さしずめギリースーツを纏った砦といったところか。


 (スターリム国の南東端とはいえ、国の中間位置に前哨基地を置かれていると聞いたときには、どうなっているんだとは思ったけど…これは見つかりづらいな。見た目の隠蔽に加えて、認識阻害の魔法でもかかっているのか?カルミアが教えてくれるまで全く気がつかなかった)


 「こんな大きな施設が、見つかることなく巧妙に隠されていたとはね…フォノスはお手柄だな」


 黒い服に身を包んだフォノスは、少しだけ嬉しそうに答えた


 「お兄さんの役に立てるなら、なんでもするよ」


 フォマティクスの動きがきな臭くなってからというもの、フォノスは定期的にソード・ノヴァエラの拠点を離れ、単独で調査を続けていたようだ。敵国の臭いがする場所や出来事を徹底的に洗いつくし、俺とシールドウェストのアイリスに知らせを出してくれていた。


この近辺に補給拠点があることを割り出せたのも、フォノスが各拠点を徹底的に洗っていた副産物とも言える。何が結果と結びつくか分からないもので、彼の執拗とも言えるほどの近辺調査は、フォマティクスの重要拠点を突き止めることに貢献したのだ。


 「しかし、よくもまぁ…こんな隠された基地を見つけ出せたよね」


 フォノスはますます嬉しそうに答える


 「お兄さんと出会う前…孤児の子たちと日々食いつないでた時から探し物は得意だったんだ。ペットが森に逃げたとき、大事な宝石をなくしてしまったときなんかは、地元の人はみんな僕たちを頼ったんだよ。お兄さんが『ステキな力』をくれてから、この感覚はもっと鋭くなったけどね」


 「ねね、どうやって探し物を探すノ?アタシも覚えたイ!」


 サリーがフォノスに尋ねると、俺に答えたときとは違ってしぶしぶと言った


 「サリーお姉さんには難しいよ」


 「フォノス、教えてあげなよ。俺も気になるからさ」


 俺はフォノスの背中を優しくさすって促すと、にこやかに答えてくれた。


 「お兄さんがそう言うなら!……サリーお姉さんは探し物を探すときってまずはどうするの?」


 サリーは首をちょっと傾けて考えをめぐらすが、良い案が浮かばなかったようで、満面の笑みで答えた


 「あきらめテ、新しいものを作ル!」


 「…」


 フォノスは眉間にしわを寄せて、コホンと咳払いをしてから改めて言った


 「コホン…ええっと、これはひとつの事例だけどね。例えば、ハチミツを探したいときは、近辺に生息する二匹のミツバチを探すんだ。それぞれのハチを全く違う方向から放って、そのハチの行方を辿る。二匹のハチが丁度、クロスで交差する地点が、巣があるっていうことなんだ。人探しも、物探しも、手がかりに置き換えてこの法則を利用できるってことだよ。分かった?サリーお姉さん」


 サリーお姉さんは頭を抱えたようだ…


 「ウーン、ハチが交差するト……ハチミツが……生まれル……??」


 「………」


 カルミアが話を切り上げる


 「…みんな、基地の近くまで来たのだから少し静かに。サトル、指示を」


 「あ、あぁ…分かった」


 基地の外観を改めて確認する。ギリースーツを纏った砦のようで、外側からの侵入は、身体能力が化け物クラスでなければ難しい構造のようだ。砦を注視していなければ、目の前にあるのに分からなくなりそうなあやふやなイメージが植え付けられる。これは魔法による力とみて間違いだろう。


中がどうなっているか分からない以上、派手にぶち壊すのもリスクがある。もしかしたら捕虜が捕えられている可能性もあるからだ。となると…


 「フォノスは建物の中の斥候、カルミアは外側から入って、建物外にいる敵勢力の無力化、俺たちは入口から少し離れたところで待つから、無力化が終わったら門を開けてほしい。フォノスは門が開いたら一旦切り上げて戻ってきて」


 それぞれアイコンタクトして、作戦を開始した!



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