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領主編 72話


 ネオの体が光に包まれクラスチェンジが介入した。特別なクラスチェンジではないため、灰の世界現象は発生しないうえ、詳細にクラスを設定することはできないという制約があるが、今の俺なら通常クラスチェンジでもデメリットなしで十分な恩恵を与えることが可能だ。現状を打開するならこれで良い。


 ネオの意思が、強い気持ちが、俺の中に伝わってくる。『守りたい』その衝動が一つのクラスとなって浮かび上がる。彼の望むままに俺はクラスを与えた。


 *対象 ネオは『タワーシールドマスター』にクラスチェンジしました*


 *サトルの能力により、能力値にボーナス 更に『シールドバッシュ』を取得しました*


 眩い光に包まれる様子に怯んでいたオーガは、自身の怯えを誤魔化すように棍棒を振り下ろす


 「ヴォオオオオ!」


 「…もう、こんな思いは二度としたくないんだ!」


 ガァン!…耳を劈く衝撃音。光が霧散する。普通に考えれば、その質量武器で潰れたと思うだろう。ネオのパーティーメンバーの少女も目に手をあてている


 「大丈夫、間に合ったよ」


 俺の言葉が分からないオーガの表情は緩む。仕留めたという感覚が、謎の光へ感じた潜在的な恐怖心を落ち着かせる気がしたのだろう。しかし、その安堵の表情は次の瞬間に変貌する


 「絶対に守る!」


 ネオの声だ。その言葉は、あの時ネオを守ってくれたナイトの言葉と行動に重ねるようだった


 棍棒は大盾によって防がれていた。しかしネオは展開されたブロッサミング・バックラーを『片手』で扱っていたのだ!


 「ヴォ…!?ヴォオアアア!」


 オーガは驚愕し、何度も棍棒を叩きつける。これで仕留められなかったものなどオーガの記憶に存在しない。しかし、思い通りにはいかなかった。ネオはゆっくりと接近する。近づくにつれてオーガの攻撃は激しくなるが、すべて片手で受け流されている!ネオの表情に焦りは微塵もない。あるのは、ただ守るという気持ちのみ。


 「すべて手に取るようにわかります。[シールドバッシュ]!」


 十分に近づくとネオは飛び上がり、盾を振りかぶってオーガの顔へ全体重を乗せた盾の攻撃を繰り出した!頑丈な盾はそれだけで凶悪な鈍器となる。


 ガァン!という鈍い音をたてて、オーガの口から多数の歯が砕け散り飛んだ


 「ヴォ…ヴォッハ……」


 「ネオ!いまだ!やれ![戦音降ろし]!」


 オーパスは口元に魔力を灯し、指笛を鳴らす。[戦音降ろし]はバードとファイターでマルチクラス化し、オーパス専用のクラスとなった特別な技のひとつだ。周囲の味方を鼓舞して一度に多数の味方の能力を引き上げる能力がある。この土壇場の絶妙なタイミングでバフを入れるオーパスはさすがだ。前線でずっと戦ってきただけある。


 「これで、終わりです!!」


 オーガは思わず片膝をついて、顔を手で押さえる。その隙を見逃すネオではなかった。オーパスの合図に合わせてネオは頷くとオーガの背後に回り、背中を駆け上がって、首元でジャンプ。更に強い一撃をオーガの後頭部にお見舞いする。その一撃はオーパスの力も相まって、脅威を屠るのには十分な威力となったのだ!


 ガァン!…硬い物質がぶつかり合う音が響いて、オーガはロケットのように吹き飛んだ!


 勢いのまま地面にめり込むオーガ。シールドバッシュがうまく決まり、その巨体はピクリとも動かなくなった。


 勢いのつきすぎで、ネオも地面にぶっ倒れているが、彼の手は空に伸びている。空をつかむように握りこぶしを固めた。


 「ふぅ……はは、ぼ、僕が、倒せたんだ…」


 「やったじゃねえか」


 オーパスはネオのところまで駆けつけて、手を貸す。その手を借りてネオは立ち上がり、お辞儀した


 「オーパスさん、ありがとうございます。貴方の力が流れ込んでくるのがわかりました。そして、僕はもっとオーパスさんの警告に従っておくべきだったって反省しました……すべては僕が招いたことです」


 ネオはバックラーと剣をオーパスへ返そうとする。しかし、オーパスがその手を止めた


 「いや…違うぞ」


 俯くネオの肩に手を置いたオーパスは首をふった


 「間違っていたのは、俺の方だった。今ならあのいけすかねぇジジイが言ったことが分かる。冒険者ってのは命と隣り合わせの仕事だ。でもな、だからと言って、俺のモノサシでてめぇの夢奪うのは違う。お前は、とっくに命をかける覚悟なんざできていた。さっきの戦い見せられちゃ、そんなこと嫌ってほど伝わってきた。なにより、実力云々じゃねぇ。覚悟の度量で見てやるべきだったんだ。そして、覚悟がある者には、チャンスを平等に与えるべきだったんだ…すまなかったな」


 ネオは涙を流し、黙って頷くだけだった。ただ、その表情はこれまでにないほど笑顔である。


 …オーパスとネオの仲はこれで深まっただろう。そして、試験も問題は無いはずだ。イレギュラーはあったが、シールドウェストのギルドマスターもこの成果を見せれば納得してくれるはず。オーパスは今、立派にギルドマスターしている。誰が否定しても俺はそう言い張ってやる。


 「みんな!帰ろう!」


 俺はこっそりルールブックを腰にしまい直し、笑顔で手をふった



*********

データ


ネオ(クラスチェンジ前)


レベル1

ヒットポイント:3

筋力:2

敏捷力:1

耐久力:2

知力:10

判断力:5

魅力:10


ネオ(タワーシールドマスター)

※サトルのクラスチェンジによる補正あり

レベル:1

ヒットポイント:14

筋力:10

敏捷力:8

耐久力:14

知力:10

判断力:5

魅力:10


[シールドバッシュ]

一定確率で相手を怯ませることができる。

攻撃は筋力ではなく耐久力を参照するので頑丈なほど強くなる。


*********

オーガ(今回でてきたはぐれオーガ)

※ソード・ノヴァエラ近郊


レベル:1

ヒットポイント:20

筋力:20

敏捷力:1

耐久力:10

知力:1

判断力:1

魅力:1


今回出てきたオーガのデータ。

筋力と耐久力は高いが知能が低く行動が遅い。

攻撃は当たりづらい


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