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領主編 69話


 ネオがゴキゲンに軽い足取りで戻ってくる頃には、俺たちの番まで列が進んでいた。ちなみに、一番空いているオーメル店に並んでいる。ネオの目線は人気があるラグナ重工やミラージュに向いていたが、そこは見て見ぬふりをした。…スマン、ネオ。その行列は丸一日コースだ。俺には耐えられん。


 列待ちの間、彼は試し斬りスペースでの出来事を、まるで家宝を自慢するかのように目を輝かせて話をしてくれた


 「サトルさん、オーパスさん、聞いていますか!?それでね…エルフのお姉さんが僕の前に駆けつけてくれたんだ!ゴーレムの砲撃なんて、ものともせずに!」


 「そのエルフのお姉さんもすごいけど、ドワーフ組の連中はいつの間にかそんなすごい防具を開発していたんだな…」


 ドワーフ組、おそるべし


 ネオがペラペラ話している間も、オーパスは口をへの字にさせて腕を組んでいる。


 日が傾き始めた頃、ようやく自分たちの番が回ってきたようだ。戦士の男が笑顔で店から出ると同時に、店員さんがこちらに顔を向けて店の中へ案内するが、俺の顔を数秒見つめると笑顔のままフリーズ。再起動後は慌てて手をパタパタさせる。


 「たいへん長らくお待たせしました!お次のお客様、どうぞ!……ってぇええ!?さささ、サトル様ぁ~!?な、なぜ一般列ぃ~!?」


 少し驚かせちゃったかもしれないな…。


 「驚かせちゃってごめん、でもすごく繁盛しているし、君も楽しそうにお仕事できている姿を見られて安心したよ」


 店員さんはペコっと頭を下げるが、待たせてしまったことに納得がいっていないようだ


 「そ、そのお言葉は嬉しいのですが…それよりも!仰ってくださればすぐにでもご案内できましたのに…!このお店はサトル様の―」


 「いや、良いんだ。確かに君のいうことはもっともだけど、皆にとって無くてはならない場所だからね、平等に順番待ちするべきだよ。それより…この子の、ネオ君の装備を見繕ってほしいんだ。そうだよね、オーパスさん?」


 オーパスは意表を突かれたようで、面食らったが、照れ隠しを誤魔化すためか、すぐにネオの背中を押して店の中に入れる


 「お…おう、まぁ、なんだ…おい、ネオ!!なにしてんだ!とにかく早く店ん中入れ!」


 「へ…?あ、あっはい!?」


 ネオはオーパスに押されるがまま、店に入った


 店員さんはキョトンとしていたが状況を読み込んだのか、手をポンと叩いて


 「…なるほど!そういうことでしたか!それなら私も全力でサポートさせて頂きます!」


 といってオーパスたちの後に続いた


 …店員さんの中ではネオはオーパスの血縁に見えたのかもしれない。…いや、無理もない年齢差ではあるが


 店内はオープン当初よりも武器や防具が数多く陳列されていた。壁にはオーメル…店の名前のモデルとなった人物のサインとボコボコに凹み使い古された義手が記念品のようにショーケースに入れられて飾られている。


 それを発見したネオは興奮度を引き上げる


 「わぁ!オーパスさん!あの義手!僕の村でも噂になっている冒険者さんのものですよ!この目で見られるなんて、すごいなぁ~!」


 ネオがショーケースに張り付いていると、機嫌の良い声が店の奥から届いた


 「ほう~坊主、それの良さがわかるなんて、見る目がある子じゃないか」


 体ほどあるサイズのスパナを肩にかついだドワーフが顔を出す。…ドワーフ組の中でも変わり者と言われていた者が、ここの専属鍛冶師になっていたんだっけか


 いきなり出てきたドワーフよりもショーケースや壁の武器防具に気を取られているのか、ネオは顔も向けず返事をする


 「オーメルさんの武具ですよね~。格好良いなぁ~!僕はナイトになりたいけど、やっぱり体格が足りないのかなぁ」


 ドワーフはその様子に対して更に気分がよくなったのか、ネオの肩を叩く。どうやら、自分のことよりもオーメルをほめてもらうことが、このドワーフにとっては嬉しかったようだ


 「ほぼ正解だが、少し違うぞ坊主。冒険者は自分よりも強い相手を軽々と倒す。ではなぜ非力な人が、自分よりもずっと大きな魔物を倒すことができると思う?力も重要だが、本当に大事なのは『認めて知る』ことだ」


 ドワーフのその言葉にネオは初めてドワーフに顔を向けた。


 「認めて…知る?」


 ドワーフはスパナを置いて頷く


 「そうだ。自分の実力を認めて知る。状況を知る。そして手段を知る。そのどれもが、冒険者にとっては無くてはならないスキルなんだ。そうすれば自然と何が足りなくて、どう補えば良いか寄り道をせずに理解できる。坊主、お前は先の言葉で自身の体格について言っていただろう。それも立派な『認めて知る』ことになる。オーメル店は、常識を打ち破ることをモットーにしているんだぜ。力が足りないなら剣を、体格が足りないならパワーアシストを、経験が足りないなら頑丈な防具を…坊主、お前はどうしたいんだ?」


 オーパスはその言葉に付け加えるように、ネオに伝える


 「お前のどの選択も間違いじゃない。好きなもんを選べ…金のことは……若いもんが気にすることじゃねぇ、ドワーフの旦那が言うように、お前が弱いってことを認めて、強くて良い武具を選ぶところから始めてみろ。どの武具が良い?」


 ネオは二人の言葉にただ深く頷き…剣と盾をとった



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