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領主編 64話


 ソード・ノヴァエラ支部に新設された冒険者ギルドでは、ギルドマスターが暫定の者が取り仕切る状態が続いている。暫定的に配置されたBランク冒険者の当人としても、早く冒険者家業である本業に戻りたいとの嘆願が、何故だか俺の元に届いた。


何故冒険者に戻りたいのかと直接聞いたところ、ギルドマスターよりも冒険者としてこの付近の魔物を狩りしている方が実入りがずっと良いし、何よりも性に合っているとのことだった。…たしかに、ここの魔物は強くて狩るのが大変だが、素材は最上級で何にでも使える分需要が高いからな…。実力があるならその方が稼ぎ方は手っ取り早いだろう。


 冒険者ギルドとしても、いつまでも暫定人員を配置するわけにもいかないらしく「Aランク冒険者であるサトル殿が、最も相応しいと思えるギルドマスターをぜひ推薦してほしい。テストや手続きはこちらでやります」と連絡を貰っている。


 …俺は国側の立場になっているから、中立勢力であるギルドにはあまり干渉できないと聞いているが、それは良いのかと、心の中でツッコんだ。俺の立場もちょっと特殊だからなのか、未だにAランク冒険者としての顔と、領主としての顔が両立している面がある。ギルドとしては「Aランク冒険者」として俺にコンタクトをとって、人脈を頼りたい気持ちがあってのことなのだろう。それを汲み取らないほど野暮ではないから、手は貸したいと思う。領地にギルドを建ててもらった以上は、できることはするつもりだ。


 …そんなわけで、前々から考えていたオーパスをギルドマスターに推薦する予定だ。彼は冒険者時代からイエローアイというダンジョンに突撃を決め込む決死隊のようなチームを組んで、そのリーダーとしてずっと激しい前線を張っていた。そして、クラスチェンジさせた人物でもある。彼であれば、その経験とカリスマ性をもって皆を上手くまとめてくれるはずだ。…問題は、彼が了承してくれるかどうか。


 それから俺は、ダンジョン都市、ハルバードウツセミで活動中のオーパスへ諸々の事情をしたためた文をギルド用連絡鳥、ルチルちゃんに持たせて送り出した。その返答の文は一言「手伝います!当たり前じゃないですか!兄貴!」だった。


 ・・


 そして今日は、遠路はるばるハルバードウツセミからオーパスがやってくる日


 門の前で彼の到着を待っていると…


 「兄貴ぃ~~~!!」


 腕に黄色い布を巻いた、筋骨隆々の暑苦しいおっさんが大きな門を通り抜け、ドタドタと走ってきた。検問を無視してきたせいか、門番をしていた自警団に追われている。…俺は逃げたくなった


 「や、やぁ…オーパスさん。しばらくぶり、元気……のようだね(確認するまでもなかった)」


 「おう!兄貴から声がかかるまで、ずっとウツセミで潜って修行していたぜ!ってなぁ!」


 フン!と筋肉を膨張させて鼻息を荒くするオーパス。…一応、彼のクラスはバード(勇気の学派)と呼ばれるサポート系の後衛にファイターを組み合わせた、いわゆるマルチクラスなのだが……彼はどう見てもゴリゴリの純度100%バーサーカーにしか見えない。


 「こらー!検問から逃げるなーー!!」「追えー!」


 自警団らがオーパスを追ってきたので


 「すみません!俺の知り合いです!」


 俺が知り合いである旨を伝え、お仕事に戻ってもらった


 ・・


 酒場で食事をご馳走しつつ話を聞いてみると、あの戦からオーパスはずっと修行を続けていたようだった


 オーパスは食卓に並んだ肉の塊にフォークをぶっ刺して豪快に頬張る。


 「モグモグモグ……正直、戦では兄貴の役に立てた自信がなかった。祝勝会が終わってからは…ダンジョンに戻って戦いを続けていたってわけよ……モグモグモグモグ」


 「うん…オーパスさん、美味しいのは分かるけど、食べ終わってから話そうね」


 「モグモグ…すまねぇ兄貴。そして、うまい!ってなぁ!!」


 …ずっと修行していたのであればレベルも相当上がっているんじゃないだろうか


 俺はルールブックを開き、オーパスのキャラクターシートを参照する


*オーパス*

クラス:バード/ファイター(統合後:ブレイブバードと命名されました)

レベル:5

ヒットポイント:75

筋力:24

敏捷力:8

耐久力:17

知力:10

判断力:24

魅力:5


スキル

[戦音降ろし]

└周囲の味方を鼓舞して一度に多数の味方の能力を引き上げる

[協調挟撃・改]

└スキル所持者と同名の特技を習得した味方が同一の敵を挟撃している時、攻撃能力が上がる


[協調戦技・改]

└スキル所持者と同名の特技を習得した味方が同一の敵を攻撃する時、スキルの効果と威力が上がる


[協調防御・改]

└スキル所持者と同名の特技を習得した味方が同一の敵から攻撃を受ける際、防御力が上がる


※改になったことにより、オーパスのみスキルを所持している場合でも同様の効果を発揮する


 …つ、強い。スキルが特にすごい。


 …あれ、でも一般的な兵と比べれば相当強いけど、強いけど そんなにレベル上がってない気がする!?そして謎の魅力の低さと、地味にパーティー内でもダントツの判断力の高さ。実にオーパスっぽいステータスだ。


 スキルは新しく強調〇〇系のスキルが追加されている。これは俺も転生前から知っているスキルだ。これは仲間と同じ名前の強調〇〇スキルを持っている場合、両者に強力なバフがかかるサポート系パッシブスキルだな。ただ…オーパスが持っているものは『改』と命名がついている


 より一層サポート系の能力を引き伸ばしたスタイルに進化しているな


 レベルが思った以上に上がっていないのは気がかりだが、ギルドマスターの仕事は前線で戦うわけではないから問題ないか…?


 「オーパスさん、毎日修行していたんだよね?」


 「モグモグモグモグ…ん?そうだぜ。そりゃもう血反吐並なレベルってもんよ。でも不思議なんだよなぁ」


 オーパスは食事の手を止めてしかめっ面をする


 「なんだかサトルの兄貴がいないと、力が出ねぇっつうか。何時も以上に力を出せないって気分になるんだよ。自分でも何いってんだかって思うんだがな……」


 …彼の成長が止まっているのは俺の能力に関係するのか?そういえば別行動を好むフォノスも、パーティーでは唯一クラスアップまでレベルが上がっていない……偶然なのか、それとも


 …これ以上は答えが出ないな。そしてまだ答えがはっきりしていない内は、自分の中に秘めておこう


 「それなら、これからオーパスさんは元気一杯ってことだね。この町にいれば、俺との距離も近いことだし」


 「おう!そのためにも試験とやらに合格してみせるぜ!」


 オーパスはおかわりした肉を何枚もフォークにぶっ刺して豪快に喰らった


 食後はいよいよギルドマスターの試験だ。


 彼の勇姿を隣に立って、見届けることにしよう



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