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領主編 61話 ドヤ顔のジェームス Part2


 相方のトゥーマス、その場のノリで取り巻きにした輩とカジノとやらに乗り込んだ。


 カジノの開店は夜からと道中で聞いているが、既に件の建物はまるで夜の虫を寄せ付けるように、派手な光と外観で大勢の人を集めていた。


 外側は…魔石だろうか。魔石一つひとつを使って大きく大陸標準語で『カジノ』と書かれている。こんな魔石特有の発光現象をそのまま光源として使うようなやり方は見たことがない。勿体ないというか、贅沢というべきか。色とりどりの魔石の配列は不規則ながらも見る者を魅了しそうだ。…トゥーマスが「開店前から人が集まっている」と言っていたが、実物を見たら納得する。建物を見てなにが楽しいのだと思っていたが、考えを改めなければなるまい。自然と感想が声に出てきてしまう。


 「な…なんだこの建物は。すごいぞ…」


 トゥーマスは俺の肩に手を置いて体重をかけてくる。無駄に馴れ馴れしい


 「な?な?…すげぇだろう!これがカジノなんだよなぁ~~!!」


 何一つ自分の手柄でもなければ建物を所有しているわけでもないのに、まるで我が子を愛でるように自慢をしてくる。やはり鬱陶しい。だがそんな掛け合いなど今は気にならない。それに、純粋に驚いた点は認める他ないだろう。それほどまでに最初に目に入ったときのインパクトが強い。


 「あ…あぁ、たしかにこれは…見たことがない」


 圧巻され棒立ちしていると、客を整理させている店員らしき人物が周りに大声でアナウンスする


 「日が落ちきったら開店でーす!入場予定の方は整理券をとって列になってお待ちくださ~~いぃ!」


 その声にハッとする。それは俺たちだけではなかったようで、周りのみんなも一斉に動き始めた。トゥーマスが焦って俺の背を押す。


 「おい!乗り遅れるぞ!」


 「お、おぅ…すまねぇ」


 人がごった返す中、どうにか整理券を取って列に並ぶ。客層は冒険者風の奴らが多いが、商人やドワーフ、エルフや全身ローブの怪しい人物まで実に様々だ。町中の連中が注目しているのかもしれない。


 カジノの大きな入口から刺戟的な装いの獣人族の女二人が出てきた。黒を貴重としたどこの文化とも思えぬ衣服だ。湯浴み用の服かと思えるほど肌の露出部分が多い衣装で、ついつい目で追ってしまいそうになる。


 皆の注目を集める中、獣人の女がアナウンスする


 「皆様!今宵はお集まりいただき、誠に感謝申し上げます!そして、たいへん長らくおまたせしました!これよりカジノがオープンします!オープニングイベントは会場入口を真っ直ぐ!1刻に1度行います巨大なルーレットです!ウェルカムコインで参加できますので、ぜひお楽しみください!店内右手には、有名な吟遊詩人の演奏専用パーティーの方々をお招きしています!また、当店でしか楽しめないお食事とグッズも取り揃えておりますので、ぜひ心ゆくまでご堪能くださいませ!」


 示し合わせていたようなスムーズな言動で、つらつらと開店前の説明を行う獣人の子。話の大部分はよく分からないが、なんだかすごいことをやるってのはよく分かった。とにかく入り口に入ったら真っ直ぐ進めばいいのだろう。吟遊詩人は…興味がないわけではないが、俺の一番の興味はデート権…つまりは『賭けに勝つ』ことなのだ。


 「おい、トゥーマス。聞いたか?俺は吟遊詩人と飯は今はどうでもいい。真っ直ぐ行くぞ。お前はどうするんだ」


 トゥーマスは珍しく真剣な表情で考え込み


 「優雅な食事を楽しみつつ吟遊詩人の演奏を聞きに……と言いたいところだが、ジェームス、今日はお前についていくよ」


 と意外な返答をもらった。…何か企んでねぇだろうな?


 獣人の娘が一人片方ずつの大きな両扉を同時に開けた


 「記念すべきこの日を皆様とお迎えできることを感謝いたします!それでは、オープンです!お楽しみください!」


 その言葉と同時にッダっと流れるような人の動き


 「焦らないでくださ~い」「押さないでくださ~い」


 カジノに一歩入るとそこは異世界のようだった。赤を基調とした敷物、客対応をする者の服はみな上流階級を相手取る執事のようにビシっと決まっている。目を奪われる装飾、刺戟的な服の笑顔の女、見たことがない賭け事に使うと思われる遊具の数々。


 何よりも驚いたのは、吟遊詩人がどこにも居ないのに至るところから『音楽』が耳に響いてくるではないか。それも遊戯用の器具なんかからもそれぞれ音が出ている気がする…。一体何なのか。誰かが疑問を投げかけるが


 「あれは何だ?」「楽しそうな音が聞こえるぞ!」「この箱は何だ!?」


 俺も皆も、こっちが知りたいという気持ちだ。誰も答えられないだろう。それを知るために俺たちはここに来たのだから。


 感覚で分かる。これは闘技場なんて小さな枠に収まる遊びじゃない……


 大きな歴史の転換点に俺たちは立っているんだ。


 お調子者のトゥーマスも…さすがに顔をポカンとさせて、お上りさんのようにキョロキョロと…まぁ、俺もそうだが。


 ・・


 人の波に流されるように巨大ルーレットとやらに直行した。この場には既に人がぎゅうぎゅうに集まっており、獣人の娘が急かすように大声で参加を促しているところだった。


 「まもなく巨大ルーレットを開始しま~す!参加希望の方は説明をしますので、こちらまで!整理券の番号をお伺いしま~す!見学は自由ですよ~!!」


 と言うもんだから、トゥーマスの肩を掴んで一緒に参加希望を出そうとしたが


 「ジェームス、悪い…ちょっとトイレ行ってくる」


 トゥーマスは俺の返事も聞かずに行ってしまった


 「あ、おい!ちょっと待てよ!参加どうするんだよ!……あ~あったく、最初の一回は見学だなこりゃ」


 奴の足の速さだけは一級品だ。瞬く間にトゥーマスはいなくなってしまった。


 手持ち無沙汰になったので、説明をしている娘を目で追ってみる


 入り口に居たのとは別の獣人の娘が案内をしているなぁ。…やけに獣人率が高いのは気の所為か?オーナーの趣味か?……悪かねぇ、中々良い趣味だ。


 数分ほど経過しただろうか。暫く参加希望者を眺めているとトゥーマスが帰ってきた


 「悪ぃ、遅くなった」


 トゥーマスは俺の腰辺りを妙に何度か撫でて、ニヤリと笑みを浮かべた


 「どこ行ってたんだよ!最初の一回目のルーレットとやらに参加希望出せなかったじゃねぇか」


 俺が怒っていると素直に謝罪してくる


 「悪いって…埋め合わせは必ずするから」


 屈託のない笑顔を向けられると怒るに怒れない。だからこいつは苦手なんだ。まったく、デート権がかかっているんだぞ。仕方ないな。参加はできないが少しでも情報を集めよう。


 改めてルーレットを拝見


 巨大ルーレットとやらは大きな円のからくりのようで、獣人の娘の背丈くらいか…賭け事の遊びとしては大きい、のか?基準がわからねえが大きいのだろう。そのルーレットとやらの縁の部分にはたくさん数字が並んでいた。


 「数字の賭けか?トゥーマス、何か分かるか?」


 トゥーマスはニヤニヤしている


 「…いや、分かんねぇ」


 「何笑ってんだよ」


 「…別に何でもねぇよ。それより、始まるみたいだぞ!」


 そうこうしている内に最初のプレイヤー…8人が決定されたようだ。獣人の娘がアナウンスを再開した


 「おまたせしました!抽選の結果、記念すべき第一回の巨大ルーレットの参加権にご当選された、幸運な8名のプレイヤーが決定しました!整理券の番号でお呼びしますので、番号が同じ方はルーレットの席までお越しください!36番…12番…8番……」


 整理券の番号が読み上げられ、大型ルーレットを囲むように、指定された席に座っていく。


 「最後は……77番!以上の8名です。前までお越しください!」


 まったく幸運な奴らだ。受付していない以上、当選しているわけがないが、未練がましく自分の番号を確認する。俺の整理券は…77番だ。参加したかったなぁ…………ん?聞き間違いかな?今77番って言ったような?


 ポカンとしていると獣人の娘が再び読み上げる


 「77番!77番の方はいらっしゃいますか!」


 俺の整理券を見てみるとハッキリと『77』と記載されている。何度も確認しても結果は同じ。ホワイ、なぜ!?俺は参加受付していないぞ!?


 混乱していると背中をバシンと叩かれる。トゥーマスだ


 「おい、よかったじゃないか!いってこい!」


 その笑みはイタズラが成功したガキンチョのように歯をむき出しにして笑いをこらえている


 …こいつ!やりやがったな!?トゥーマス、お前が犯人か!!


 なるほど、たしかにさっき所持品を弄られたような感覚はこれだったのか!俺の整理券と奴の整理券が入れ替えられたんだ。でもなんでこんなまだるっこしいやり方を…


 「ほら!早くいかなきゃダメなんじゃないか~~~い!?」


 「おま―!」


 こいつが持っている整理券を奪って交換しようとするが、やっぱりかわされる。今日この日に至るまで、こいつが回避力がとてつもなく高いことを恨んだことは無いだろう。


 色々聞きたいことがあるが、時間がそれを許さない


 「77番の方!77番の方!居られないようであれば再抽選いたします!」


 くそ…トゥーマス!イタズラ好きも大概にしてほしい。覚えていろよ!


 「く………77番だ!」


 番号を掲げると周囲からの視線を独り占めにする。心の準備ができていないうえ、こんなに人に見られることなんて人生で一度も無かった。心臓が口から出てきてしまいそうなほどの緊張が体にのしかかる


 「夢の舞台へお上がりください!」


 腰に手を回され、ルーレットの席に案内される


 「あ、あぁ…わかった」


 要約すると早く席につけということなんだろう。最後になってしまったが、出来の悪いゴーレムのようなぎこちない動きで、皆が見ているなか着席した。全員が座り終わったことが確認できたので、獣人の娘が進行を開始する


 「さぁ!この8名の内、一体誰が夢をつかむのでしょうか!ルーレット開始です!ルール説明は先程行った通りですので、思い思いの番号にチップを賭けてくださいね!!」


 「うおーー!」「がんばれー!」「当選できなかった俺の分まで楽しめよおおおお!」「わあああ~~!!」


 参加できなかった者はそのまま観客となり、この顛末を見届けることに徹するようだ。羨むもの、笑っている者、疑い深く観察する者、全ての目という目が俺たち8人にのしかかっている。あまりに緊張しすぎてどうして良いか分からない。


 何をすれば良い?まるで分からない……


 俺以外の7人は金持ちな身なりで、冒険者と思われる者は俺一人だけだった。緊張している様子もなく、チップとやらをテーブルの番号に置いていく


 (なんで皆、そんな平気な顔して賭け事しているんだ!?まるでルールを熟知している…とと、そうだ!ルールだ。ルールだよ、俺は参加受付していないから、ルールの説明を受けていないぞ!?……トゥーマス~~~!!!!計ったなぁあああああ!!!)


 心の声が顔に出る。ここで『あの~、すみませんがルール知らないので教えて下さい』なんて言おうものなら受付していないこと自体がバレてしまうだろう。少なくともこの町での居場所を失う。そんなことになってしまったら……なんて、考えるだけで恐ろしい。


 観客席のトゥーマスへ恨みを込めた目線を送った。


 トゥーマスはサムズアップし、屈託のない笑顔で返してきた。


 ……うん、決めた。あとで締め上げる。それは良いとして今どうするべきか考えろ


 冷や汗が止まらない。どうすれば切り抜けられる?もう賭けなんて言っている場合じゃない。


 俺の中でのカジノでの目標が、賭けに勝つことからトゥーマスの不正をかぶった俺という状況がバレることなく普通に退席することにチェンジされる。


 俺だけが全くチップを賭けないことを不審に感じたか、この場を取り仕切る獣人の娘が声をかけてきた


 「77番さん、どうされましたか!?残り時間は20秒で締め切りですよ!他の皆さんは賭け終わりました。残りは貴方だけです!さぁ、どこに賭けますか!?」


 (んなこと言われてもルール分かんねえんだから困ってんだよおおおお!!なんていえるわけないんだよおお~~!!)


 冷静さを欠いちゃいけない。如何にも平気ですよといった風を取り繕って「う~ん」と唸りテーブルを見る。もちろん何も分からない。


 テーブルの上には7色それぞれ色分けされたチップが思い思いの番号の上に乗っている。俺が予想するに、この番号と何かが一致すれば勝ちなんだ。


数を数えるのは苦手だから、あまり大きい数字には賭けないようにしよう。不可解なのが、記号やら数字が連結している部分がテーブルに書いてある。その中で、ひとつだけ☆マークが書かれた箇所があった。誰もそこには賭けていない。


 手元を見るとチップが山のように積まれている。これが俺が賭けられる額なのかな?銀貨数枚程度しか持っていないが、チップにするとこれほど多くなるのだろうか?よくわからんが面白い仕組みだ。


 ひとまず一番大きくて格好良いチップを使ってみよう


 一番大きなチップを握ると7人が動揺する


 気にしちゃだめだ…あとは賭ける場所だな


 数字だと覚えられないし、この記号にしておこうか…。ルーレットの☆マークを見ると、他の数字がかかれた場所よりもヘコミが小さいように見える。当たりづらい細工でもされているのだろうか。どうするべきか……思わず一部声に漏れ


 「星マーク、か……あ手が滑った」


 動揺して☆マークに一番大きくて格好良いチップを落とした


 その声に反応するように他の7人が驚愕の表情


 「本気か…!?」「おいおいおいおい」「勝てるわけないだろう…」「頭おかしいぞ…」「それは私でもさすがに…」「えええ!」「その額で…勝負師だな」


 それに続くように獣人の娘が大きな声でリアクションした


 「おおっと!?77番さん、ここにきてジャックポット狙いだああ!賭け金もとんでもない額だぞおお!大丈夫なのかあ!?」


 ここにきて俺が何かやらかしたことに気がついた


 「え、あ…ちょ、まって」


 腰を浮かせて制止しようとするが時すでに遅し


 「さああ!!制限時間終了です!運命の時!ルーレットゥウウウ……スターーーーット!!!」


 獣人の娘がノリノリで大きな円を回すと、ルーレットと呼ばれたからくりは軽快な音を立てて回り始める。それと同時に、何処からともなく緊張感漂う音楽が流れ始めた。


 円とは逆回転するようにボールが外縁を辿っていく……


 ここに居る皆がルーレットの結果を固唾を呑んで見守る中、俺は何がどうなっているのか分からず、ただそのままの姿勢でフリーズしていた


 ボールが落ち、番号で何度か弾いては進み、弾いては進みを繰り返す。


 やがて、ひとつの奇跡に収まった


 カン………カン……カラン…コトン……


 ボールが落ちた先は…


 「え…うそ」


 どこから聞こえたかは分からない。その一声で静寂が破られた


 獣人の娘が手元にあった鐘を鳴らし、ありったけの声を張り上げる


 「ッハ…!?こ、コホン。でた!でました!!星マーク!!77番さん、まさかまさかの超豪運、大当たり中の大当たり!!ジャックポットだあああああ!!!まさかまさかの開店初日で最強の大当たりを引き当ててしまったあああ!?」


 わああああああああ!!


 それを見ていた観客も参加していたプレイヤーも皆立ち上がり拍手と歓声を送った!一緒にカジノまでお供した冒険者共は舞台に上がって俺を胴上げする始末


 俺は相変わらずフリーズしていたが、お構いなしと胴上げを受けるはめになった


 ・・


 状況が少し落ち着いて、獣人の娘からインタビューを受ける。もちろん皆の前で。俺は相変わらずフリーズしている


 「77番さん、大当たりですね!」


 「…」


 「今のお気持ちは?」


 「…」


 「この勝利を今誰に伝えたいですか?」


 「…」


 「使い道は考えていますか?」


 「…」


 「えーっと…生きてますかー?」


 緊張状況と想定外が続くと人間は喋ることすらままならない状態に変化するようだ。俺は俺自身の身を以て知ることとなった。だがそれじゃあんまりだろう。獣人の娘が困っている


 緊張で喋ることができないなら、せめて喜びを表情で伝えよう。ずっと真顔でフリーズなんてしてたら失礼になるだろう。


 自身に活を入れる


 俺は十分な間をとってから、皆の注目を集めるなか、満面の笑み(少なくとも俺はそう思っている)でこの歓声に応えた



 (ニタァ……)



 ・・・


 その後のことはあまりよく覚えていない


 トゥーマスが言うには放心状態に至った後、景品交換所で勝利して得た全てのコインを『受付嬢のデート権』に交換したらしい。その情報は正しいのだろう


 俺の行きつけの宿部屋には1万枚…それ以上は数えられない数のデート権が積まれているからだ


 俺は何を思ったんだろうか。


 自分の馬鹿さ加減に嫌気がさしながらも冒険者ギルドに向かい、全てのチケットを受付嬢に渡した


 受付嬢はたいそう驚き、俺の(物理的にも精神的にも重すぎる)愛情を『男らしい』と評価してくれたらしく、デートのみではなく、今後は真剣にお付き合いをしたいと申し出てくれた。この結果には俺自身考えても見ない結末で驚いたが、結果オーライだ。


 俺にとって大切なのはお金でも名誉でも強さでもないからだ


 一番欲しかったものがカジノで手に入った。それで十分だ。


 ・・・


 …そうそう、これは後から知ったことだが


 トゥーマスが元々持っていた整理券は77番ではなかったようなのだ。トイレに行くと出ていったときに、酔っ払いの介抱をしてあげたらしく、元々持っていたのはその時に紛失してしまったのだと。


酔っ払いをトイレに送り届けたときに、事情を伝えると77番の整理券をお礼としてもらっていたのだ。そして、この77番はルーレットの参加受付済みの番号だったのだと。


 トゥーマスは、万に一つもないと思いつつも、当選の可能性はゼロじゃないことに期待し、自分のせいでルーレットに参加できなかったお詫びも兼ねて、俺が持っていた番号とすり替えたというわけだ。


 あいつだって参加したかったくせに…いや、あいつこそが一番参加したかっただろうに


 俺なんかのために、あの時背中を押してくれたんだ


 …俺は、本当に良い友人を得ていたんだと、改めて思い知らされた


 ・・


 あの日あの時にカジノにいかなければ、友の思いを知ることができなかったし、受付嬢に対する俺の本気の気持ちも伝えられなかっただろう


 カジノで人生が変わるほど大きなことがあった


 でも、変わらないこともある


 俺にはツレがいる。趣味はツレとカジノに行くことだ


 そして、見目麗しいギルドの受付嬢に、冒険で得た成果を自慢するのだ


 前よりもずっと笑顔で出迎えてくれる受付嬢


 そして、いつものようにウザ絡みしてくるトゥーマス


 俺は得難い2つの宝物を手に入れたのだ。冒険者として名誉だと言われる二つ名も手に入れた。ほしいものは全て揃った


 ただ、そうだな…少しわがままを言わせてもらうなら二つ名が少し恥ずかしいことだ


 俺の名前はジェームス


 豪運と得難い2つの宝物を持つ冒険者の男


 カジノに出向けば、皆からはこう、呼ばれているよ



 『ドヤ顔のジェームス』 完


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