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領主編 59話


 カジノには様々な種類がある。専用の機材を使うタイプ…例えばルーレットやビッグシックスを始めとしたものだ。そして機材を使わないカード形式のブラックジャックやダイスを使ったもの。どれもこの世界には無い概念だと思われるが、機材を使わないタイプの賭けであれば、どこかで存在する可能性はある。俺が今回導入予定のスロットは前者に入るが、カジノを『全て』オートメーション化するのは面白くない。…もちろんイカサマ対策は万全にする必要があるが、それでも人対人という形式、直接相手にしたときの駆け引き…その楽しさを無くすのは勿体ないのだ。


 カジノの楽しさはコミュニティの形成と、それを支える基盤となる場を提供する2点に大きく影響している。イミスとガルダインが二人して盛り上がっていたところを見て、それを確信したのだ。同じ話題を通じてコミュニケーションを取り、その輪を広げることができればそれに勝る楽しさなんて無いだろう。同じ席について、互いの賭け方を見てみたり、勝ったときに超ドヤ顔してみたりね。…超ドヤ顔はウザがられそうだが。


 「ダイスをゴーレム式にするか…?異なるダイスを出した時点で反応するようにして、イカサマを防止したり…?いや、それともカードか!?カードなのか?」


 そんな気持ちもあってか、スロットの完成は目処がついたものの、それだけでは面白くないと他のジャンルも絶賛考案中なのである。


 あーでもないこーでもないと、一人部屋で紙に書き記しては修正案を描いていく。ちなみに俺のパーティーメンバーらはスロットもどきを一目見てスキあらば遊ぶためか、朝から皆してイミスの所へ出ていった。やはり、新しい概念は皆興味津々で好感触である。うちのパーティーは戦闘狂ばかりなので、そんな連中が夢中になって遊んでくれるとなると、完成したときの期待が持てちゃうね。


 皆が笑って遊んでくれる姿を想像するだけで、修正案を書いていくペンが進む


 「むむ、やはりお客さんを一緒くたに全てを提供するのは無理がある……そうか、信用の元成り立つのであればVIPだけをリスクが高い、人対人の賭け方法にすればいいのか」


 そうこうしている内に、ある程度の考えがまとまった。


 方針の結果としては、今回の計画で設営するカジノには、様々な種類の賭けを提供する。ただし提供内容と住み分けはキッチリ行うというものだ。


 一見さんであればスタートし易いスロットもどき。ルーレットは人対人だが、肝心の賭け道具の部分はオートメーションのようなものだ。これも一見さんOKで良いだろう。そしてダイスやカードなど、賭け方が手動でありイカサマのリスクが高いものは、身元が保証できる、十分に信用に値するVIP専用の限定方式にする。それに加えて賭け道具はゴーレム式にして持ち込みによる不正を防止する保険もかける…これで盗賊まがいの者が純粋に愉しんでいる者へ悪意が向けられることが無くなる


 「…こんなものだろう」


 導入するメインウェポンはスロットもどき、そしてルーレットもどきだ。サブウェポンとして導入するダイスとカードは最初は数セットだけを用意して、完全にVIP向けにする。もちろん、ルーレットもどきは未だ未完成だからイミスとガルダインにはあともう少し頑張ってもらうことになるな…


 「最後は服だ…!ばにー!ばにーこそ至高!いや、待てよ。ウサギって概念が無いよな……」


 カジノといえば綺羅びやかな施設に加え、美女による目の保養。しかしながら、この世界にタダのウサギ的生物は居ない。角が生えているものはいるが、どれもゴブリンと同じくらい平凡な魔物でありそれは『狩る対象』でしかない。そのような生物を模した服なんて作っても、なかなかウケはもらえないだろう。むしろ、本物の獣人がいるのだから、スタッフは獣人でも問題ない。本人がOKな場合は刺戟的な服を身に付けてもらって皆の目を引いてもらおう。


 「となると…ばにー担当のスタッフさんは獣人っと…これは楽しみ!」


 ある程度形になった草案を抱え、俺もスロットもどきの現場に向かう。……決して一人で計画を書いてて寂しくなったわけじゃないんだ。


 機材も揃い始め、カジノの建物はそろそろ完成する旨連絡をもらっている。あと数週間もすればこの計画が始動するだろう。


 …鬼が出るか蛇が出るか。何もかも初めての試みだ。上手くいかないことの方が多いはず。七転び八起き。理想が明確であれば前向きに体当たりできるものだ。俺には仲間がいるのだから




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