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3話


 カルミアが出ていくのを目で追って送り届けると、時間も遅くなってきたので部屋へ向かうことにした。


…俺も個室へ案内してもらおう。


暇そうにしていた騎士のような者へ案内を頼み、個室へ到着。


個室にはベッドが備え付けられており、調度品も高価そうだ。鏡があったので、そこで自分の姿を確認してみた。ずっと謁見の間だったので、ずっと気になっていたのだ。


 見た目は二十歳になるかどうかといった青年だな。前世の特色はそこそこ残っているが、全く同じという訳では無いようだ。黒髪で黒目、身長は百七十センチはありそうだ。痩せ型で全体的に地味っぽくて何処にでもいそうなフツメンだ!悲しいほどに!


身につけているものは青っぽいローブ、ローブの下は普通の服だ。鞄と大好きなテーブルトークゲームのルールブック、鞄の中は入館証のような板、ポーションっぽいものが二つ、しかもポーションの一つは腐ったような酷い臭いだ。お財布には銀色の硬化が数枚入っていた。使えそうなものはこれだけか。


 状況を整理しよう。環境や食べ物、ドワーフやトカゲの存在からして、まずここは俺がいた地球ではない可能性が高い。間違いなく転生とかその類だ。そして、遠征により蛮族王とやらの討伐ができなければ身ぐるみを剥がされるか、悪い場合はもっと大変なことになるだろう。俺はまだ戦う術を持たないし、まだパーティーメンバーは一人もいない。


 謁見の間から部屋まではかなりの距離があって、部屋の数や通路も迷うほど多くて窓は一つもなかった。ここではこれが普通なのだろうか?作りが頑丈そうだったので、抜け出すのは困難だろう。本を使って何かできないか?ちょっとそれらしいことをしてみよう。


「ステータスオープン!」


「…アイスボルト!サンダー!ファイアボール!」


「…」


何も起きない…。お約束はダメでしたか。


「くそ…!せめて、ステータスを見ることができれば打開策も生まれるのに」


考えつくことは全て試したが、ダメだったので不貞寝することにした。



* * *



 不気味な程静かな夜だったが、急に騒がしくなって目が覚める。金属をかち合う音や怒号が聞こえる…これは何か起きたな。チャンスかもしれない。どさくさ紛れに逃げられるかも!


手荷物をまとめていると扉が勢いよく開かれる。


「サトル…!襲撃よ!逃げなきゃ!」


カルミアだ!全力で走って来てくれたのだろう。激しく胸を上下させており、少し手が震えているのが分かる。個室の場所を教えておいて良かったかもしれない。襲撃なら俺だって襲われる可能性がある。


「襲撃者はやっぱり蛮族王と関係があるのでしょうか?」


「分からない…でも、既に死体があったから危害を加えることは確かよ。数が多いみたいだから、早くここから逃げなきゃ」


「よし逃げましょう!」


 襲撃だろうと何だろうと関係ない、命あっての物種だ。賊が出たならあの謁見の間にいた者たちがどうにかしてくれるはずだ。しかしながら運命は残酷なようで、扉に手をかけようとしたタイミングで運悪く賊が一人入って来た。


「ここにもいんじゃねぇかぁ…ヒヒヒ、女までいるとはラッキーだったぜぇ!」


心の準備をする間もなく、賊がナイフを構えて襲ってきた!


「…やらせないから」


 すぐさまカルミアが抜刀の姿勢を取り、半身になって斬りつける。瞬間、カルミアの体が鮮やかに光ったと思ったら既に相手の後ろ側に立っていた。


「グバアァッハアア!」


目にも留まらぬ剣裁きだ。一瞬時が止まったように固まった賊が、そのまま血を吹き出しながら倒れた。


…え?めちゃくちゃ強くない?こんなに素早く動けて強いなら確かに防具もいらないだろう、しかし腑に落ちないのは、他のパーティーから勧誘されたときに自分の強みをアピールしなかった点だな。


「…カルミアさん、すごいじゃないですか!感動しました」


カルミアは血を払うと帯刀し、呼吸を整えてから喋った。


「いえ…そんなこと、ない…」


よく見たら、カルミアの手の震えがひどくなっているように見える。


「助けてくれて、本当にありがとうございます。すぐに脱出しましょう」


「ええ…」


改めて見るとこの邸宅はとても広い。もはや城と言っても良いレベルかもしれない。直ぐに抜け出せるつもりが出口が見つからず焦りが募る。


「待って、この先にも賊がたくさんいる。迂回しましょう」


「ここもダメですか」


なるべく敵と遭遇しないよう迂回しながら進んでいると叫び声が聞こえてきた。


「ウヒョ~~~!! ウヒョ~~~!!」


この声は一体…?


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