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領主編 52話


 「一体なんだ!」「あの光は何!?」「か、神の啓示じゃ!!サトル様は神の御使いであったのだ!」「神の光だって!?」「どうなっている…!?」


 場は騒然としていて、1秒毎にその動揺や驚きは誇張され伝染する


 喧騒は俺の中でおぼろげになっていき、やがて聞こえなくなる


 ・・・


 「ん…?」


 気がつけば灰の世界にいた


 時が止まったように、開拓地の皆が驚愕した顔でこちらを見ている状態で停止している


 「クラスアップ…そうか、脳内に響いていた声が正しければ、俺はクラスアップすると…いや、おかしいぞ。俺はこれ以上クラスアップできないはず…」


 しかし、現にクラスアップができるという状況…どういうことだ


 俺のクラスアップはレベル10の到達時点で発生している。ここから更に上るなんてスターフィールドでは存在しない仕様だった。TRPGのスターフィールドと設定が酷似している世界ではあるが、そのルールや理が全てだとは言えない…ということだろうか。


 *サトルのクラスアップを開始します*


 「おや…?」


 俺の目の前に2つの球体が現れた。ひとつは暖かく神々しさを感じる青白い珠


 もう一つは、血や地獄を連想させるような赤黒い珠


 右手と左手、双方に珠は入り込んだ


 「何なんだ…?」


 特に痛みも体に変化もない


 *…大きな悪意が迫っています 戦いに備えて下さい*


 「…え?どういうこと?」


 脳内の声は答えない


 …初めて会話らしい発言を聞いた。大きな悪意、戦いか…


 *私は 見守っています*


 何事もなかったかのように灰の世界は崩れ去り、止まった時が動き出す


 光の奔流は俺の中に吸収されるように動き回り、やがて収束した


 *サトルのクラスアップが完了しました*


 *スキル[覚醒]を獲得*


 …何か強そうなスキル手に入れちゃったよ。


 クラスアップ時の言葉、何だったんだろう。そんなことを悠長に考えていると


 「み、御使い様…」「お救い下さい…」


 開拓地の皆が平伏するように頭を垂れていく


 …寛大にやらかしてしまった!


 そうだよ。皆が見ている前でクラスアップしてしまうとは!どうにかして場を収めなくては。こんなこと考えている状況じゃなかった。このままでは戴冠式どころじゃなくなってしまう!


 俺が慌てていると、アイリスが俺の横についてニヤリと凶暴な笑みを浮かべ声を張った


 「皆!見たか!これがサトルの覚悟であり答えだ!この後光は正しく神の啓示!我らが光と生命の神、アカトネイター神も統治者たるサトル殿と神聖なるこの地を祝福したのだ」


 皆の目はその言葉に輝きを増す


 「おお!御使い様!」「やはり…」


 …ちょっ!アイリスさん何いってん


 俺が顔をしかめると、アイリスは話を合わせろと言いたげにウィンクした。そして話を続ける


 「神と国、そして民に認められし統治者を阻む者は誰一人いない!我がスターリム国シールドウェスト領のアイリス・ジャーマンがこれを認め、証人となろう。サトル殿、前へ」


 …なるほど、クラスアップの光は神の啓示として有耶無耶にするということか。俺の能力はあまり人前に出せるものではないからな…。強引だが、今回はアイリスの強引さに助けられた


 「はい」


 アイリスは使用人から冠を受け取る。金ピカで踏んづけたら痛そうな刺々したものをイメージしていたが、実際に見ると、房飾りが近い。花の開花をイメージさせるようなデザインで綺麗だ。スターリム国王がつけているものよりもシンプルで控えめだが、当然か。あまりにも仰々しいものは困るので、安心した。


 俺はアイリスに向き合う形で膝をつき、胸に手をあてる


 アイリスはゆっくりとした動作で俺の頭に冠を宛てがってくれた


 「この日、この瞬間よりサトル殿は正式にここ、開拓地の領主となった!開拓地の名を刻み、戴冠式は完了とする!サトル殿、この祝福された地に名付けを」


 …ずっと『開拓地』じゃ格好つかないもんな。


 スターリムの正式な貴族による領土では命名のルールがある。最初に武器の名前をつけることが条件で、最後の部分は自由なのだそうだ。


 俺は武器の中では剣、主にカルミアが使うような刀が最も好ましいと考えている。実用的な分類でいくと槍や弓に軍配があがるが、かっこよさで言えば断然…剣なのだ。それでいくと最初は『ソード』になるだろう…本当はデュランダルとか名付けしたい。それはそれはもう、我慢ならないほどつけたい…だがそこは自重しよう。最後の部分だが、開拓地は新たな土地と希望溢れる場所にしたいからな


 …よし、決めた


 俺は立ち上がり、儀式用の剣を高らかに掲げ宣言した


 「この地の名称はこれより『ソード・ノヴァエラ』とする!」


 歓声喚起、拍手喝采


 祝福の謳歌は瞬く間に広がり、新たな土地と統治者を祝福するのであった



***

クラスアップ情報


サトル


クラス名:???(データなし)


レベル10(上昇値)

ヒットポイント:210(+30)

筋力21:(+3)

敏捷力21:(+3)

耐久力22:(+3)

知力23:(+3)

判断力25:(+3)

魅力31:(+3)


新スキル[覚醒]

能力:通常クラスアップによるデメリットを任意で除外できる

(サトルはまだこの能力の詳細を知りません)


***

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