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領主編 43話


 冒険者ギルドから誘致のお手紙を貰ったと思ったら、内容はまさかの条件付き。それも、冒険者や俺自身の資質を問うときた…。ギルドの狙いが分からないな


 何者かの思惑があるとしか思えないが…まぁ、分からないことを考えていても仕方がないか。…そんな時は自分にできることをコツコツとやっていくに限る


 「そうだ、今日はサリーの錬金術店の再開日だ」


 一時的に自宅へ避難させていた薬草類も店に戻す手伝いをする約束をしていたっけ。すっぽかしたら後が怖いからな…


 両手いっぱいに薬草を抱えてサリーの店まで向かう


 「おや?」


 開店前だと言うのに、店には既にたくさんのお客さんが賑わっていた。いつの間にか、この店も人気店の仲間入りを果たしていたらしい


 裏口から入ると、慌ただしくサリーが開店準備を進めていた。近くには見慣れない冒険者風の女性と、ゴブリンアシスタントが数匹、お手伝いをしている


 「サリーさん、おはよう!薬草ってここでいいの?」


 「あ!サトル!来てくれたんダネ!そこに置いてテ!」


 乱雑に積み上げられた魔導書を体で寄せて、余ったスペースに薬草の束を置く。


 相変わらずサリーの店…というより彼女が集める物は不思議なものばかりだ。個人的に収集したであろう置物や魔道具が配置されているので、店に入った時点では、何を売っているかイマイチ分かりづらい。そこも彼女らしいといえばそうなのだが


 「まだ開店前だけど、表にお客さん集まっていたよ」


 「色々サービスしてたラ、常連さんが増えてきたんだよネ~♪売上を伸ばそうとカ、全然そんなつもりなかったんだけド……あ!安心してネ!サトルとの冒険はいつでも出来るようにしてル!」


 元々、この錬金術店は四肢欠損を回復するポーションを売る名目で設置した。サリーは一時的な店主として起用するつもりだったから、彼女が錬金術店にかかりきりになってしまって、パーティーなどが別行動になってしまうことを心配してくれているのかもしれない。…優しい子だ


 サリーはシールドウェストで店を持っていた頃から常連さんをたくさんつけていた。持ち前の明るさと、どんな小さなことでも親身になってくれるところからか、どんなところでもお客さんのハートを掴んでしまうのだろう。


 「忙しいと店が中心になるからね。気にかけてくれて嬉しいよ。…そうか、だからアシスタントのゴブリンと、その子に?」


 サリーは冒険者風の女の子の肩に手をかけて微笑む


 「えへへ…分かっちゃっタ?この子はエルフのリバーちゃんと一緒に入ってくれることになった子だヨ♪アタシが留守の間は、リバーちゃんが店番してくれるけド、あの子、あんまり人に興味なさそうだかラ。この子はリバーちゃんの苦手な販売担当で手伝ってくれるのヨ」


 リバーちゃん……たしかサリーの父親のサリヴォルから、二人のエルフの面倒を見るように言われていたっけ。一人は鍛冶が得意なヘルゲだ。彼は武具店プロジェクトの一員として、今はミラージュの鍛冶アシスタントとして頑張ってくれている。リバーは錬金術に秀でたエルフだ。研究者気質で、あまり人と関わろうとしない。最近の動きも把握していなかったが…なるほど、サリーが影から面倒を見てくれていたようだ。サリーの常識離れしたポーションに思う所があったのか、錬金術店の手伝いを申し出てくれたようだ。同じ里出身でもあるから、話しやすいのかもしれない


 「そうだったのか…」


 俺は店員さんを買ってでてくれた子にお礼をした


 「サリーさんの相手をしてくれてありがとうございます。色々と破天荒な子ですがよろしくお願いします……」


 店員さんは慌ててお辞儀を返してきた


 「あ、頭を上げて下さい!!相手をしてもらっているというか、お世話になっているのは私のほうなんです!私がパーティーから外されて路頭に迷っていたときに、サリーさんが声かけてくれて……、本当に感謝しているんです。ご迷惑おかけしますが、よろしくお願いします!!」


 …すごく謙虚ないい子だった!


 サリーは俺にブーブーと文句を言ってくる


 「もー!その子が言う通りだヨ!アタシがしっかり面倒見てあげてるほうなんだからネ!」


 とても怪しい弁明だが、双方納得しているのなら、そういうことにしておく


 「…何か、そのセリフがもう説得力ない気がするのだが……?まぁいいけどね」


 「良いから手を動かしテ!ほら!開店するゾー!オー!」


 「おー!」「グギャ!」「グギャ!」


 サリーの掛け声に合わせて、アシスタントゴブリンと店員さんも片手をあげて気合を入れる


 「…ひょっとしなくても、これ…最後まで手伝う流れだよね……」


 サリーが店の札をオープンにかえて、お客さんを笑顔で出迎える


 狩りに行く前だろうか、やる気に満ち溢れた冒険者たちがどんどん低級ポーションを手にとって列に並び始めた


 「サトルー!調合で手離せないかラ、ごめん!二人でお客さんの相手お願いネ♪」


 「やっぱりかー!」


 結局、この日は仕事終わりに3人で酒場で打ち上げするまで離してもらえなかった


 サリーは久しぶりに一緒に過ごせて満足だと言って、ずっとニコニコしていた


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