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28話


ギルドの受付カウンター上には三つの新しい会員証が置かれていた。


「はい。依頼達成が確認できたため、本日付けでサトル様のパーティーは正式にDランクとなります。おめでとうございます! …こちらが新しい会員証です」


会員証にはDと大きく書かれており、その下には小さく骸骨がバツ印されているマークが追加されていた。


「ありがとうございます。ところで受付のお姉さん、このマークは何ですか?」


「そのマークは一度でも賞金首を討伐するか捕まえてきた者につくバッジのようなものです。マークが多ければ多いほど、多彩な任務経験をアピールできますよ!依頼者によっては同じランクでも、マークの種類を指定している方もいます」


同じランクでも、そのパーティーが得意としている傾向が見えてくるということか。面白い仕組みだと思うし、マークの指定ができれば依頼の達成率も上げられるだろう。


「なるほど…これは便利な仕組みですね。ところで報酬の件ですが…」


「はい。サトル様は『竜首のごちそう亭』所属なので、別ギルドでの依頼達成には手数料がかかるのですが…諸事情があって、手数料は無料とさせていただきます」


お姉さんは報酬の入った袋を取り出してカウンターの上に置いた。


「依頼達成の金貨、金貨三十九枚と…賞金首の捕獲で金貨百枚の報酬です。ご確認ください!」


一週間そこらでとんでもない金額を稼いでしまったな。命がかかっているから、これを安いと見るか高いと見るかは人によるかもしれない。俺たちは金貨を丁寧に数えて回収した。


「確かに、受け取りました」


報酬は三人分に分割して会員証と一緒に二人へ分配する。俺が均等分貰って良いのだろうか


「サトル…私、ランスフィッシュを食べてみたい」「あ!アタシもォ!」


二人の空腹は限界らしい!俺の反応を待つ間もなくギルドに併設されている酒場の椅子に座り、さっそく店主に何か頼んでいる。俺も食べたいのにズルイぞ!俺もすぐに向かおうとすると、慌てて受付のお姉さんが止める。


「あっサトル様…お食事後に新しいお仕事についてご紹介したいのですが、よろしいでしょうか?」


受付のお姉さんが持ってきてくれる仕事は美味しいお仕事だと分かったので、俺は快く返事をした。


「はい!食べ終わったらぜひ聞かせてください」


 すぐに二人の後を追いかけてテーブル席に着く。この町に来て…というより転生して初めて食べる魚介料理に心が踊る。俺たちは待ちきれず、周りに運ばれていく料理についつい目が行ってしまう。料理を待っている時間というのはどうしてこんなにも長く感じてしまうのだろう?


「へいお待ち!ランスフィッシュのピリ辛香草焼きだよ!」


テーブルにドン!と置かれた料理。これがランスフィッシュだろう。全体は細長く、口先が尖っていて尻尾に向けて徐々に体の面積が大きくなっているのがまさにランスそのものだった。ホカホカの煙と一緒に少しピリ辛な匂いが食欲をそそる!


「うまそうだぁ~!頂きます!」


ナイフを体に通すとふっくらとした綺麗な白身が…!旬なのか脂が乗っていて、とてもプリっとしている。一口食べるとハーブに近い香草と、まったりとしたピリ辛な味付けが魚独特の臭みを消していて、食べる度に癖になりそうだ…! 一口、二口と食べる毎に食欲が増してくる。


「サトル…私、ここに住みたい」「うま~~イ!」


二人ともランスフィッシュの味に虜のようだ…魚一匹が町の財を支えると聞いたときは誇張した話だと思ったが、なるほど…これは確かに旨すぎる。料理の味に感動していると、絶妙なタイミングでエールが運ばれてきた!三人で乾杯をしてすぐに飲み干す。少ししつこくなったランスフィッシュの味をスカっとさせるキリの良いエールが喉を潤した。


「お待ち!次の料理はランスフィッシュの唐揚げだよ」


次は唐揚げだ。揚げたてなのかまだジュウジュウと音をたてている。フォークで突き刺すと新鮮な脂が衣を少しだけ濡らしてサクっというさらに気持ちの良い音コンボだ。まずは塩だけでパクリ…。


「…う、ううう」


俺は感動して泣いた。


「サトル…私、ここに住みたい」「うま~~イ!」


二人は壊れた機械のように同じことしか言わなくなった。


…唐揚げもアリだ。ランスフィッシュ自体に良質な脂が乗ってて、シンプルな塩でも十分に楽しめる。衣がサクサクしていて、無駄な味付けがないから揚げ物なのに何度でもパクパクと口に運べる。少し形が不揃いだがそれがまた良くて、たまに軟骨が入っているのだが、コリコリとした食感が単調な味に不意打ち気味のアクセントを出している。これが何度も食べたくなるほどに旨いのだ。


 俺たちは胃袋の関係上二つの品しか食べられなかった。しか~し、また絶対に食べると…そう、まるで騎士のように誓いを立てた。魚の騎士三銃士の結成だ。銃はないが。夜まで料理を楽しんでしまったので、その日は受付のお姉さんに断ったあと、紹介された宿屋で泊まることにした。明日朝一番で新たな仕事を斡旋してくれるようだ。


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