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領主編 29話


 パワーアシスト機能を備えた武器開発をお願いしてから数日経過。武器のプロトタイプと、それを販売するための店の外装が出来上がったと、ドワーフ組から連絡がきた。手の空いたドワーフ組もプロトタイプの製作手伝いをしているらしい…やはり、彼らは種族柄か新しい技術というものに惹かれるようだ


 まずは武器の確認だ。イミスとガルダインが共同で使っている鍛冶場にお邪魔する。その鍛冶場は住居地域から少し離れた所に建ててある。武器を試すときに度々爆発やら流れ弾が飛んできたら大変だからな……


 鍛冶場に向かうまでの道のりで、開拓地の様子を確認するが、数日前よりも更に建物が増えていた。もうどの建物が誰の家なのか把握するのが難しいほどの数になっている。最初の内は、早送りのように一戸建てが完成する光景にワクワクして見に行っていたが、今では見慣れてしまった…。一日に何度も家が完成するとさすがにね。


 家の設計はエルフ型とドワーフ型、ヒューマン型でカテゴリ分けされており、それぞれが暮らしやすい設計になっている。エルフ型は外装自体が大木っぽいデザイン。ドワーフ型とヒューマン型はほぼ同じ平屋のデザインだが、ドワーフ型はヒューマンの家と比べて身長の兼ね合いで間取りがコンパクトだった。


その中でも、冒険者や狩猟で日銭を稼ぐ者は殆どの家が18坪程度のスペースで1階建ての平屋が基本だ。生活ができる最低限スペースしか無く、なんだか狭くね?と思い、開拓地で家を建てた冒険者にその理由を聞いてみると


 「あぁ…、家に居る時なんて寝ている時くらいですから。俺たち冒険者ってタイプの人間は、1日の大半は外にいます。冒険したり、魔物討伐したり、狩猟したり。仲間と呑んだり…大きなスペースがあっても持て余すってもんで。へへ…家が小さいと温度調節用の魔道具の節約にもなるんですよ。アレ、消耗品ですからね」


 という返答を貰った。ローコスト住居は節約意識の高い冒険者の味方のようだ。王都では土地の大きさによって税の取り立てが厳しくなる制度があるらしく、開拓地で先んじて家を建てた者は、そういった事情も踏まえて家のスペースを考慮しているのかもしれない。…俺としてはむしろ、強い冒険者には永く住んでもらいたいから、大きい家を建ててほしい。ランクに対する補助制度を入れることも検討してみようかな


 そんな考えを巡らせつつ鍛冶場に到着


 そこでは、丁度イミスがプロトタイプらしき剣で試し斬りしている所だった。ガルダインはイミスの背後で記録用の板を片手にヒゲを撫でている


 「っはぁ!」


 イミスが身長の倍ほどある鉄塊のような剣を振りかぶると、まるで重量を無視したように剣がターゲット用の岩を破壊する。…どうやら武器開発も順調そうだ


 「イミスさん、ガルダインさん。調子はどう?」


 イミスは片手を上げ笑顔で応える


 「あ…サトル君!これ見てよ!ガルダインと協力して、とうとう完成したんだ!」


 「すごいじゃないか!…どれ、近くで見せてくれ」


 イミスは自慢気に大剣を『片手』で差し出す


 俺は少し驚きつつも、それを『片手』で受け取ることができた。


 …どうなっているんだ?


 先程イミスが振り回していた剣をよく調べてみると、剣の持ち手…丁度鍔に当たる部分からゴーレムの小さな手が2つ伸びていて、大きな剣身を根本からガッチリと支えるように掴んでいるのが分かる。


 …なるほど、ゴーレムそのものに剣を『持たせている』のか。であれば、このような重たい大剣でも簡単に振り回せるわけだ。振り上げる時と、振り下ろす時にゴーレムのパワーアシストがあれば、片手剣のように扱えるというコンセプトなのかもな


 イミスのゴーレムは性能が並外れて高い。俺のような後衛タイプでも片手で大剣が振り回せる。力のある者が振るえば、その破壊力は正に鬼に金棒というわけだ


 何度か大剣を振るってみるが、全く重量を感じない。風呂上がりのタオルを振り回している気分だ


 ブンブンと風を切る音に、なんとなく気分が高揚する。もう俺最強なんじゃないか


 「凄いものを作ったね。たしかに、これであれば鉄という安い素材でありながらも、万人に利用できる汎用性を備え、武器そのものに価値を付加できる」


 ガルダインは記録用の板から目を離すことなく、鼻をならす


 「フン…当然じゃ。この程度、わしとこの娘であれば簡単に実現できる」


 だが、ひとつ問題があるな。プロトタイプは余りにも強力すぎる


 「このプロトタイプを基にして、より力を抑えたものを量産しよう」


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