領主編 28話
作戦会議も終了し解散とした。この場にはイミスとガルダインだけ残ってもらった
「もう二人共気がついていると思うが、ミスリルも竜魔吸石も希少価値が高い品だ。鉄のようには手に入らない。だから、現状ではガルダインさんがシールドウェストで配布してくれたような強力な武器を量産することはできない」
ガルダインは何かを思い浮かべながらも、不機嫌そうに鼻をならす
「フン…そうだろうな。で、商品の質の担保はどうするんじゃ。遠い所から開拓地まで来て得られるものは何もありませんでしたじゃあ、お話にならんぞ」
そうだ。だからこそこのプロジェクトにはイミスの力が必須になる
「そこでイミスさんの出番だ」
「…え、ウチ!?上質な武器や防具なんて作れないよ?」
「大丈夫だ。直接的な武具はドワーフのチームが作る。イミスさんには武器や防具の部品を作ってもらう。…ゴーレムでね」
イミスは首をかしげる
「…どういうこと?」
「イミスさんが新しい相棒のゴーレムを作っているときに、腕そのものに凄い威力の武器を備え付けていたよね。それ自体もゴーレムの一種であると。それを見て閃いたんだ。武器の質を希少価値の高い素材以外で高める方法は、ゴーレムそのものにあるってね。イミスさん、ゴーレムを作るうえで必要な素材と工程は何?」
「えっと…工程はウチがいれば短縮できると思う。素材は最低限のゴーレムであれば土で大丈夫。鉄があれば長く使えるかな…」
つまり、鉄鉱石でボロ剣を作るのも、強いゴーレムを作るのも素材の量と値段は変わらない…ということだ
「ありがとう。つまり鉄と魔石だけでゴーレム自体は成立するんだ。ゴーレムそのものを人の形から武器の部品のひとつとして作る」
「じゃが待て、剣の形のゴーレムを作っても、斬れ味が悪くて使い物にならんぞ。第一、ゴーレム自体を武器の部品にするメリットが分からん」
ガルダインが横槍を入れるが、やはりイメージは掴みづらいか
「あくまでも、ゴーレムは武器の補助的な部品として使ってもらう…そうだな」
デモンストレーションをしよう
「イミスさん、ガルダインさんちょっと外へ」
・・
二人を外に連れ出し、資材置き場までやってきた。ここには木材や大岩などがある程度整頓のうえ配置されている
「イミスさん、まずは適当で良いから土のゴーレムを作ってフォームチェンジしてくれ。何かを持ち上げられる形だと助かる」
「任せて!クリエイト・ゴーレム…続けて[シンティクシィ・オフェンシブフォームチェンジ]!」
何もない土塊から大男のようなゴーレムが出来上がり、イミスのフォームチェンジで腕型のゴーレムに変形し合体。今のイミスは片腕だけゴツイので見栄えが悪いが、急ごしらえなので仕方がない
「ゴーレムの力だけで、そこの大岩を持ち上げてくれ」
「はいよっ…と、これでいい?」
イミスは軽々と大岩を持ち上げた。
「あぁ、もう下ろしていいよ」
イミスはポイっと大岩を放る。岩が地面にぶち当たるときの地響きで、岩の重さが尋常ではないことは分かるだろう
「このように、良いゴーレムには素材問わず強い力が宿る。それがたとえ土くれであっても、100人馬力の腕を作れる。これはイミスの力あってこそ実現できる手法なんだけど、このゴーレム腕を小さくパーツ化して武器の部品にしてあげれば、『誰が同じ武器を使っても』ある程度『今と同じ力』を再現できるはずだ。名付けて…『パワーアシスト機能』!どうかな?」
ガルダインは目を大きく見開き、イミスもワクワクした様子だ
「…重要なのは素材の希少さではなく、力そのものを底上げさせる仕組み……なるほどな。お主は相変わらず変なことばかりを考えるやつじゃわい」
「ウチの子が世界に羽ばたくの!?こんなに嬉しいことってないよ!」
…まぁ、しかしだ。今のイミスの力を全力でゴーレムへと込めてしまうと恐ろしい武器になりかねない。今が1000%パワーアシストなら、量産品はせいぜい50%に留めるのが妥当だろう。魔石もゴブリン等、劣化したものを扱い、意図的にパワーセービングして売り出した方が良い。こちらの開拓地にギルドが完成したあかつきには、ランクに応じてアシスト強度を上げた武器を扱えるライセンスを付与すれば、ここの冒険者ギルドそのものの価値も同様に上がるだろう。これはまだ伝えないが
「まずはプロトタイプだ。ガルダインさんは通常通りに剣を…イミスさんはその剣にゴーレムを埋め込んでパワーアシストできるように設計してみてくれ」
「あい分かった」「うん!ウチ頑張るからね!」
二人もそれぞれ行動を開始する
少しずつ形になってきたな…