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領主編 27話


 皆の動揺が少し落ち着くのを待って、解説を続ける。


 「実際に見てもらって初めて皆さんが信じたように、ギルドで依頼を受けてくれた方は半信半疑でここまでやってくるでしょう。そのひとつの可能性にかけて…彼らには幸せな思いをして帰ってもらう。これが1つ目の仕込みです。そして、もうひとつ…ガルダインさん、例のアレはやってくれましたか?」


 俺はガルダインのポーンの横に剣のフィギュアを配置する


 ガルダインの意識は再起動して、どうにか返答をしてくれた


 「あ、あぁ……言われた通りにやってきたぞ。全く、いたずら小僧が考えつくことはよく分からん。シールドウェストを出る前に色付きの銘と指示された通りのマークを武器につけて、破格の値段で駆け出し冒険者に売ってきたぞ。使った素材もミスリルと竜魔吸石の合金じゃ。カルミア嬢ちゃんに打った製法と同じものと伝えた…。出ていくときは鍛冶場にはここに向かう書き置きを置いた。これで本当に良かったのか?」


 「100点満点です。さすがはAランク冒険者の専属ドワーフさん!」


 ここで少し持ち上げておく…これで機嫌をなおしてくれたら良いのだが……


 「…フン。ドワーフ使いの荒い奴じゃ」


 効果なしのようだ。ドワーフは気難しいな!


 「良い武器を手にした駆け出し冒険者は難しい依頼を安々と達成する。そのあかつきには、酒場で己の武勇伝を語るでしょう。他の冒険者は一際目立つ武器に必ず目を引かれるはず」


 ガルダインは不満そうだ


 「フン…わざわざ武器に派手な色をつける必要はあったのか?しかも3本だ。赤…青…黄色!全て違う色だ!武器の質は同じなのに全く意味が分からん!!」


 これが…普通に売るだけとは異なる明確な『違い』…そして、店のミニチュアの色もそれぞれ、赤、青、黄色なのだ。生き残るためだ…俺が知る世界で最も成功している商法のひとつを模倣させてもらった。ゲーム好きな人は皆、義務教育のように知っている手法だが、この世界では無いはず。これを利用しない手は無い


 「これが普通の売り方と差別をはかる手法のひとつです。そうだな…便利上、この手法をカラーブランド商法と言いましょう。…これが重要なんです。ガルダインさんが宣伝した3つのカラー武器は、赤字覚悟のモデレーターを作るための撒き餌。彼らが広告塔となり、ガルダインさん渾身の作品の性能を思う存分宣伝してもらいます。ただしそれはひとつではない。3つあり…それぞれ色が違うのです。ガルダインさんが一番知っていることですが、武器は使用する者によって、まるで別の表情を魅せてくれます。そうですよね?」


 ガルダインは何度も力強く頷く


 「あぁ、当然じゃ。同じ武器でも使う者によって、力強い武器にも見えるし、素早い武器にも見えるじゃろうな……お、お主まさか……」


 「そうです。同じ武器ですが、使用する者によって武器は表情を変える。全く同じ性能であってもです。大切なことは誰がどのように使うか、そして…分かりやすい印象を、見ている者へどれほど視覚的に与えられるかがカギになる…。色は分かりやすい印象操作の一つです。使う者が変われば、同じ武器とは『思えない』のです。1つしかない選択肢が3つ生まれれば、『買わない』という選択肢が消えるのですよ」


 …ちなみに俺は選択肢があれば全部欲しくなっちゃうタイプだ


 このプロジェクトは、魅力的な商品であるという前提が必要だが、そこはクリアできている…既にAランク冒険者のカルミアが使用したという箔がついているからだ。


 3つの武器が、それぞれ個性が異なる人の手に渡ることで一つでもいいから『欲しい』と思わせるニーズを産む、高性能な武器。


それは力持ちの手に渡り、その羨望を浴びるかもしれない。あるいはスカウトの手に渡りクールなイメージを刷り込むかもしれない。どんな成功体験でも構わない。このように、明確な個性は広告塔が勝手に作る…俺たちはその広告塔のイメージに合わせて店のイメージを客層に合わせて変えていけば良い…


 「ポーションの試験依頼と、とびっきり上質の『タイプ』が違う3種の武器…2つの仕込みで、どちらかが釣れてくれれば良いのです。結果的に武器をひとつでも良いので、ここで買ってもらうのが、ひとまずのゴールです。ポーションはサリーさんの気まぐれで作らせます。何時でも毎日用意できる環境では、持続的に来訪いただく理由が弱くなってしまいますから…まぁ、その心配も最初だけです」


 ブルーノーは眉間を抑えてため息をついた


 「なるほどな…で、ガルダインの装備を買った冒険者は意気揚々と『帰路』について、道中出くわすであろう強力な魔物と戦うハメになるがそれは『悪体験』ではなく、強い武器で簡単に討伐できたという『成功体験』に変わると同時に、その武器への信頼ブランドを育てると…そういうことだな?」


 俺は満面の笑みで頷いた


 「その通り!」



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