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領主編 22話


 「住めなくなってしまった…とは、どういうことですか?」


 竜人の里は標高が高いことから寒冷地で知られており、それ故に昔から炎の精霊を崇め祀ってきた歴史がある。炎の精霊と共存することで作物を育み生活の糧としてきた。どちらかと言えば閉鎖的で第三者に助けを求めることも少ないはずだ。


 土地自体にも歴史があり、伝統を重んじる彼らは厳しい環境であっても、そこから離れるという選択肢を取るのは考えづらい。リンドウも巫女という立場から、俺と行動を共にすることを断念するしかなかったという背景もあるくらいだ。だからこそ、里長の言葉に驚いた。


 「結論から申しますと、私共の里に、フロストドラゴンが住み着いたのです…」


 …フロストドラゴン。純血の属性竜の一角だ。スターフィールドの設定通りであれば、温度の低い地域を住処にしており、戦闘は好まない。しかしそれは性格上の理由であって、決して戦闘が苦手とイコールではない。むしろ戦闘力だけを見れば、火と並んで他属性よりも抜きん出ている。迂闊に手を出せば氷漬けのオブジェが一瞬で出来上がるだろう。体には常に氷の粒を含んだ扇風を纏っており、近づくだけでも困難な…まさに生きる災害。なるほど、たしかにそれは逃げるしかないが…


 「それなら…」


 …討伐しましょうか。と口を滑らせそうになる。生きる災害であったとしても、今のカルミアたちもそれは同じであって、準備を万端にしておけば勝算は十分にある。何より俺たちにはクラスアップ前の時点で竜の討伐経験があった。しかし、この竜人たちには逃げるしかない理由がもう一つあったのを思い出したのだ


 「…それなら?」


 里長が続きを促すが、俺は唾で言葉を飲み込み、しばし押し黙る


 それを別の意味で受け取ったのか、里長は説得に入りだした


 「我らの荷物からお察しできますように、サトル様であれば助力いただけるかもしれない…と、その優しさに縋ってしまったのは、否定できませぬ。…しかしながら、我らが真竜様の血を分かつ貴方様であれば、お導き下さるとも…」


 「…」


 …逃げるしかないもう一つの理由…それは、竜人が『竜』そのものを信仰対象としているからだ。彼らにとって竜は従うべき規範であり、心の拠り所なのである。そんな相手にサクっと善意から『フロストドラゴン倒しちゃいます?』なんて口を滑らせた日にはもう、色々と大変なことになるのは火を見るより明らかだった。


 俺は急いで発言内容を脳内で撤回し、彼らを迎え入れる算段をたてた


 「そ、それなら!この開拓地を第二の拠点とするのはどうでしょう?フロストドラゴンも、ずっと里に定着するわけでもないでしょう。それまではこちらに滞在してはいかがかと」


 俺の提案に里長や周りの竜人たちは表情を明るくする


 「おお、感謝いたします…必ずやお役にたってみせます」「さすが、真竜の血を分かつサトル様だ!」「真竜様の思し召し…」「どうか我らを導いて下さい」


 体格の良い竜人たちが膝をついて好き勝手に崇め始めるので、慌てて落ち着かせる


 「皆さん、落ち着いて下さい。俺はそんなんじゃないですから…」


 幸い、この地は手つかずで土地だけ見れば広大なもの。竜人の集落がひとつ集団に加わったところで、事実何の問題もない。しかし、彼らは崇めるのを止めない。しまいにはリンドウまでやってきて、場から状況を察したのか、彼女まで膝をつく始末


 「サトル様…やはりあなた様は私の…いえ、わたくしたちの希望でございます。竜の如きそのお力をもって、わたくしたちをお導き下さい」


 リンドウの進言に沿うように、竜人たちはそれぞれに『お導き下さい』の言葉を紡いだ


 …止めてくれ~~


 しかし、状況はもう覆らないだろう。それならば受け入れて、彼らにも役に立ってもらう方法を考える方が幾許か生産的だろう。…当初の計画よりも大きいものになりそうだ



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