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領主編 20話


 サリーのゴブ像からゴブリンが出現し、サリーの命令に従った。一定のダメージ量で光の粒となり消えてしまうという結果となった。俺でも同じことができるか検証してみたい


 サリーと同様に、ゴブリン像に手を触れて魔力を送り込んでみるが…


 ゴブリン像に変化は無い。…何故なのか


 ブルーノーに同じことをさせたが…


 「ダメだな…うんともすんとも言わぬ」


 ダメだったか。


 「サリーさん、その…もう一度、ゴブ像を出せないだろうか」


 サリーに付与されたアイテムなのか、サリーの膨大な魔力量による産物なのか。どちらにせよ、このアイテムは彼女にしか扱えない物になりそうだ


 「…ゴブ像!生き返っテ!」


 サリーが像に触れて願いを込めると、像は光り…やがて同じようにゴブリンが形成された。


 「ヤッター!ゴブ像だァー!」


 サリーはゴブリンが生き返った?ことに感激している。…これが宙返りに失敗したゴブリンと同じ個体かどうかは判別不可なのだが


 …なるほど。回数制限があるのかは不明。しかし、ゴブリンを召喚するという効果の再現ができるアイテムであることは確定だ。そして現状はサリー以外では使えないと


 「…ゴブ」


 サリーが形成したゴブリンは大人しく、人の言葉を理解しているようだ。


 物は試しだ。どれほど複雑な命令が実行可能か、俺の命令に従うかを調べてみよう


 「ゴブリン。これから毎日、朝の決まった時間…この木板に傷を刻むんだ。今日の分は今刻んでほしい。何らかの原因で傷を刻むことができない場合、その時点でバツの字に文字を刻む。それも出来ない場合は俺に知らせてほしい。知らせる手段は何でも良いぞ」


 俺は手頃な建材の余りの木板を使い、ゴブリンに説明するが…


 「……」


 ゴブリンは俺の言うことを聞いていない。どこか上の空で、黙り込んでいる。…やはりサリーの命令にのみ従うようだ


 「サリーさん。悪いが同じ内容を命令してみてほしい」


 「わかっタ!」


 サリーがゴブリンに対して同じように命令すると、ゴブリンは返事一つで行動を開始する。俺の手から木板を奪い取り、さっそく傷をひとつつけた。


 …サリーの命令には従うことと、時間の概念を理解していることが分かったな。これはゴブリンにあるまじき賢さだ。


 「サリーさん、ゴブリンをもう二匹出せるか試してほしい」


 サリーは頷いて、ゴブリン像に願い込めると、更にもう一匹、また一匹と出てきた。先に出ていたゴブリンはそのまま生きている。…数の制限を調べたいところだが、他の検証が先だな


 「このゴブリンはお腹が空いたら食事を要求するように、空腹にならない場合、そのままこの場所で待機するように命令を頼む。残りの一匹は…3日間、命令したサリーから出来る限り離れる。という命令を続けてほしい。どこまでの距離であれば命令が有効か確認したい」


 簡易的な首下げ名札をゴブリンたちにかける。それぞれ『食事』『距離』『時間』に分けて、『安全だから討伐しないでね』というメッセージも追加で記した


 復唱するように、サリーがゴブリンに命令すると、それぞれ従順に行動を開始した


 「ゴブ像たチ!サトルの試練に耐えるんだゾ!」


 「ゴブ…」「ゴブ…」「ゴブ…」


 サリーはゴブリン共に手をふって見送った


 …もしゴブリンを使って何かを始めるにしても、最低限のことは知っておきたい。上手く使えれば貴重な労働力になるからちょっとだけ期待。…ただ、ゴブリンには申し訳ないが、もう少し検証に付き合ってもらおう。一定ラインの安全性が確認できたら、このアイテムもフル活用していく予定だ。


 検証の結果が出るまでは時間がかかるため、他のことにも取り掛からねばならない。今日のところは解散し、サリーにはゴブリンの観察係をお願いした。もちろん喜んで引き受けてくれた


 ・・・


 数日後、サリーが検証結果を教えてくれた。


 まず時間の検証…便利上、時間ゴブリンとでも認識しておこう。時間ゴブリンは命令通り、決まった時間に木板へと傷を入れて、日付をカウントした。その間、命令には忠実に従い続け、敵対もしなかったようだ。少なくとも今に至るまで友好的な態度は続いている。


 続いて食事の検証ゴブリン…食事ゴブリン。驚くことに、一度も食事を要求することがなかった。生命活動に必要と思われる活動は一切行っていないとのこと。俺たちが知っている生き物の邪悪なゴブリンとは全く別物と考えるべきか…


 距離のゴブリン…距離ゴブリンは、今日サリーの元まで帰ってきたらしい。姿はボロボロ、足は泥だらけだったようなので、沼地を超えて戻ってきたと推測できる。サリーの命令には距離の制限もないと見た方が良さそうだ。目的を果たすという意味での忠誠心は疑いようがない。


 「…なるほどね。参考になったよ」


 サリーは心配そうに訪ねてくる


 「ゴブ像たちハ、どうなるノ?」


 …欲をかけば、白昼堂々に労働力として最大限活用したい。しかし、ゴブリンとは本来、凶悪な魔物でありヒューマンから見れば受け入れがたいものだろう。となると…


 「ゴブリンを労働力として受け入れるために、客観的に見て安全であることを証明する必要がある。ドーツクさんに、テイムされているという見せかけを作るしかないな。彼に事情を説明して、テイム用の首輪や腕輪をゴブリンにつけてもらおう」


 「分かっタ!サトル、ありがとウ!そういうとこスキ!」


 サリーはごきげんになって抱きついてきた。


 …どんだけゴブリンに愛着ついちゃってんだこの子は……



 ―こうしてゴブ像たちは、新たな住民?として受け入れられることとなった


 




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