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領主編 7話


 気の遠くなるような長蛇の列を乗り越えて、ようやく王都に入場できた!結局あれから丸1日を費やすことになったが、その疲れを吹き飛ばすほどの賑わいだ。王城、闘技場、商業施設、そしてダンジョン地区に分かれている。どこから見て回ろうかな?


 町の入り口は、大きな商会の店で埋め尽くされており、人の出入りも交わってごった返していた。俺が目をつけているのは、何が出るか分からないというダンジョンと、町の入り口付近にあるという武器屋だ。この武器屋はガルダインから教わった場所で、何でも腕利きのドワーフを大きな商会が抱え込んでいるらしい。蛮族王との戦いも終わり、魔物との戦闘や冒険者としての活動も徐々に減っていくかもしれないが、やっぱり男として新しい町に出向いたら武器や防具を見たくなるのは、サガというものだろう。ゲーム好きという生き物は特にそうなんです。


 「では、あっしはこれで。大体、酒場におりやす。帰る時にまた呼んでくだせぇ」


 御者さんは返事を待たず酒場まで馬車をゆっくりと進めていく


 俺たちも目的を果たしに行こう…だがその前に武器を見たい…!と思っていたが、カルミアのジト目がそれを阻止する!


 「…サトル、ただでさえ時間かかっているのだから、謁見が先じゃないの?」


 「……はい」


 「ウチはサトル君の、そういう無邪気なとこ好きだな!」


 「僕としては、王なんかよりお兄さんの希望を優先させたいけどね」


 イミスとフォノスが援護射撃してくれるが、カルミアの意見はごもっともなので、謁見から済ませることにした。出発前までは少し気を落としていたイミスだが、会話にも徐々に参加してくれて、少しだけ落ち着いてきたみたいだ。彼女の強化計画も進めないとな……


 人混みと魅力溢れる店からの誘惑をすべて払い除けて王城の前まで到達した


 城門の前にも兵がニ名おり、槍を交差させる


 「…」「…」


 兵は一切話さないので、俺はひとまず冒険者のライセンスカードを見せる


 するとようやく兵が口を開き、槍の交差を解いた


 「お通り下さい」


 俺は兵の立ち振る舞いから、厳格を体現したような人物像に感動していた。無駄口は一切なし、忠誠の先は王であるという明確な態度、どれをとっても正に王国兵そのものだ。きっと『接客』などという概念は存在しないのだろう。元いた世界でも、似たような概念を持つ兵士が居たっけな…そんな存在を思い出させる光景だ。だが、より警備の厳しい王城では簡単に通れるのに、町の門では追い払われた理由がよく分からないな……まぁ、いいか


 「ご苦労様です」


 「…」


 それでも一声かけて通ってしまうのは、何故だろうね。


 ・・・


 入城すると、大きなエントランスホールが俺たちを圧巻させる。巨大な光源はすべて上物の魔石が使用されており、数々の調度品はこの国の財力をこれでもかと見せつけているようだ。フロアでは数人のメイドらしき人物が控えており、俺たちを確認すると、すぐに対応してくれた


 「冒険者Aランク、サトルです。後ろに控えているのは俺の大切な仲間たちです」


 「サトル様…お連れの皆様。お待ちしておりました。本日のご予定は王への謁見かと存じます。現在34名待ちですので、待ち時間を利用しお召し物を変えて頂きます。まずは控室までご案内いたします。女性の方は、女性のメイドを付けましょう」


 王の謁見、どれだけ多いんだ…。王とはいえど楽な仕事ではないかもしれない。俺たちの姿を見て服を変えませんか?と提案をしてもらったので、有り難くそのアドバイスを受け取ることにした。


 「ありがとうございます、それでは案内をお願いします」


 俺とフォノスは別室に案内される。更衣室とは思えぬほど上等の部屋だ。部屋は香りつけのためか、匂いの強い花が配置されている。人が入れるほど大きな水桶には、同様の花びらが浮かべられていた。桶の周りは上質な布で仕切りされているものの、あまり隠されているとは言えない作りだ。


 「サトル様とフォノス様は、こちらでお召し物を着用して下さい」


 男性の使用人が数着ほど謁見用の服を用意してくれた。ここから好きなものを選べということだろう。用意周到にもフォノスの身長にもしっかり見合ったものが別途用意されている


 黒っぽいフォーマル、銀の配色がメインの一風変わったスタイル、大人しい感じのワインレッドのフォーマル……どれも高そうだ。


 「フォノスのはどれにするんだ?」


 「僕…?僕はお兄さんとお揃いがいいな」


 メイドは丁寧にお辞儀して進言する


 「サトル様、まずはお体を清めて下さい」


 「そうだよ、お兄さん!僕とお風呂入ろう♪この水、あったかいよ!?」


 フォノスはなんでそんなに嬉しそうなんだか…と水に足をつけるとその意味がわかった


 桶の水温はとても温かく、本当に本当に久しぶりに『お風呂』した気がした


 体中の細胞がじわ~っと緩んでいく気がする


 「あ~~~~」


 謁見に来て良かったと心底思った瞬間だった



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