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領主編 4話


 その夜。俺の家では冒険者Aランク到達と、先の戦での勝利を祝ってささやかな宴が行われることとなった。王の面会があるからすぐに出発するように!と言われている手前、アイリスには怒られそうだが…。だがしかし、コミュニケーションも重要な時間なのである。なあに、一日位は誤差だよ誤差。と誰に責められた訳でもないが脳内で自分を納得させる。


 実際、命をかけて戦場まで駆けつけてくれた戦友の皆には感謝するべきだ。この命も勝利も、今こうして集まってくれている皆のおかげなのだから。王の頼みとはいえ、こればかりは譲れないからな…。


 結構な広さのある家だが、援軍に来てくれた代表者だけを集めても、家が狭く感じるほどに人が多い。リビングと一部庭にテーブルを引っ張り出し、立食形式をとって、お手伝いさんとして冒険者を雇ってどうにか回せているといった具合なのだ。今は、ガヤガヤと皆談笑と食事を楽しんでくれている。


 皆に食事と飲み物が行き渡ったところで皆へ挨拶だ


 俺が挨拶に入ると知ると、皆静まり返り注目する。…やりづらい!


 「皆さん、どうか気楽に聞いて下さい。今日、俺が皆さんのお時間を頂いたのは、どうしても感謝の気持ちを伝えたいと思ったからです。俺たちのパーティーは、明日にも王への謁見に向かわねばなりません。その前に、感謝を申し上げたかったのです。俺が今ここで無事でいられるのは、命をかけて蛮族王との戦いに参戦してくださった皆さんのおかげです。本来であれば、代表者だけではなく兵の一人ひとりにご挨拶と感謝を申し上げたいところですが…代表者への感謝をもってこの気持ちをお伝えできれば光栄です。さて――」


 つらつらと感謝の言葉述べていると酒が回ったブルーノーが野次を飛ばす


 「おいおい!そんなこと言わなくたって俺たちゃ分かっているし、伝わっているぜ!挨拶はそこそこに切り上げて飲もうじゃないか!ガハハ!」


 ブルーノーらしい見解だな。俺も呑み始めようかなんてホッコリしているとオーパスがブルーノーに突っかかっていった


 「おい!ドワーフ!お前サトルさんの挨拶の邪魔するんじゃねぇよ!」「そうだそうだ!」


 「なんじゃとう~!?サトルとは付き合いが長いからこれで良い!これがドワーフ流じゃ!」


 「このオーパス様を差し置いて、そんなルールを決めんじゃねぇ!」


 両者、手に持った酒がカラになるまで飲み干して取っ組み合いを始めた!


 どちらも冒険者だからなのか…血の気が多いな!?俺のことを考えてくれての行動だろうが…


 「ぬおおおおお!」「ふんぬううううう!」


 ヒートアップする取っ組み合いが見苦しかったのか、竜人の里のリンドウがそれを止めに入った


 「こら!まだサトル様がお話されていらっしゃいますの!二人共、黙りなさい」


 リンドウの錫杖が数回地面を叩くと、夜の空を照らす程の火球が二人の頭上に現れた


 …いや、リンドウさん?君が一番過激な気がするぞ!?


 「サトル様のお話中ですのよ、…お分かりになって?」


 二度目の警告にブルーノーとオーパスは、頭上を見上げたあとに取っ組み合いをしていた手を素早く解き、抱き合う形で両者何度も頷いた


 「…サトル様、失礼致しました」


 優雅な礼を見せたリンドウは、何事も無かったかのように聞く姿勢に戻る


 「え~…はい」


 リンドウを怒らせてはいけない。俺はひとつ賢くなった


 気を取り直し感謝の言葉を述べた後、報告を加える


 「ゴホン…冒険者ランクについてもAランクを達成し、詳細は不明ですが王への謁見が控えているという状況です。此度の活躍の件とお伺いしているので、今後の活動にも関わってくるかと思います」


 俺は話を一度切って、皆に見えるように金色に輝く冒険者ライセンスカードを見えるようにかざす


 冒険者のAランク到達と紛れもない本物のカード…この町で二組目という偉業もあり、場は一瞬どよめくが皆、暖かな拍手を送ってくれた


 「サトル様!さすがですわ!」「俺の兄貴だからな」「オーパス、違うぞい。ワシの友人じゃからの?」


 Aランク以上の基準は存在しないため、事実上の名誉称号だ。冒険者としての区切りとも言える


 更に、戦場での蛮族王との戦いについて、現時点で分かっている『デオスフィア』の詳細について、そしてスカーレットという大切な仲間を失ってしまったことについて話す


 「俺は願っています。このような兵器で悲しむ人が一人でも減ってほしい。誰もが笑っていられる場所を作りたい。冒険者を続けていく内に、守りたいものがたくさん増えました。まだ何をするかは決まっていませんが、その決意だけは、皆に知っていて欲しかったのです」


 皆、最後まで俺の言葉足らずなお話を聞いてくれた


 サリーの父であるサリヴォルも同意してくれる


 「お前にはそれができると信じている。我らエルフ族は君の友だ。痛みが伴っても隣を歩こう」


 ガルダインも賛同の声をあげる


 「ワシは嬢ちゃん…いや、お主たちの武器となり防具となるために、これからも心血を注ぐつもりじゃがな。聞くまでもないと思うがの」


 他の人もサリヴォルやガルダインに続き、俺に賛同してくれた


 「…みんな、本当にありがとう!」


 その後の夜は、皆で俺制作によるボードゲームを楽しんだ。サリヴォルは一番ヘタだった



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