235話
軽々しくキメラの前足を受け止めるカルミア。カルミアとキメラの体格差は大きく、受け止める様があまりにも不自然に見える。
それはまるで赤子と大人が微笑ましくハイタッチしているようだった。しかし、その赤子である存在が大人の力を凌駕しているのだから、不自然さも増して極まるというもの。これには蛮族王も驚かずにはいられないだろう。
「ど…どういうことだ!お、おい‥ビアンカ!ふざけるのも大概にしろ!お前の力は、こんなもんじゃあないはずだろう!?こんな小娘一人に…」
「残念だけれど、こんな小娘に倒されるのよ」
キメラが前足を引っ込める前に、爪の先を掴みその巨大な体を横向けになぎ倒す。従来であれば不可能であった力業も、強化された今であれば造作もないのだろう。
「グルアアアア!?」
キメラは自身を上回るほどの剛力に抵抗できず、地面に強く倒された。衝突時に大きく地面を揺らし、轟音と突風を生み出す。上に乗っていた蛮族王は、その反動で身を投げ出された
「今、楽にしてあげるから」
カルミアは[電光石火の構え]で新武器の石楠花一文字に氣を集中させる
刀は主の意思を汲み取るように神々しくも力強い輝きでその刀身を満たす
「はぁぁああッ…万物を断て![天雷切]!」
構えから一閃を放つ
刀を抜き去るタイミングで視界がフラッシュし、強い耳鳴りが残るほどの破裂音が遅れて追いかける。そして、瞬間的に時が止まったように感じたが、カルミアが刀を鞘に納めるとキメラの装備が『空間ごと』斬り裂かれた!
キメラに装着されていたタンク、チューブ、そして石の全てが一瞬にして細切れのようになったのだ。ガラクタと化した装備品は斬られたあとも、バチバチと音を立てて帯電し続けている。
その後、唐突に天候が怪しくなった。どうやら雷雲が接近しているようだが…これもカルミアの影響か?
斬られたのは操るための装備品だけなので、キメラ自体は無事のようだ。地面に倒された衝撃で伸びてしまっているようだが…
カルミアのオリジナルスキル『天雷切』の効力はルールブック上で参照することができない。とてつもなく大きな力だが、キメラの装備品だけを狙う等の攻撃先をコントロールできるなら安心だ。ただ、天候まで変えてしまうのであれば、このスキルは安易に使ってはいけないやつだが。
「これで、この子はもう暴れなくて済むね」
「あぁ、キメラは自由に生きられるだろう。もう、暴れたりするなよ」
伸びているキメラを撫でてやると、安心したように眠りについた
さて…。蛮族王の切り札。最後の障害である操りキメラも倒したし、リビングソードを無力化された蛮族王は満身創痍。今までの借りをキッチリと返してやろう
少し見渡すと蛮族王は既に起き上がっており、得物の鉄塊を手にしていた。投げ出された衝撃を受けてか、体中がボロボロで息が上がっているが、まだ戦うつもりらしい。本当に救いようがない
俺は負傷しているため、カルミアに肩を借りつつも蛮族王の元へゆっくりと近づいていく
蛮族王は数歩後退りながらも口を開く
「はぁ…はぁ…。俺はここで終わる存在じゃない。そうだ、まだ兵が残っているはずだ」
周りはキメラが暴れまわった影響で荒れ果て、余波によって骸となった者だけだった。どれほどこの戦いが激しいものだったかを物語っている
「お前の兵は、お前自身が殺したようなものだよ。蛮族王、最期の希望はお前自身が断ち切った。お前の野望もここで終わりだ」
蛮族王は最後の力を振り絞って鉄塊を振りかざし突貫する
「黙れ黙れ黙れ……お前が、お前の存在が全てを狂わせた!俺は、俺は王になるべき男なんだよおおおお!!」
カルミアは俺を守るように一歩進み、刀を構えた
「うらあああああ!死ねぇえ![フューリー・ストライク]!」
「はぁああッ万物を断て![天雷切]!」
激しいフラッシュ、轟音と武器がぶつかり合う音…一太刀を入れ、交差する狂戦士と剣聖
そして……
鉄塊が斜めから綺麗に崩れ去り、その斬り口に添って、蛮族王の胴体にも深い傷が入った。間違いなく、絶対に助からない致命傷だ。
カルミアは血振りをして、ゆっくりと刀を鞘に納める
蛮族王は、崩れ落ち
「…不壊の……アーティファクト…なぜ。ぐ…デオスフィアをもって…して…も」
倒れ伏した
討ち取った………討ち取ったのだ
*レベルアップ情報*
サトル
レベル:10(上昇値)
ヒットポイント:180(+30)
筋力:18(+2)
敏捷力:18(+2)
耐久力:19(+2)
知力:20(+2)
判断力:22(+2)
魅力:28(+2)
スキル:
パッシブ:[クラスアップ]
特定の条件下で対象をクラスアップできる。クラスアップした対象は今までの強さや特徴を引き継ぎ昇華させる




