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232話


 これは悠長な考えをしていられない…。生きるか、死ぬか…そんな戦いだ


 「カルミアさん!全力で戦ってくれ!まずは生き残ることを考えるんだ!」


 「…分かった!」


 カルミアは反撃のためキメラに接近し、鬼神の如き攻撃を繰り出す


 「はぁああ…![雷切三十ニ連斬]!」


 巨大なキメラに攻撃を加えられる部分は、カルミアの攻撃レンジでは足元がメインになる。足元に雷切を何十にも斬り重ねた攻撃を与えた!初っ端から全力全開、正真正銘の本気の攻撃


 追撃効果のある雷撃と共に繰り出される神速の業は回避困難。武器のエンチャントも乗った超火力


 「ガアアアアア!!」


 カルミアが繰り出す苛烈な攻撃に怯むキメラ。足元には大量の切り傷ができる。しかし…


 「な…!?」


 驚愕するカルミア。それもそのはずだ。攻撃を加えたキメラの足元が、みるみる内に修復されてしまうではないか


 「ハハハハ!お前たちの努力は全て無駄なんだよ!いけ!ビアンカ、そのまま押しつぶせ!」


 ビアンカは前足でそのままカルミアを薙ぎ払う。驚いていたカルミアは咄嗟の回避が遅れてしまった。刀でガードするが、衝撃で大きく吹き飛ばされる


 「…っく。ぐふ…」


 刀を杖に膝をつくカルミア


 …これはまずい。


 「くそ![ファイア・ボール]![ファイア・ボール]![ファイア・ボール]!」


 俺は魔道具でありったけの火球を飛ばす。キメラの皮膚を多少焦がすがそれも瞬時に再生されてしまった


 「あの男も薙ぎ払え!」


 蛮族王が命令するとキメラは俺に対しても同じように前足を払い攻撃する


 杖で防御するが有効な訳がない。当たった瞬時に杖は真っ二つに折れて俺も吹き飛ばされる


 「ぐあああ…っく」


 「サトル!!」


 何度も地面にバウンドし、ボロボロになった


 意識も地面に叩きつけられる度に飛んでしまうが、どうにか首をふって気持ちを整える


 くそ…くらくらして視界が悪い。ぼんやりとした視界ながらもカルミアが駆けつけてくれたのが分かった。といっても彼女も攻撃をまともに受けてしまって満身創痍だが…


 「サトル‥!サトル!大丈夫?」


 「あ、あぁ…魔道具は壊れちゃったけど…カルミアさんも…大丈夫かい?」


 半分からねじ切れるように真っ二つになった杖…これはもうダメだな。


 俺は杖を投げ捨てつつカルミアの手を借りる


 「怪我は…?」


 俺の問いかけを無視しつつカルミアは俺の体をまさぐるように怪我のチェックをする。本気で心配かけさせちゃったようだ


 カルミアの肩を借りつつ立ち上がる


 ここまでピンチな自体に陥ったのは、カルミアと出会った日に領主の館から脱出する時以来だったか


 「何だか、懐かしいな」


 「何が…?」


 カルミアは俺を支えながら刀を蛮族王へ向けて警戒する。吹き飛ばされたおかげで少し距離がある。しかし、あのキメラであればすぐにでも距離を詰めてくるだろう。何か手を打たなくては二人共死ぬ


 「領主の館が襲撃されたあの日、絶望的な状況だったけど、カルミアさん。二人でボロボロになりながらもどうにか脱出したよね」


 「そう。あの時の私たちはまだ未熟だった…でも、毎日鍛錬を重ねてここまで這い上がってきたのよ」


 しかし、もう打てる手は何も残っていない。あるとすればカルミアを逃し、再戦を図ることくらいか…アイリスには悪いが、この身を犠牲にしても仲間を守りたい


 「カルミアさん。俺、実はとっておきの魔法があるんだ。でも、君を巻き込んでしまうことになる。だから君だけでも逃げてほしい。時間は稼げると思う」


 そんな魔法は無い。逃げてくれることを信じて必死に嘘ついてみるが…


 「はぁ…嘘ね。それなら今まで使わなかったことに説明がつかないわよ」


 早々にバレてしまった


 「カルミアさん。君だけでも逃げてほしい。また強くなって戦えばきっと勝利への可能性が残るから」


 「あなたの居ない世界なんて死んでいないだけの空っぽの世界。私はここで命尽き果てても、あなたと一緒にいるから…だから。私は、あなたの道を切り開く剣になる。今までも、これからも」


 俺の前に立ち[電光石火の構え]をとった


 キメラがゆっくりと近づいてくる。上に跨った蛮族王はひどく見下した笑みだ


 「儚いねぇ…お別れの挨拶は済んだか?安心しろよ。男、そこのメイガスもどきの女は俺が貰ってやるからよ!良かったな。女の命は助かるぞ!!ハハハハ!」


 「私はあなたの物にはならない。私が捧げる全てはサトルにあるのだから」


 蛮族王は顔を歪める


 「そうかそうか……そんなに死にたいなら、お望み通り殺してやるよ!ビアンカぁ!殺せ!惨たらしく!」


 キメラは前足を振り上げる


 一瞬だけカルミアがこちらを振り返り、何かを口ずさみ優しく微笑んだ気がした


 全ての動きがゆっくりと見える


 この後、このままではカルミアは死ぬだろう。その次に俺も後を追うだろう


 ここまでか…


 体の力が抜ける気がした


 全てのベストを尽くした気がする。でも、本当にそうだろうか?


 無意識の内に諦めてはいないだろうか?


 もう駄目だって?


 でも生きたい


 仲間と一緒に生きていたい


 ワガママであっても、そう思ってしまったのだから仕方がない


 俺は悲しむために生きているわけではないし、嘆くために死ぬわけじゃない


 最期に呟くは後悔の念ではなく、楽しかったと笑顔でいたい


 仲間と一緒にTRPG、ボードゲームで遊んで、ふざけて笑っていたい。


 他愛もない話で時間を贅沢に使いたい


 この世界は暴力で溢れ命は軽い


 痛みに満ちた剣と魔法の世界。しかし、こんな結末は嫌だ。俺は望まない


 そうだ。こんなの、認めない。認めてはいけない


 俺は、この世界で…元の世界では叶わなかった最高の笑顔を作り続ける


 たくさんの人と笑っていたい


 もう駄目だって誰が決めたんだ?


 何時だって限界は自分が決めるんだ。『次』につなぎ続ける限り、希望は生まれるんだ


 だから、こんなところで


 こんなところで、諦めちゃいけないんだ!!


 「カルミアアアアア!!!」


 叫び手を伸ばす


その時―――


*特殊称号到達の条件を達成……*


*称号を取得…報酬として経験値を獲得…*


*サトルを含むパーティーがレベルアップしました*


*レベル10に到達……仲間のクラスアップが可能です*


 

 とにかく守りたい…その一心で、カルミアを守るように後ろから抱きしめると、二人の体は黄金の光ほとばしるオーラに包まれた!


 地を割くほどのキメラの攻撃は光に阻まれ、弾かれる


 蛮族王は思わず中腰になってキメラから身を乗り出した


 「なんだ!?何が起こった!」



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