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23話


灰の世界が砕け散り、神々しい光は俺からドーツクとヒポグリフへと注がれる。突然の出来事でヒポグリフを殺そうとした盗賊は剣を振り上げた姿勢のままで硬直する。一人と二頭の光は次第に弱まり完全に静まったとき、覚醒したヒポグリフの姿に驚いた。


 ヒポグリフの姿は従来の大きさとは一線を画すもので、馬程のものだった姿は、体長三メートル、体高二メートルもある巨大な魔獣と化していた。姿は全体的に黒っぽくなっており、変形前の茶色と白のキメラチックな姿から自然な色合いに。羽は四枚になって、尻尾は棘がついた凶悪そうなムチ状へと進化した。ちなみにもう一匹は黒いヒポグリフに比べると少し小さくて体全体が桜色に染まっている。


「ヒイイ!」


硬直していた盗賊は一目散に剣を捨てて逃げようとするが、手綱をいともたやすく切ったヒポグリフ?はその盗賊の逃げる先へ飛び上がり先回り。大きな前足でその盗賊を床にはりつけると、その大きなクチバシで何度も何度も乱れ突き、あっという間にズタズタにしてしまった。鎧の上からも貫通するほどの強硬かつ鋭利なクチバシ…圧倒的な速度、恐るべし魔獣だ。


仲間の無惨な死に様を見せつけられた残りの賊三名は散り散りに逃げるが、桜色のヒポグリフも手綱を切り、凶悪そうな尻尾で次々に突き刺していく。


「おおぉ、お前たち…こんなに立派になって…僕を、守ってくれたのかい」


ドーツクは涙を流しながらその様子を見守る。もう、ドーツクを害するものは近くにいないだろう。それなら俺たちも反撃開始だ!


「カルミアさん!サリーさん!今です!」「おめぇら!何シてんだ!はやく殺せぇ!!」


両者の合図を皮切りに、こちらでも戦闘が始まった。カルミアが抜刀して[電光石火の構え]をとる。体がバチバチと激しい雷を纏って、正面から向かってきた敵三名へと無慈悲な斬撃を繰り出す。目にも留まらぬ一閃はやがて敵と音を置き去りに斬り伏せ、カルミアが血を払うのと同時に心臓に響くほどの雷音が鳴り響いた。


「…雷切!」


斬撃から繰り出された雷は敵の悲鳴と成り代わり、三名は無惨に焦げ死んだ。カルミアさまを怒らせると俺もこうなるだろう。何故か俺は他人事のような気がせず恐怖した。


 俺たちは包囲されていたため、後ろからも敵が同時に三名襲いかかってきている。サリーは予め用意していたのか何かのビンを投擲した。


「いっケェ~! レッドフェイスポーション! …ちなみに辛味の倍率を変性魔法で変えてあるから、ちょっとだけパワーアップしてるヨ!ビンも特製なんだかラ!」


サリーはあざとい決めポーズをしているが、盗賊はそれを見ている暇などなかった。血のように赤黒く染まった液が入ったビンが三名の内の一人に当たる。するとその液は付着した場所からシュ~っと溶けるような音と共にとんでもない臭いと、物質化したのではないかと思うほどの謎辛味空間を撒き散らす。


「ッグ…!グガガガ!」


穴という穴から激痛を感じた盗賊は意識を保つことも困難になったのか、そのまま倒れて起き上がらなくなった…。体からは煙が出ているように見えるし、シュ~っと出てはいけない音が出ている!周りにいた二名もあまりの辛さで悶絶している!辛味って何だろうか?俺はそんな疑問を抱いた。


「てめぇ!よくも仲間ゲッホゲホ…当たらなければ、ゲホ…意味はねんだよ!」


「それはどうモ!…おかわりだね?こんナ使い方もできるんだよっとっト!」


涙目で警戒しつつ襲ってくる賊二名へ、サリーは更に赤黒い悪魔のようなビンを投げつつ、ここで更なる魔法を加えた。


「エンラージ・マテリアル!」


サリーは敵ではなく、投げたビンへ魔法を付与した。するとビンはみるみる内に大きくなり、最終的には両手でようやく持てるかどうかというほど巨大になった。恐らくサイズを変更させる変性魔法だろう。既に錬金した魔法が付与されているから、本来では不可能な組み合わせでの多重魔法が成功したことになる。辛味?成分を増大させた液体はビンごと巨大化して敵に落ちる。


少量でも敵を気絶させるほどの力を持った悪魔の液体は、敵の頭へとシャワーのごとく降り注ぎ、その瞬間に二名は白目を剥いて倒れた所までは見えた。すぐにモクモクと赤い煙が辺りに広がる。数秒後、煙が晴れると、盗賊二名がいた所には武器と鉄くず、あとは骨らしきものが少しだけ残っていた。地面もそこだけ禿げ上がっている。ん?もしかして溶けた!?あまりの辛さに溶けてしまったのだろうか。サリー怖すぎるんだが?全然ちょっとのパワーアップではないんだが?辛味って何だろうか?俺は別物と化した辛味という名前の何かへ更に恐怖し、サリーとカルミアを怒らせてはならないという戒めを得た。



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