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215話


 防衛拠点のひとつとして、砦の建設を始めてから数日が経過した。


 真っ平らで何もなかった平原に、即席ながらも物々しい建築物が出来ていく光景には驚かされる。スターフィールドのルールブック設定上では、建設にまつわる魔法など一つもないが、地に関する魔法は山ほどあった。


 冒険者たちは、これらの魔法を独自に磨き上げ、発展させてきたのだろう。そう考えるとちょっと夢がある…何せまだ見つかっていないだけで、魔法の可能性は設定の内にとどまるものではないことを証明している、一つの結果なのだから。


 魔術師の一人が何かを詠唱すると、土が大きく盛り上がって、重たい資材を持ち上げたり移動させたりしている。地から大きな手が生えたと思ったら、その資材を掴んで器用に配置していった。


 この調子でいけば後数日あれば、難攻不落な砦と、その周囲を囲むバリケードが完成するだろう。そうなれば沼地からこちらを攻めることは簡単ではなくなるはずだ。


 ドーツクのオウルベアに乗せてもらい、哨戒しつつ拠点に戻ると、急ぎ足でアイリスの私兵がやってきた。


 「サトル様!ご苦労様です。至急お伝えしたい情報が」


 「お疲れ様、どうしたの?」


 「はっ、ここ数日…砦の上空に飛行型の魔物が飛び回るようになったのです」


 俺も気になっていた点だ。この世界では、上空を縄張りにして生きる魔物はおしなべて個体の能力が高く、巨大な生物も多い。特に巨大な魔物であれば、町に降りてきたら最早その町は最期といった具合の魔物だらけなのだが…俺は楽観視していた


 というのも、不思議なことに、地上を生きる我々に一切の干渉をしてこないのだ。冒険者稼業で色々な場所に出かける際には、恐ろしい空の魔物は幾度確認している。しかし、そのどれもがこちらを気にする様子など欠片も無かったからだ。


 もちろん自衛を理由にした攻撃や、住処を侵害されればその限りではないだろうが…。少なくとも彼らが自らの意思でこちらを害することは考えづらい。なので気にせずに放置していたのだ。


 「空の魔物は基本的に、何もしなければ我々には無害だと認識しておりますが…この魔物たちも、砦が珍しくて様子を見ているだけなのでは?」


 「はい…私もそう考えておりましたが……」


 「何か気になる点でも?」


 「取り越し苦労であれば良いのですが、上空の魔物に人が乗っていたように見えたと本日報告を受けました。その者の報告では、先日完成したばかりの監視塔で警戒にあたっていたところ、近くまで鳥が降りてきたようで、その際に目撃したと。人を乗せた鳥の魔物は直後に上昇したらしく、目視は一瞬であったとのことです」


 空の魔物に人が…?到底懐くとは思えないが…


 俺は上空を見上げる


 上空では、数にしておよそ30余りであろうか。鳥型の魔物が群れになって、ぐるぐると大きく旋回しているように見える。距離が離れているせいか、ハッキリと視認するのが難しいが、こちらが確認すると少し動きが変わったようにも見えた


 「うちのパーティーに、身体能力がおしなべて高い人がいるので、その人に見てもらいます」


 「お手数をおかけします…」


 事情を伝えて監視塔までカルミアと私兵を連れていき、遠視の魔法が使える魔術師にも来てもらった。まずは遠視の魔法を魔術師が使用して、上空を確認する


 「ハッキリと視認できません…何か靄がかかったように見えます。妨害系の対抗魔法…?いやまさか」


 どうやら魔術師では視えないらしい


 「それなら、カルミアさんにその魔法をかけてあげることはできますか?彼女の視力であれば視えるかもしれません」


 「分かりました」


 魔術師は遠視の魔法をカルミアにかけてあげる。カルミアの両目に強い魔力が宿る


 「カルミアさん、これも使って」


 遠くを見ることができる魔道具だ。望遠鏡ほどではないが、無いよりもマシだ


 カルミアは筒状の魔道具を受け取って、上空の魔物を覗く


 「…!?なぜ今まで気がつけなかったのかしら。自分を恥じるばかりね。間違いなく、人が乗っている。でも全体的に靄がかかっていて視えづらい」


 兵士の予想が当たってしまった…。


 「カルミアさん。ありがとう……偵察兵かと思われます。距離がありますが撃ち落とすことは可能ですか?」


 「バリスタ等の対攻城兵器は配備予定ですが、完成間近に届く予定です…撃ち落とすことは困難です。砲弾や矢だけであれば、こちらに配備済みですが……」


 まずいな…このままでは一方的に砦やこちらの戦力状況の情報を渡してしまう。


 監視塔の隅で山積みになった砲弾をひとつ手にとったカルミアは、まるで重さを感じさせない石ころのようにポンポンと手で遊ばせる


 「…この砲弾、一個貰っても良い?」


 兵は動揺しつつ、頷く


 「え、えぇ…問題ありません。ですが何に―」


 「ありがと」


 カルミアは返答を聞いてすぐに投擲の構えをとる

 

 「…まさか、カルミアさん」


 「えぇ、届くか分からないけど…やってみるのはタダだもの……フウゥ」


 砲弾を首元へあてて、遠心力と遠投の力が丁度良く合わさるタイミングで投擲した


 「はぁああああ!」


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