20話
翌日、皆で朝から冒険者ギルドに行くと受付のお姉さんが待ってましたと言わんばかりにカウンターから手をふってくれた。朝から最高の癒しである。相変わらずスタイルもバツグンだ。
「サトルさま!カルミアさま、サリーさま。お待ちしておりました。ギルドの査定と登録が完了しましたので、ランクのご報告と、ひとつご連絡がございます」
「ありがとうございます。連絡とは?」
お姉さんはカウンターに三つのカードを置いた。カードは厚みがあって、金属のような素材で出来ているように見える。とても頑丈そうで、しっかり三人分の名前とランク、『竜首のごちそう亭所属』とキッチリ所属まで書いてあった。
「こちらが会員証です。お受け取り下さい。それで、連絡なのですが… まず、サトルさまのパーティーは、見たことも聞いたこともない情報が多く、ランクをつけることが難しいという判断になりました。そこで、まず仮のランクとしてDランクに設定し、ギルドが選定した依頼を受けていただきます。その依頼をひとつこなすことができれば、正式にDランクとして活動が可能となります」
なるほど、当然だろう。カルミアやサリーは、俺がクラスをマルチ化させてオリジナルクラス化したのだから、聞いたこともないというのは納得できる。だからこそ、どれくらいやれるのか手頃な依頼で確認しようという訳だ。
「わかりました。それで、依頼は何を受けたら良いのでしょうか?」
「はい、実はDランク以上の指名をご希望の護送依頼がございます。この依頼を達成させることができれば、仮Dランクから、正式にDランクとさせていただきます」
「よし、受けましょう!カルミアさんとサリーさんも、それでいいかな?」
「うん、問題ない」「おっけィ!」
受付のお姉さんはほっとした様子で続きを話してくれた。
「では、詳細について説明します。ここ、シールドウェストから更に西にある、ランスフィッシャーという町までの護衛依頼です。護衛対象は一名で、この町の特産物交易を行っている商人です。伝令用の魔物がいるので、成功報告は向こうの町で行って頂ければ問題ありません。推定日数は一週間。前金は金貨九枚。達成報酬は金貨三十九枚です。町間で行う交易は久しぶりになるため、重要度も高い任務ですが、問題ないでしょうか?」
交易は常に行われていないと物流が止まってしまうから、なぜ久しぶりになるのかがちょっと引っかかるが、依頼自体は問題なく遂行できるだろう。これを逃せば金策も厳しくなるから、どの道受けるの一択しかない。
「わかりました。その依頼、受けます!」
冒険者ギルドでお姉さんから依頼を受領すると、なるべく早く出発したいという商人からの希望があったため、夕方にはこの町から出発することになった。俺たちは急いで旅に必要な道具を一通り揃えて、商人と待ち合わせ場所になっている正門の前で待つ。すると、約束の商人が現れた。
「君たちが、僕の護衛を引き受けてくれたパーティーかい?うん?」
その男はいかにも一般的なヒューマンで、人畜無害な顔つきの優男だった。頭には何故かターバンのような布を巻いている。首からは商人ギルドの証になる天秤マークを模した紋章のアクセサリーをぶら下げていた。ギルドのお姉さんの情報通り、この人が護衛対象で間違いないだろう。まずは挨拶だ!
「はい、Dランクのパーティーです。よろしくお願いします」
「僕はドーツク。よろしく頼むよ、うん。この交易は絶対に失敗できない。誰もが今、ランスフィッシャーとの交易を嫌がっている。だからこそ、僕がこのチャンスを掴んでやるのさ!うん!」
う~ん、やはりこの依頼には何か問題がありそうだ。そのまま護衛をして、はい完了と一筋縄ではいかないだろう。恐らく冒険者ギルドは実力テストを兼ねて、皆が避けるようなリスクある依頼を受けさせた可能性がある。分かってはいたんだが…。 考え込んでいるとサリーがぶっこんできた。
「この依頼はただの護衛依頼じゃないのかナ?みんなが交易を嫌がる理由が気になるかモ」
「はは、面白いお嬢さんだ。実は大き目の貨物を載せてランスフィッシャーに向かおうとすると、必ずと言って良いほど、蛮族王の幹部を名乗る勢力が現れて、荷物を奪っていってしまうんだ。うん。もう数ヶ月も続いていて、魚を始め生活用品が値上がりし始めている。そこで、僕が名乗りを上げたという訳さ!うん!」
「見上げた根性でス!…計画性がなくて勇気満点、アタシは嫌いじゃなイですヨ!」
サリー…それ褒めてるのか貶しているのか分からないぞ
「あぁ!ありがとうお嬢さん。君たちとは上手くやれそうだ。うん!」
褒めていると受け取ったらしい…二人のやり取りにある意味関心しているとカルミアが近づく。
「サトル、恐らく戦いになると思うの」
「あぁ、だろうな…」
「今のうちに私とサトルとサリーで作戦を考えておきましょう」