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198話


 果物の化け物もといタルッコとサザンカが奉納品に紛れ込んでいたという、意味不明かつ無謀な企てによってフォティアは完全に荒ぶってしまった。


 「ぐぬぬぬ……!我の好物へ果物の化け物を紛れ込ませるとは…四大精霊である我に対する如何なる所業!何たる侮辱か!」


 ご機嫌な様子だったフォティアは、片手に魔力を圧縮させた火球を出現させ、今だ威嚇を繰り返す身の程知らずな果物の化け物に炎の鉄槌を下す


 「消し炭にしてくれる![ウンブラル・フローガ・ストライク]!」


 火球は追尾し、ターゲットの頭上から叩きつけられるように着弾。激しい炎で包み込み、天を突き抜けるような火柱を上げた。その瞬間だけ、まるで夜が昼に変わったと錯覚するほどの火力だ


 「ぐひょおおお~~!」


 ぬいぐるみが良い感じの着火剤としての役割を果たして、あっという間に火だるまになったタルッコは、天に突き抜ける火柱の勢いの元、空の彼方へ旅立っていった。夜空を駆け抜ける火の球は、さながら流れ星のようにも見えてとても綺麗だった。さらば、果物の化け物!


 サザンカはタルッコの様子を気にもとめず、フォティアをうやまって膝を地につける…騎士の姿であれば様になっただろうに。悲しいかな、今の彼女はゆるキャラが丁寧なお作法でお辞儀しているようにしか見えない


 「精霊様、私に貴方を害する気はございません。つきましては精霊様のご加護を賜りたく―」


 「ええぃ、果物の化け物め!我を脅かすだけでは物足りず、言葉まで巧みに操って我の力を己のものとするのか!どれほどまでに強欲な魔物よ![ウンブラル・フローガ・ストライク]!」


 タルッコとサザンカは完全に魔物認定されてしまったようで、サザンカの説得虚しく二度目の火球も手加減なしにサザンカへぶちのめされた。…まぁ自業自得だよね


 「やっぱりこうなったああ~~!」


 タルッコに続き、サザンカも星の仲間入りを果たし、二連星の如く輝きを増した


 …さて、問題はめちゃくちゃにされてしまった現場なんだよね


 「我は…我はもう怒ったぞ!我慢しておったが数々の失態。この里は契を果すに値せん!定命の者へ、今一度精霊の力を示し畏怖を植え付けてやるぞ。せいぜい後世への垂訓とでもするがよい!」


 捨て台詞を吐くと、見境なく舞台や近くにあった里の住居などを火球で攻撃し始めた


 「精霊様!精霊様!どうかお心を鎮めてくださいの!」


 「ええい!うるさい。邪魔する者も同罪じゃ!」


 「危ない!」


 フォティアが火球をリンドウに飛ばす。すぐにイミスがディフェンシブフォームの盾を使い、リンドウを庇ったため、事なきを得た。さすがイミスだ。精霊の攻撃であっても防ぎきってしまうとは


 「ウチがいる限り、皆に手は出させないよ!」「マスター、熱いのですが…」


 スカーレットと会話する余裕すらあるようだ


 しかし…ふむ。フォティアは完全に頭に血がいってしまっているようだ。『人は全て人』として大雑把な括りで大局的に見る傾向のある彼女だ。精霊という特殊な生まれである上、仕方ないのかもしれないが、タルッコの個人的な思想や無礼など関係なく『全て人という生き物がやったこと』と考えているのかもしれない。人が罪を犯したのであれば人が償うという見方は些か大雑把にすぎるが…。今回の件は竜人に罪はない。住居の破壊はやりすぎだ


 「フォティアさん!これはやりすぎだ。こんなことをしても、君が敬われることはない。あと、お菓子だって作ってあげられなくなるんだよ。それでも良いのかい?」


 「う…!うるさい!この煮えくり返るほどの業火の怒りを鎮めることはできぬ!」


 若干、狼狽えるもののすぐに里への攻撃を再開する。訴えかける俺に攻撃しないあたり、どこか冷静であろうとする理性も残っているか。しかし、このままでは里が持たないな。精霊には精霊のけじめというものがあるのかもしれない。だがこちらの常識を一方的に当てはめて彼女を攻撃することも気がひける…可能であれば、彼女を傷つけずに対話に持ち込むのが理想だ。


 カルミア、サリーがフォティアの火球を弾き飛ばしたり、魔法を打ち合って相殺したりしてくれている。イミスは盾で里の者を守ってくれている。この間に有効的な手を考えるんだ


 精霊には精霊のルール…そうか!


 俺はルールブックを開いて、クラスの詳細を確認した。


 スターフィールドの世界では、様々なクラスの中でも、この世ならざる者と正式な契約を交わし己の力とするものが存在する。


もしかしたら、そのクラスの力を使うことで、フォティアを傷つけることなく対話に持ち込むことができるかもしれない。なんの確証もない賭けだが、リンドウが精霊降ろしの儀式を行えるのであれば、精霊と契約する適性は十分にあるはずだ。それならば、より精霊との繋がりを強固にしてリンドウ側でコントロールできる方が双方にとって望ましい結果になる。


 有り余る力を、その矛先を精霊が自身でコントロールできないのであれば、キチンと道を指し示す役割をリンドウが担えば…


 「リンドウさん!」


 「…!サトル様!」


 リンドウは呼びかけに応じ、火の雨を掻い潜り、すぐに俺のそばへ駆けてくれた


 「はぁ…はぁ…サトル様、何か、お考えがありますの?」


 「あぁ、考えというよりも賭けだ。リンドウさん、これから俺が行使する力で貴方の人生を、もしかしたら良い意味でも、悪い意味でも変えてしまうかもしれない」


 「サトル様、私は今を生きています。今私にできる最善があれば、それをやってみたいですの。皆様をお救いできるのであれば、その可能性があるなら、私は何でもいたしますの」


 強い子だ…迫害されてもなお、里の者を救おうとするその姿勢。その姿がきっと君を変えて、周りを変えたんだね


 「リンドウさん……わかった。俺も君の気持ちに全力で応えよう。もう一つだけ、この力の行使は決して口外しないように、すべては君の力によるものだ。いいね?」


 「はい!」


 ルールブックが輝き、ページがめくれていく……そしてNPCの専用枠に固定された


 

 さぁ…始めようか



 「リンドウさん!クラスチェンジだ!!」



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