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194話


 「バレてしまっては仕方がない。そうじゃ。我こそが炎を司る大精霊、名をフォティアを言う。古の炎を内に秘める定命の者。その名を聞こう」


 炎の精霊であることをアピールするためか、ここぞとばかりにフォティアは自身の魔力を高め、空中に飛翔し停滞。その身に炎を包み俺たちを見下ろした。…たしかにこうしてみると精霊っぽい。さっきの出来事があるので全然威厳を感じないのが不思議だ。


 ここまで大きな魔力の反応があれば、姿は視えずとも何かを感じるのか、カルミア、サリー、イミスが俺の前に出てくれる


 「サトル、上に何かいる!気をつけて」


 「もしかして敵?ウチがやっちゃおうか?」


 「大きな炎の魔力反応が祠の上からでてるみたイ!もしかしテ、例の精霊かモ!?」


 「カルミアさん、イミスさん、ありがとう。サリーの言う通り精霊だ。何故か俺には姿も声も聞こえるんだが、敵意は無いみたいだから安心してほしい」


 俺が皆をなだめると、安心してくれたのか戦闘態勢を解いてくれた。改めて挨拶しよう。一応かしこまったほうが良いか


 「俺はサトルです。ところで…」


 祠に目をやると、炎を出しているフォティアと祠の位置が近いためか、若干屋根がチリチリと焦げ始めている。…あれは大丈夫なのだろうか


 「ふむふむ…サトルサトルサトル…覚えたぞ!サトル、先のような話し方で問題はないぞ」


 「そう?じゃ、あの~フォティア様?」


 「様も要らんぞ。サトル限定だがな」


 「フォティアさん?祠の屋根が燃え始めてるよ」


 「のわあああぁ!?何故すぐに言わんのじゃー!?」


 慌てて自身から溢れ出る炎を抑えるフォティアだが、引火してしまったものはどうしようもないらしく、あたふたしている。…フォティアさん?炎、全然司ってないじゃん。そこは操ったりして炎消そうぜ!


 心の声をどうにか抑えて、洗浄用に貯めている水を屋根にぶっかける。するとすぐに鎮火できた。


 「ふぅ…フォティアさん。鎮火できたよ」


 精霊が視えていない仲間からすれば、俺が突然発火した祠に水をぶっかけるという行動に見えるのだろうか。里長は何となくの方角、巫女のリンドウは顔を精霊の方へ向けているため、姿までしっかり視認できているようだが


 「あわわ……。ふぅ…ふむ、ご苦労!サトル、お主にはニ度も世話になったな」


 「困った時はお互い様だよ」


 「ふむ、そのような言葉も有るか。そして、お主のような定命の者もいると。…懐かしの古の炎にひかれて表に出てみれば、面白い奴と出会えた」


 「フォティアさん、その古の炎って何?それに、何故俺は君を視認できるのか知っていることがあれば教えてほしい」


 「あぁ、主らは慣れ親しみのない言葉であったな。サトルの内に竜の力…とりわけ炎の強い力を感じるのじゃ。荒れ狂うほどの力で、制御ができていないようじゃがの、ほほほ」


 どうやらフォティアは、俺がドラゴンブレスができること、そしてその炎の力を自在に扱えないことを本能的にか感じ取ったようだ。さすが炎を司るというべきか。そういった機微には鋭いみたいだね…


 「その通りだよ。俺には竜の炎を扱う力を宿している。フォティアさん、見抜くなんてすごいじゃないか」


 「ほほほ、我を誰だと心得るか。今回は、その古の炎を宿すものの顔を近くで見てみたかっただけだ。お主と会話するに姿や声が視えぬと不便だと思ったのだ。だからお主には視えるようにしただけのこと。時代の変わり目に現れるという、竜を取り込んだお主との対話を望んだのだ」


 こちらの資質に問わず、精霊側が気を許せば視えるようになるらしい。炎の精霊という立場上難しいかもしれないが、ドラゴンブレスができない問題を解決してくれないかなと淡い期待を抱いてみるが、やっぱダメかなー?目下、別の優先事項もある中、そう簡単にはいかないか


 フォティアは俺から初めて目をそらし、巫女であるリンドウへその目を向ける


 「炎の目を宿し巫女よ。本来であれば、このような大切な時期に害意あるよそ者を迎え、祠を汚した。この時点で此処一帯を燃やし尽くしても良かったと考えていた」


 「も、申し訳ございません…」


 リンドウは声までしっかり聞こえるようだ。精霊の言葉を返している


 「昔からの関わりもある。だからこそ、この失態に対しては数年の無視をする程度で留めておこうと考えていたのだ。しかし、それも気が変わった」


 「…」


 「我はこのサトルを気に入った。先程貰った奉納物も素晴らしいものじゃ!」


 お前絶対それが目当てだろう…と思ったが、俺は顔には出さないぞ


 「今日中で祠の掃除を終え、その間このサトルと会話させてもらえれば、此度の失態には目を瞑る。そして精霊降ろしの儀では、正式な手順でこちらに参るとしよう」


 「は、有難き幸せ。……サトル様、協力いただいてもよろしいでしょうか…」


 「もちろんだよ。それでリンドウさんが助かるなら、喜んで協力するさ」


 ずっと落ち込んでいたリンドウは、ようやく表情が明るくなった。やっぱり笑顔のほうが100倍良いよね


 さて、俺は清掃が終わるまで、暫くこの子の相手をするぞ!


 精霊が視えていないはずのカルミアは、何故かジト目で俺を睨みつけてくる


 「…たらし」


 し、仕方がないのだ。これは任務だ。大精霊様の任務なのでございます。だからカルミア様、冗談でも俺に刀を抜くようなそぶりをするのはやめろ下さい


 

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