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19話


受付のお姉さんから貰った地図で、鍛冶屋の場所が書かれている場所へ行くことにした。その前に雑貨屋で秘密兵器を買うことを忘れない。大通りから若干外れた場所に位置する鍛冶屋に到着すると、その建物が目に映る。冒険者ギルドと同様に扉の上にデカデカと剣と鎧のマークが書かれた看板がくっついており非常に分かりやすい。扉は無く、炉は外側に露出しているので作業している様子がよく見えた。数打ち品や新品のフルプレートアーマーが店の前に出されている。


「こんにちは~!装備の支給品を受け取りにきました」


俺の声がよく聞こえなかったのか、作業をしているドワーフは金床でハンマーを叩き続ける。作っているのは何かの刃だろうか?ガンガンとこちらの心臓まで震えるほど響く音が響き渡る。もう一度声をかけよう!


「あの~! こんにちはぁ~!!ぶきぃ」「だ~!聞こえとるわ! これを打ったら聞いてやるからそこらで待っておれ!」


俺たちを背に首だけを若干こちらに向け、言う事言ったらまたすぐに作業に取り掛かってしまった。どうやら邪魔をしてしまったらしい。しかし本当にドワーフしてやがる…感動するぜ! 邸宅の食事会で出会ったドワーフ同様に身長が俺たちよりも小さく、このドワーフは百四十センチほどだろう…それなのにとても逞しい腕から振り下ろされるハンマーの一撃はまるで巨人のそれである。赤黒い髪は後ろ姿でも分かるほど無造作で、何処からが髪で何処からが髭なのか分からない。体格は正しく筋肉質で、体の小ささは全く気にならないほど頼もしい背中が職人感をこれでもかと主張する。


 しばらく俺たち三人でドワーフの鍛冶仕事を眺めていると、一段落したのかようやく手を止めてくれた。ふうと息を整えて汗を拭ったドワーフはこちらを品定めするようにギロリと見つめると、フンと鼻を大きくならす。


「わしの名はガルダイン・アイアンフォージ。あいにくだが魔法使い用の武器は打ってない。おぬしらで言えば、そこの嬢ちゃんの武器くらいじゃな。杖はよそで探してくれ。嬢ちゃんは引換券をこっちによこしな」


確かに俺とサリーは魔法使い用の装備だ。ただ使える武器があるかもしれないので、一通り触ってみたい。あと男ならやっぱり剣を使ってみたいよなぁ!


「ガルダインさん、俺も武器を使ってみたい!特に剣とか!」


ガルダインはカルミアから引換券を受け取りながら、呆れ顔でこちらを見やる。


「おぬし…体付きからして剣など振れぬだろう。お遊び用のオモチャならよそで探してくれ。わしの武器は素人が持つには危なすぎるものでな」


「むむ…、俺だって剣くらい簡単なものさ!」


「それなら、この剣を振れたら考え直してやる」


ガルダインがニヤリと笑みを浮かべる。見たところ普通の剣だが、手渡されると剣の重みに耐えきれず、地面に剣先を落としてしまった。重すぎて全く上がらな~い!どうなってるんだ?


「ガハハハ! やっぱ坊主には無理じゃったか。まぁ、練習あるのみじゃな?今日の所はそこの嬢ちゃんだけに売ってやる。わしのポリシーでな、使えぬ者には売らんのじゃ」


してやられた!どうせ重くなる魔法でもかかっているんだろう?両手でも上がらないのだから。カルミア先生!あなたでも持ち上がらないことを、このヒゲモジャに証明して差し上げろください。


俺はカルミアにそのままの体勢で剣を渡した。カルミアは無言で頷いて剣を受け取ると、片手で持ち上げてブンブン振り回した。そりゃあもう綺麗な太刀筋である。サリーは笑い転げている。


「サトル…無理しないで」


「ガハハハ!嬢ちゃん気に入った! 好きな武器を売ってやろう。物が無ければ作ってやる」


「ガルダインさん…ありがとう。片刃で軽くしたバスタードソードがほしい。場合によって両手と片手で使い分けるから」


「ふむ…シミターを派生させた武器かの?珍しい得物じゃな。それくらいであれば既存の装備を改良すればすぐに用意ができるぞい」


カルミアとガルダインはすっかり意気投合して、あーだこーだと武器について語りながら調整を始めた。俺とサリーは結局、どの武器もいまいち扱うことができなかったので、非力な者でも一定の威力を持つ、ライトクロスボウを二丁頂くことにした。剣も良いけど、クロスボウも格好いい!


「サトル、サリー、おまたせ」


武器屋の庭でサリーとクロスボウで的当てをして遊んでいるとカルミアが戻ってきた。手に持った片刃の剣は見たところ日本刀に近しい系統を感じさせるもので、無駄な装飾がなくてシンプルだけどものすごく格好良い。あのドワーフはイジワルだが、気に入った者には良い仕事をするようだ。


「とっても似合ってるヨ!カルミア~!」


「ありがとう。本当にとても良い剣」


カルミアは少し照れくさそうに武器を鞘に納めると簡単な感想を述べる。


「フン、わしが作ったのじゃから、当然だろう。それよりもおぬしら、防具も調整するぞ!さっさとついてこい」


わざわざそんなことを伝えにやってきたガルダインは、もしかしたら口に似合わず面倒見が良い人なのかもしれない。結局その日をまるごと使って細かい防具の調整を行い、納品まで行うことができた。ドワーフの鍛冶技術は凄いと、ルールブックにも記載されていたがとんでもない手際の良さである。


旅の支度は大凡整い、カルミアはバスタードソードと魔物の素材で出来たパデッドレザーアーマー。俺とサリーはパデッドレザーアーマーを更に薄くし、急所のみを防護したガルダインのオリジナル防具と、ライトクロスボウを調達した!


とても良い仕事だったので、鍛冶屋に来る前に調達した安酒をガルダインに振る舞うと、とても上機嫌になって、アフターサービスを無料でやってくれる約束まで取り付けることができたのであった。


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