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184話


 「身を削ること厭わぬその覚悟、しかと見届けました。私、決めました…貴方と共に往きます」


 言われずとも、里までは護衛するつもりだったが……なにやらこの女の子は決意を胸に灯している様子。ちょっと変わった子なのかも。


 「そんなに気負わずに。それより…」


 そういえば、この子の名前をまだ聞いていなかった。それに気がついたのか、すぐに名乗ってくれた


 「申し遅れました。私、リンドウと申します。氏族では、精霊降ろしの巫女を務めております。末永くよろしくお願いいたします。サトル様」


 「は、はい…リンドウさん。そんなに長くはかからないと思いますが、道中の護衛は任せて下さい」


 巫女…?精霊降ろし?なんだか凄そうな役職だ。重要なポジションっぽい気がする。絶対に守り通して、里の皆の好感度をアップさせるぞ!


 そんな打算にまみれたことを考えていると、リンドウが俺の手を握った


 「私には、砕けて接していただいても、構いませんの」


 「え、いやでも」


 「構いません」


 「はい」


 いいえの選択肢は存在しないタイプの人らしい。俺が納得するまで引きそうにないので、素直に返事をした。


 それで満足したのか、風雅な様で、趣を解するようにお辞儀をするリンドウと名乗る女の子。和装チックな竜人の服に相まって、何だか前世を思い出す。砕けて接して良いと言ってくれたので、どうにか敵対することは避けられただろうか。内心ドラゴンの装備を着用していることを怒っているかもしれないので、引続き注意は必要か。


とは言っても…実際問題、フロスト・トロールのような凶暴な魔物も出てくる訳で、備えは万全にしておきたいので、装備を外すという選択肢は里に到着してからか、最終手段としたい。予防線を張っておくか……


 「リンドウさん。俺たちは冒険者だ」


 「はい?…そうですね?」


 「うん、なので、どうしても強い武器や防具を着用し、身を守ることを優先しなければならない。それは君を守るためにも必要なことなんだ」


 「左様でございますか!私、嬉しゅうございます」


 「う、うん。俺たち冒険者の振る舞いには、竜人の方の思想を汚したり、故意に貶める気はないことを、前もって伝えておきたかったから」


 「はて?サトル様は不思議な方ですね。その様なこと、お気になさらずとも、貴方様ほどのお方であれば、御父上は認めて下さいますのに」


 分かっているのか分かっていないのか、よく分からない内に笑顔で流されてしまった。


 カルミアはずっとジト目で見てくるし。


 「な、なんだよ…」


 「…べつに」


 カルミアはそっぽを向いてテントから出ていってしまう


 リンドウは機嫌良く、紅く輝く目をキラキラさせている。…手を離してくれないので身動きが取れない。仕方ないので、彼女が落ち着くまではそばに座っててあげようかな。


 「サトル様、里までは私が案内致します」


 「ありがとう。おおよその位置しか把握していなかったからね。助かるよ」


 それにしても…


 「そういえば、リンドウさんはどうしてフロスト・トロールなんかに捕まっていたの?しかも、こんな危険な所まで一人で」


 リンドウは落ち込んだ様子で俯く


 「それが…精霊降ろしの儀を成功させるために、オリジンの花を探していましたの…」


 「オリジンの花?それが精霊降ろしの儀とやらに、何か関係しているのかい?」


 「私も、その花の存在は知りませんでした。里の者からお聞きできた話で、万あるドラグリリーの花のうち、一本だけ黄金に輝く花が咲くと言いますの。その場所を教えて下さった方がいて、調べに行くと花は無く……」


 「代わりにいたのはフロスト・トロールの群れだったと」


 「はい…」


 う~む。精霊降ろしが何なのかは分からないが、リンドウはどうやら里の者から聞いたというオリジンの花という植物の所在を求めてここまで来たようだ。


 「でも、危険だとは思わなかったのかい?引き止めてくれる人は?」


 「ここ一帯は、元々魔物は滅多に現れませんの。出てきても、私一人で対処できる程度の魔物なのです。里よりも深き場所はとても危険なのですが、ここで気をつけるべきは天気と足元の悪さくらいですのよ?」


 「フロスト・トロールは想定外だったと」


 「お恥ずかしい限りですが…サトル様がいなければ、私は今頃……」


 リンドウは言葉を詰まらせる


 トロールが出た場所…つまり生息地自体に違和感はない。ただ、その里の者とやらが何だか胡散臭い感じがするな


 



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