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170話


 「カルミアさん…いや、皆さん、やりすぎでは?」


 「…サトルの力を知らしめた」


 カルミアは満足そうな顔で何度も頷く。それに合わせてパーティーの皆も頷いた


 …いや、知らしめたって!?しかもなんで皆同調しているんだよ。それにしても手加減とか…ねぇ?全勝は嬉しいけど、相手の立つ瀬がないほどに打ちのめすと、後が怖い気がするんだが。ほら、今だってカイオスなんか俺をめっちゃ睨みつけているし…!?


 「親善試合というより…もう公開処刑みたいになっているよ。はぁ…とにかく、次は俺か」


 自慢じゃないが、俺は戦いは素人側の人間と言っていい。この世界に舞い降りてからというもの、強い奴との戦いは全部味方任せだった。そんな俺がAランクギルドのリーダーに勝てるとも思えない。


 ただ、これはこれで良いのではないかと思っている。相手からしたら全敗に加えて幾人かは救護室送りになってしまった。さすがにひとつの勝ちも持って行けずに国に帰るとなると、彼らが可哀想だ。だから俺はガス抜き担当として、しっかり相手にやられる必要があるだろう。カルミアたちには悪いけど、相手にも花は持たせてやるべきなんだ。うん。


 「相手は…やっぱり怒っているな。はぁ、行ってくる」


 「サトル~!がんばっテ!」「格好いいところ見せてね♪」「僕のお兄さんが負けるはずない」


 仲間たちに見送られ、分不相応なほどの期待を背負い込みつつ、俺は負けることの正当性と美徳のいくつかを脳内にかき集め、舞台に上がった。


 先程まで頑張ってくれていた司会者は、何故か具合が悪くなったということで、大将戦の戦いは、拡声の魔法が使えるという、その辺の冒険者が開始と終了の合図をしてくれることなった。なので、特に紹介の名乗り等はない。


 次いでカイオスが舞台へ上がる。血管がブチ切れそうなほど表情はステキなことになっており、とてもじゃないが、平和的に行きましょうという流れは期待できない。


 「えっと…カイオスさん。こんにちは?」


 当たり障りのない挨拶をしているが、カイオスの表情が崩れることはない


 「はっはぁ、俺の仲間をずいぶんと…本当にずいぶんとかわいがってくれたな。ステロール子爵のワガママとは言え、今は全員が戦う仕組みに感謝してもしきれないぞ。最初は依頼だから仕方なくって気持ちだったが、気が変わった。お前だけでもぶちのめして国に帰るぜ」


 どうやら奴さん、怒り心頭の模様…。そりゃそうだろう。仲間をオーバーキルされたら、リーダーなら怒って当然だ。俺が相手の立場でも同じ考えになる。


 「分かりました。正々堂々戦いますが、命の取り合いはナシです。よろしいですね?」


 「……はやく始めろ」


 どうやら俺の命まで奪うつもりらしい…これは困った。


 ただ負けるだけなら幾らでも負けて良いのだが、命をくれてやるつもりはない


 「それでは、両者、合意とみてよろしいですね?では……試合開始!」


 カイオスは遠慮なく真剣を振りかざして俺を斬り裂こうと接近する


 「はっはぁ!被ったドロはお前の血で流してやる!」


 「ちょっと待って!?」


 カイオスが持っている鋭利な剣は細かな棘が生えている。そんなもんで首筋を狙われたら、一発でお陀仏だろう。俺はカルミアやイミスのように丈夫ではないぞ!?


 逃げ場がなくなり振り下ろされる剣を、どうにかルールブックで防御する。スターフィールドの本は厚みがすごいので、防御に適しているのだ。


 「はっはぁ?高難易度のダンジョンから出土したアースクエイクソードを受け止めるとは…やるな。だが、いつまで持つかな?」


 俺は逃げ回りつつ、クロスボウで牽制するが、そのどれもがカイオスの身体に触れる前に、剣で弾き飛ばされてしまう。


 「それなら…[ファイア・ボール]!」


 ダンジョン産の剣には、ダンジョン産の杖で対抗だ。俺の杖からは魔力の許す限り、[ファイア・ボール]を無条件で出し続けることができる。


 「はっはぁ…想定通り、お前はサポート系のクラスだな?[ビルド・アースウォール]!」


 カイオスは地面に剣をつきたてると、見上げるほどの頑丈な防壁を作り出した!これは、彼らが登場したときにやって見せた技だろうか。スターフィールドのルールブックには無い技なので、彼が自ら編み出した魔法の可能性が高い。


 俺の放った[ファイア・ボール]は何発か壁を穿つが、ダメージを受けたそばから壁が素早く修復されてしまい、決定打を与えられない。


 「ダメか…長期戦になりそうだな」


 「はっはぁ、その心配は無い。この壁はこんな使い方もできんだよ[ビルド・アースウォール]!」


 見上げるほどの大きな壁は一度に4つ現れて、俺とカイオスを会場から隠すように囲い込んだ


 これで、逃げ場が無くなってしまった。そして……


 「はっはぁ…っへへ、これで遠慮なく使える。お前をぶちのめしてやる!」


 カイオスが懐から取り出したのは、怪しい光を放つ宝石のような石だ


 彼はそれを手に取ると、躊躇することなく石を飲み込んだ


 「……それは、一体何なんだ?」




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