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160話


 噂は広まり、シールドウェストは平生の様子よりも程度が激しい。なんと言っても、本日は新進気鋭なBランクのサトルのパーティーと、突如隣国からやってきた、貴族様の選りすぐり冒険者との戦いがある日なのだ。


 中央通りの一部を借りて催す会場は、それだけで注目度が高い。急ごしらえではあるものの、キチンとした会場設営が整えられ、どちらが勝つかといった賭け事を楽しむ人の様子もちらほらと。席は相当数用意され、立ち見でも楽しめるように、飲食を販売する売り子までいる。


 俺としては、その辺で簡単に戦って終わらせるものだと思っていたので、この公開処刑のような催し方に若干のやりすぎ感を感じている。


 「アイリス様は、あの子爵にそんな腹を立てていたのか…こんなに人を集めるなんて。万一負けようものなら、俺たちは命が無いかもしれないな…」


 領主のアイリスは、隣国のフォマティクス…貴族の一人であるステロール子爵に、恥をかかせるためだけにこのような会場まで作り上げたのではないかと俺は疑っている。これで負けたら逆に大笑い者にされてしまうだろう。その原因となった俺たちがどうなるかなんて考えたくもないものである。


 「…サトル。大丈夫よ、絶対に負けないから」


 カルミアは笑顔で俺の肩を叩いてくれた。俺が被ったトラブルではあるが、彼女たちはいつだって一緒に歩んでくれる。それが本当に嬉しくもあり、若干の申し訳無さも感じるところだ。


 領主との模擬戦の話が終わった後、夜にはパーティーの全員に事情を伝えてある。みんな、返事一つで俺のトラブルに付き合うことを了承してくれた。


 そして今、俺たちは小さめの控室のような場所で、会場へ呼ばれるまでの間、待機している。外からは賑やかな声や売り子の安いだとか美味しいだとか、そういった声が度々聞こえてくる。人もたくさん集まっていて、ちょっとだけ緊張してきた。


 「うん…カルミアさん、いつもありがとう。……みんな、この待機時間で改めて復習しよう。今回は、パーティー戦闘というよりも一対一にして、総勝利数で優劣を決める形式になっている。勝敗が覆せない状況でも、最後まで入れ替えで戦うルールみたいだね」


 「3勝してモ、続けるというコト?」


 「サリーさん、その通りだよ。俺、カルミアさん、サリーさん、イミスさん、フォノス…俺たちは今回、五名でエントリーする。3勝すれば勝敗は覆らないけど、最後まで一対一で入れ替えて戦う。これは向こうの要望なんだ。勝ち抜き戦にしてしまうと、こちらの戦力を全て把握できないだろうからね。名目上は色々とあるけど、子爵の狙いとしては、こちらの戦力を確かめたいんだと思う」


 イミスはバチリと拳を突き合わせてフンと笑う


 「でも、遠慮はいらないんだよね?」


 「あぁ、それはアイリス様から、完膚なきまでにと言われているからね…。俺のクラスチェンジ能力さえ見せなければ、問題はないとおもう」


 「お兄さんが出る幕もないと思うけど…全員殺すのはダメなの?」


 「フォノス…勝ち抜きではなく、入れ替えで戦うし、殺しは無しだ。そして、俺も出なきゃいけない。ステロール子爵のお考えは分からないけど、戦力を割くことを目的にするなら、この戦いで活躍した俺たち冒険者を、子爵が引き抜く算段だって立てている可能性もある。場合によっては、個別の引き抜きもあり得るし、その際に莫大な金と地位を約束するかもしれない。俺としては君たちと、ずっと一緒にいたいが、止める権利は無い…。万一、それに応じたいという場合は教えてくれ」


 「…そんな子、ここには一人も居ないことを、貴方が一番知っているでしょう」


 カルミアは、ハァとため息をついて壁にもたれかかった


 「そうだよ、お兄さんの敵は僕の敵なんだから」


 「ウチとおばあちゃんの願いを叶えてくれた人に、そんなことはしないよ!」


 「アタシはサトルが好キ!それだけだヨ?」


 …そうだ。緊張故か、ちょっとだけ変な質問になってしまったかも。俺は仲間を信じているし、仲間もそれに応えてくれている。この部屋にいる全員が、俺を見て信頼を寄せてくれている。それは今までも、これからも変わらないだろう。


 「…そうだな。大きな舞台で、ちょっとだけ弱気になっていたかもしれない。この友好試合で、俺たちの力を、見せつけてやろう!」


 全員が、俺の掛け声にあわせて『おー!』と呼応してくれた


 フォノスが連れてきたクリュは控室の隅っこで丸まって寝ているけど、可愛いからノーカンである。


 会場のスタッフらしき獣人が、木製の扉を開けて出番を伝える


 「サトルさん、皆様、出番のようです」



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