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155話


 ファイアブレスの練習は散々な結果に終わった。これはしばらく練習が必要になるだろう。フォノスがそばにいてくれたおかげで、大事にはならなかったが…。


 それから数日はブレスの練習を続けたが、何度やっても、体中にある魔力が炎となって一気に放出されるばかりで進展がなかった。根本的に何らかの方法が違うのかもしれないが、ドラゴンが使うブレスのコツを教えてくれる人など、街中探しても見つからないのは明らか。存在自体が珍しい竜の力を得たなど、眉唾物も良いところだし。こればかりは地道に努力と研究を続けるしかないな…。


 今は仲間たちの武器が仮で完成したので、具合を確かめるため、ガルダインの鍛冶場まで足を運んでいた。しかし、かれこれ数十分はカルミアとガルダインの武器談議が続いていたので、そんなことを考えつつも、意識は上の空となっていた。他の仲間も集めて、鍛冶スペースの裏手の修練場として使っている広場で、各々の武具を試している。


 「サトル。ねぇ、聞いているの?」


 カルミアがジト目で俺を見ていた。


 「あ、あぁ…なんだっけ」


 「刀の幅…もう少しだけ細い方が良いと思う?」


 カルミアはちょっと得意な構えで、剣技を披露する。どの動きも素晴らしいのだろうが、ひとつ問題があるとするならば、動きが速すぎて、肝心の刀とカルミアの動きが見えないことくらいだな。つまり全て見えないから判断しようがない。刀は竜の力を宿すためか、斬撃の軌跡からは、紅い残像が残ることだけはわかった。彼女の通る後には鋭い魔力の残滓が生まれ、その威力を物語るのみ。


 …カルミアさんや、何も見えませんけど…


 「あー…うん、そうだね。俺もそれが良いと思う」


 俺は思考を放棄して合わせることにした。それを聞いたカルミアは嬉しそうに、ガルダインへ微調整の注文を入れる。


 「うん。じゃあ、これ…もうちょっと、ここの部分…細くしてほしい。あと、私の背丈くらい長い方が良いわね」


 「嬢ちゃんは相変わらず速攻スタイルじゃな。これ以上となると、ふむ…」


 ガルダインは刀を受け取ると、刀身を触りながらウンウンと唸る。刀は前回、ガルダインが創作したものと違い、波紋が赤と緑の波を交差するように浮き出ていて格好良い。ガルダインが制作したプロトタイプは刃渡りが短いものだが、カルミアとしては長い方を好むようだ。竜骨から鍛えているのか、持ち手は竜の骨が使われていた。


 「ううむ…そうじゃな。ウロコを細かくして合金化させてみるかのう。そうすれば強度も問題ないだろうし。しかし…刀自体から魔力が溢れ出てきおる。我ながら良い魔剣になりそうじゃ」


 「ありがとう。さすがガルダイン…」


 「良い剣士に恵まれたわしからも礼を言うぞ」


 カルミアとガルダインは友情のこもった熱い握手を交わした。


 これで、カルミアの新しい刀は、調整込みで問題なさそうだな。一段強い敵と当たっても強度の心配は要らなくなるだろう。


 「フォノス、サリーはどうかな?」


 フォノスは離れた場所で、人形のマトを斬り刻んでいた。一度しか斬っていないように見えるが、次の瞬間にはバラバラに崩れ去るのだから恐ろしい。俺の視線を感じた彼は、ニコっと笑って瞬きの合間で目の前まで現れる。…心臓に悪いのでやめてほしい。


 「お兄さん、これ…すごく良いよ。ガルダインさんってすごいね」


 フォノスが両手に持つ剣と刀は、まるで天使と悪魔のように対極の煌めきをしている。刀はより赤黒く禍々しい。剣はより神々しさを残す光を放つ。


 ガルダインはそれを聞いて上機嫌になった


 「ムハハハハ!わしの手にかかれば、魔剣の強化でもやってみせるわい。…とは言っても、その短刀はちとばかし苦労したがな。未知の鉱物が使われておって、制作には精霊の加護を何十も重ねたうえ、一晩もかかったのじゃ。そのかいがあってか、剣の強度と斬れ味も上げられた。やはり、ドラゴンの素材には魔力が宿るようじゃな」


 「うん…お兄さん。あの人形を斬ったとき、炎が散ったんだ。斬り口は焼けていたよ」


 グリーンドラゴンは炎を使う。つまり炎属性に恩恵が強い装備が出来上がるのかもしれないな。フォノスの装備も魔力を通せば炎の恩恵が得られるということか。手数で勝負するフォノスには属性攻撃追加は、とても良い組み合わせだ。


 「フォノスも装備は大丈夫そうだな…あとは」


 「お~ィ、サトル~~!」


 サリー…とモヒカン男だ。装備が出来上がって、仕上がりを見せに来てくれたのか?


 「お、サリーさん。装備が出来上がったのかい?」


 「そうだヨ!こレ~!」


 サリーの手には新しい杖。全体は緑っぽい配色で、杖の先端である集束点にはドラゴンの角がくっついている。これだけなら良かったのだが…


 「イカすだろう…?」


 モヒカン男は杖の先端をつつく


 細長い杖に龍の胴が絡みつくようなデザイン。そして、角に噛みつくような龍の顔が、魔法の発射を妨げそうな感じになっている。杖に絡みつく龍の胴のせいで、持ち手がゴツゴツして、安定的に持ち難い欠陥構造になっていた。角に噛みついた龍の顔に、貴重なドラゴンウロコが、惜しげもなく使われている。


 「予想はしてたけど、やっぱりかぁ~!」



TIPS:


一般的な兵士の剣:

攻撃力:1

耐久性:2

特殊能力:なし



魔鉱石やミスリルで出来たレアな剣:

攻撃力:3

耐久性:4

特殊能力:魔力伝導が高い



今回、ガルダインが打ったカルミア用の竜刀:

攻撃力:8 +炎熱ダメージ

耐久性:8

特殊能力:炎の魔力が宿る + 魔力伝導が高い



ガルダインが打ったフォノス用の竜双剣→元活人剣と殺人刀を強化:

攻撃力:4 +炎熱ダメージ

耐久性:8

特殊能力:炎の魔力が宿る + 魔力伝導が高い



攻撃力は最終ダメージに加算するため、小さな魔物であれば、攻撃力3あれば一撃で倒せます。

ガルダインが作った魔剣は、かなり強めの設定です



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