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15話


 シールドウェストの冒険者ギルドは町の中でも大通りに位置する目立つ場所にあり、人の出入りが激しい。冒険者ギルドとは戦闘を主にこなす何でも屋のことだ。依頼はモンスター素材の納品から護衛依頼をする内容まで様々で、要人警護や新規開拓土地の雑務を依頼する、町自体からの大きな依頼もある。最も多いのはモンスターの討伐依頼だろう。ギルドに所属する者は細かくランク付けがされており、難しい依頼にはより高いランクの者が問題解決に当たるという。いずれにしても、この冒険者ギルドを通して問題解決の人材を斡旋することが民間で最も馴染み深い問題解決方法だとルールブックに記載されている。


「サトル… あの人は誰?どんな関係なの…?」


道すがらカルミアが不安そうに聞いてくる。俺は恒例となった困った時にルールブックを読むという逃げの一手を塞がれた。


「魔法具店の店主さんだよ。 …昨日、水晶を割ってしまった弁償に、採取依頼をさせてもらっていたんだ。命の恩人でもあるんだよ」


特にやましいことは無いと昨日起きた出来事をカルミアに説明する。何故か生命の危機を感じてしまう。


「…そう」


カルミアが納得したかどうか分からないような一言で会話を断ち切る。目線はこちらを向いていないし無表情である。怖すぎますよ?両者が黙り込み歩きつづける。サリーは後ろからニコニコスマイルで付いてくる。見てるなら何か助けてくれないだろうか!あなたのことですよ!と心で叫ばずにはいられない。


「あぁ!つきました! こ、ここが冒険者ギルドかぁ~素晴らしいなぁ!」


転生して最もファンタジーを感じられる感動の場所である。看板は盾を背景に剣と杖をクロスさせたような絵看板が壁掛けられており、非常にわかりやすい。誰でもどうぞと言わんばかりのスイングドアを押しやり中に入った。


 冒険者ギルド中の世界は混沌としていた。ムワッと広がる強い酒の匂いと笑い声。酒場と併設された施設なのだろうか?お決まりだが大好きな雰囲気だ。適度な感覚でテーブルカウンターが設置されていて、冒険に成功した者共が勝利の美酒と明日の希望について花を咲かせる。またある場所では大急ぎで獣人が運んできた料理に舌鼓を打ちながら探検する先をパーティーメンバーと話し合っている。とても活気があって圧倒されそうだ。この戦士達なら確かに何でも解決してくれそうな気がするぞ。雰囲気や威勢も大事な商売道具の一つにしているという訳か。


「最高の雰囲気だ。建物もすごい」


…ん?これは白骨化した竜の首部分だろうか?それが大きな発光する石を噛ませた状態で天井からぶら下げられており、部屋を照らす照明となっていた。建造物は木製だが至る所に傷や張り紙跡があり年季が入っていた。壁には巨大なコルクボードのようなものがあり、大量の紙と依頼が所狭しと張り出されていた。昼前の時間なのに様々な種族や装備の冒険者がボードの前でああでもないこうでもないと話し合っている声と姿が絵になる。


「…サトルは冒険者ギルドに来るのは初めて?」


「あぁ、シールドウェストの冒険者ギルドは初めてだね。こんなにも活気があって建物も立派で、ちょっと興奮してしまったよ…アハハ」


民間で身近な場所であれば来たこと自体無いというのは逆に違和感を抱かせるかもしれない。ここは一芝居うったあとカウンターらしき場所へそそくさと向かう。


「シールドウェストの冒険者ギルド、竜首のごちそう亭へようこそ! ここでは依頼の受領から人材の斡旋、お食事も提供しております!」


受付を担当してくれた方は獣人ワイルドヒューマンのお姉さんだ。ついでに犬耳である。出る所が出ていてスタイルバツグンなので目がそちらに行きそうになるが、何か危機的なものを感じたのですぐに視線を戻す。


「こ、こんにちは! えぇっと、冒険者ギルドに登録をしたいのですが…俺と、こちらのカルミアさんです」「アタシもいるよォ~!」


間髪入れずサリーも元気よく右手を上げる。


「そう、サリーさんも…ってえ?」


「アタシもサトルのパーティーとして冒険者ギルドに登録したい!…だめかナ?」


サリーさん…そんな上目遣いで見つめないで!かわいいから!


「サトル…今、サトルと言いましたか?」


ワイルドヒューマンの受付お姉さんは、野生の鋭い眼光で確かめてきた。あれ?何かあったかな?


「そうです…けど、俺がサトルで こちらがカルミアさんです」


「少々お待ち下さい…」


そう言ってカウンターの奥に引っ込んでしまった。う~ん、別に悪いことを何かした訳では無いから大丈夫だと思うが少し不安だな。ところで…


「サリーさん、俺とカルミアさんのパーティーに入りたいという話でしたが、どういうことですか?」


「実は、あのあとアグレッシブミンティを使った調合薬を届けに患者様の所まで会いに行ったんだヨ…」


サリーが待ってましたと言わんばかりに話を始めた…。


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