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14話


町に到着する頃には既に日は落ちきっていたので、門の前でサリーとの臨時パーティーは一旦解散となった。アクシデントもあったが、俺にとってもウルフとの戦闘は良い経験になった。無事にアグレッシブミンティやその他の薬草を確保できたので、当分の間は採取は行わなくて良いようだ。今回の採取だけで弁償分働いたかはちょっと自信がなかったので、宿の場所は伝えてある。


気持ち良い気分で宿に帰宅すると宿の入り口でカルミアがソワソワしている。装備を新調しており、剣はより細身の片刃剣と防具は急所のみ補強したレザー系の軽装だ。


「あれ?カルミアさん、どうしたの?」


カルミアは俺を見つけると安心した表情をしている。


「帰りが遅いから心配してた。サトル、弱いから」


「確かに弱いけども、些かストレートすぎやしませんか!? っとと…心配してくれてありがとう。待たせてごめん。 あっそうだ!冒険者ギルドで登録ができなかったから、明日一緒に行こうよ」


ついでに帰り道で見たことのない綺羅びやかな花が咲いていたので、何本か頂いてきたものをカルミアへプレゼントする。


カルミアは花を手にとって、じっと見つめたあと、十分な間を取って少しだけ首をこくんと縦に揺らすと、空いてる手でそのまま俺の手を取って無言で宿に引っ張り込む。その後は二人で宿の軽食を取って、それぞれの部屋でゆっくり休んだ。喜んでくれたのかな?


備え付けのベッドに入り、今日起きたことを少し振り返る。サリーと出会ってからはアクシデントの連続だったが、やはり俺の本で窮地を乗り切ることができたと見ていいだろう。間違いなくこの世界はスターフィールドによく似た世界だ。ルールブックの内容とも一致するところが多い。前世とは比べ物にならないほど危険な世界だとも同時に思える。たった少しの油断がすぐに文字通りの命取りだ。


ウルフとの戦闘もカルミアとの脱出も、ギリギリの綱渡りだった。人の命が軽い世界なら、もっと自衛できる手段と、俺が持つ本の力を引き出す方法を確かめて行く必要がありそうだ。テーブルトークロールプレイングゲームでは、一定のモンスターを討伐したり、依頼を達成すれば条件にもよるがレベルアップすることができる。俺にもレベルが設定されているのであれば、カルミアと俺のレベルアップの優先度は高い。冒険者ギルドに行けば、レベルアップできる手段も見つかるだろうか。



 考え事を続けているとすっかり目の前が暗くなって気がつけば深い眠りについていた。長時間まどろみの中を心地よく彷徨っていると、何やら声が聞こえてくる…。


「サトル… き … サトル、起きて!」


目が覚めるとカルミアの顔が覗いていた。しかし見れば見るほど整った顔だなぁとかそんなどうでもいいことをフワフワ考えながら体を起こす。宿の部屋は二階建て構造になっており、窓から強い日差しが部屋中を明るく照らしている。…どうやら、寝過ごしたようだ。しかし、美少女に朝起こしてもらうなんてとても贅沢な朝だ。こんな日は良い一日になりそうな気がする。寝過ごしたけど。


「サトル、ねぼすけ。あと、お客さん。来てるよ」


「あぁ…カルミアさん、おはよう…お客さんね。誰だろう」


すっかりボロボロになったローブを着用して宿のロビーまで降りると、そこにはなんとサリーがとってもニコニコした顔で待っていた。翌日早々に何の用だろうか…やっぱり弁償代金を払ってほしくなったのかな?


「サリーさん、昨日ぶりですね! どうしたんですか?」


「ヤァ!サトルく~ン。特に理由は無いけど会いたくなったから来ちゃった! テヘ!」


サリーはやり過ぎなくらいあざといポーズで自分の頭をコツンとする。かわいい!しかし何だろうか。非常に危機感というか、胸騒ぎというか、空気がピリつく感じがする…。いや…比喩でも何でも無くカルミアの体がちょ~っとだけビリビリしているオーラが出ている。おやまぁ、何で俺が危機感を感じる必要があるんだろう。でもこういう時は本能に従ったほうが良いってママンも言ってた気がするの。


俺は焦りつつカルミアの手をとって、申し訳なさそうにサリーに伝える。


「ごめんなさい!俺、今日はカルミアさんと冒険者ギルド行く予定でして…」


「あれェ?ッフフ。面白そうだからアタシもついていくよォ~!」


サリーは毒気があるのか無いのか分からない、いつものニコニコスマイルで更に場をややこしくしてきた。カルミアの方へ顔をやると、カルミアは手をつないでくれたことが嬉しかったのかは分からないが、体のバチバチはなくなって大人しくなっている。…とりあえず冒険者ギルドに行こう。



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