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139話


 俺たちはスタンピードの兆候がある原因となっている9階層、10階層の調査をすべく、イエローアイと名乗る傭兵集団との共同調査を行うことになった。


 今は、フォノスを除くフルパーティーで、ギルド前にてイエローアイが到着するのを待っているところだ。


 「ねェ~、サトル~マダ~?」


 「おかしいな…ギルドマスターから依頼を受けたときには、今日、鐘が8つ鳴るタイミングで集まろうって話だったんだけど…」


 俺はギルド前の広場に設置された鐘を見上げる。この鐘は都市の至る所に配置されており、時間の目安として役割を果たしていた。ここの住民はこの鐘を見て、大凡の時間の判断をしているのだ。


 そんな話をしているうちに、鐘が9つ鳴る。…もうだいぶ待ったぞ!


 「サトル…置いていかれた?」


 「そんなまさか」


 これは、もう日を改めてギルドマスターに約束の日を確認するしかないのか…諦めて帰ろうとしたその時、ぞろぞろと大人数で武装した集団がこちらにやってきた。置いていかれたわけではないようだ。


 ギルドの前は色々な施設が近くにあるため、人通りが多い。しかし、そんな賑やかな雰囲気が一変する


 住民は道を開け、イエローアイだの何だのと言っており彼らの動向に注視している。先頭を歩くリーダーっぽい人を始め、全員黄色いバンダナを体のどこかに巻き付けていた。おそらくイエローアイで間違いないんだろうけど…武装した者が集団…30人ほどで固まって歩くなんて、威圧的というか、目立つなぁ。


 「よぉ~すまんすまん!待たせたようだなぁ!お前らが一緒に調査するってぇ奴か?ってなぁ!」


 リーダーっぽい男は身長が190くらいだろうか…大柄な体型で日に焼けた色だ。髪は金髪でオールバック。目は茶色で、その目つきからも反省の色は全く無くヘラヘラしていた。上半身は自身の肉体をひけらかすように何も着用していない。戦闘の生傷が体中に入っており、戦いの経験が豊富であることを感じさせる。左腕にはイエローアイのサインであるバンダナを巻いている。


 男は片手をポケットにつっこみ、もう片方の手で髪をかきあげながら、全くその気がなさそうな謝罪を入れてきた。目元はニヤついていて、バカにされてる気がする。


 「…そうですね。だ・い・ぶ!待ちました。初対面とは思えない挨拶にビックリです」


 俺はちょっとだけイラっとしたので、待ったことを強調してアピールしてみる。これから先、一緒にダンジョンに潜って戦うのだから、あまり争いには発展させたくないが、やられっぱなしというのも気に入らないのだ。


 「ほぉ~、このオーパス様に口答えする奴がまだこの都市にいるなんて、なぁ?せっかく下手に謝罪してやったのに…ヤレヤレだぜ」


 リーダーっぽい男はオーパスと名乗った。オーパスはポケットに突っ込んだ手を出して、ヤレヤレといったポーズをとってみせる。それを見たイエローアイの連中は皆、オーパスに合わせてヘラヘラと笑っているだけだ。…反省の色が見られない。黄色はしっかり見えるけど。


 …この都市で踏破記録を持っている人だから、どんな凄い人なんだと思っていたのに、ちょっとだけ残念だ。


 俺をバカにしたオーパスに対して、カルミアがムっとしている。このままいくとスタンピードを鎮める前に、オーパスを土に沈めてしまうことになりかねんな…話を進めよう。


 「…ここで問答していても、仕方がないですね。9階層への案内をお願いします。俺たちは一刻も早く、事態を収拾させなければなりませんから」


 俺たちは踏破階層の関係上、2階層までしかワープできない。なので、今回はイエローアイのパーティーについていく形で9階層まで一気にワープするつもりだ。本来であれば危険性の観点から、そのような方法で突破することは、ギルドから許可されない。…まぁ、実力に見合わない階層に挑んで、命でも落としてしまっては、大変だから妥当といえば妥当な制度だ。


 オーパスは挑発に乗らないのが気に入らなかったのか、つまらなさそうな表情になり、舌打ちして応える。


 「ッチ…俺たちゃなぁ、仲間の屍を乗り越えて、お前が想像もつかないくれぇ努力と時間をかけて9階層まできたんだ。…そんなのに、ポっと出のお前らが俺たちの恩恵を受けようなんてなぁ…たくよぉ。バレリスの旦那の願いじゃなきゃボコボコにしてんぞ…今回は仕方ねぇが、邪魔だけはすんじゃねえぞ。あと、調査が終わったら9階層には来るんじゃねえ。俺たちのシマだ。稼ぎが減ったら困るだろうってなぁ?」


 ペラペラと勝手なことを言うだけ言って、仲間を引き連れギルドの中に入っていく。案内するのも渋々といった具合で、放っておいたら勝手に進んでしまいそうだ。


 「なにあれ!ウチ、めちゃムカついた!」


 「サトルのことをバカにしちゃって何だか嫌な感ジ!」


 イミスもサリーも、オーパスに対するイメージは最悪のようだ。…オーパスとしては、自分たちが積み上げたものが横から掻っ攫われるような感じがして、嫌なんだろう。


 「仕方がないよ、スタンピードを鎮めるのが先だ。ヤなやつだけど、今は我慢して付き合おう」


 ギルドに入っていったイエローアイの集団を追うため、俺たちも後に続く






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