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137話


 二階の一室に案内された。会議用テーブルのような横幅の長い机には、椅子が並んでいるが、俺とじいさん以外は誰も居ない。


 「空いているところにおかけくだされ」


 おじいさんは座るように促されたので、適当に席を選んで座る。おじいさんは俺の対面に座った


 「えぇ、どうも」


 「わしはこのギルドを仕切っているバレリスと申す。君のパーティーの実力は、伺っておりますぞ」


 「ギルドマスター…でしたか。バレリスさんが、俺に何か…?」


 「なに、ルーキー殺しの砦を壊滅させたと聞き及んでおりますぞ。それが本当であれば、その腕を見込んで、ちょっとした頼みがありましてな」


 ルーキー殺しの砦…ケンクが縄張りにしていたダンジョンの一角、そこに建造された砦のことだろう。とは言ってもだ。数は多かったけどニ階層の魔物だし、討伐も別に大したことではないと思っていたのだが


 「たしかに、ケンクたちを壊滅させたのは俺たちですが、そこまで大きなことをやった覚えがないのですが…」


 バレリスは目を大きく見開き、かっかと笑う


 「かか!自覚がないというのは恐ろしいことさな。うむ…いかにも二階層自体の魔物は、強い冒険者であれば問題なく片付けることはできる。ただそれは、パーティーと同頭数の魔物か、不利な状況にないことが前提となる話じゃ。あの砦は、残るべくして残っておった。犠牲に釣り合わない目の上のコブであった…」


 席を立ち上がったバレリスは芝居がかった仕草で話を続ける


 「それがどうじゃ?たった数人で十倍以上の数を、何の犠牲もなく砦ごと落としてしまったという。常識があれば、いかにも『普通ではない』ことは分かる。発言からも…君たちに余力があると見ている。やはり適材適所。是非頼みを聞いてほしいところじゃな」


 …どうやら、あの砦を落としたことが、ここのお偉いさんの目に止まったようだ。まだまだダンジョンアタックは続けたいし、依頼の内容にもよるが…。


 「どんな頼みなのかにもよりますが、まずは聞かせてください」


 バレリスはヒゲをなでつつ、横目でこちらの様子を確認した


 「ふむ……まぁ良いじゃろう。実は、スタンピードの兆しが発生しておってな。本来その階層にいないはずの魔物がいたり、一階層に強い魔物が這い上がってきておる。数も日を追う毎に増えておってな…このままでは間引きも間に合わず、地上に魔物が溢れてしまうかもしれんのじゃ」


 「…それは、何か原因があるのでしょうか」


 「完全にとは言い切れんが、調査によると、未踏破階層の10階層に原因がある可能性が高いことが分かっておる。そこを縄張りにしていた魔物が、何らかの原因で9階層まで這い上がっているのじゃ。おかげで9階の探索もろくにできなくなっておるわい」


 未踏破階層が10階層ってことは、9階層までは攻略されていることが分かった。町ができるほどの歴史があるのなら、もっと深くまで行っているかと思っていたが…。しかしながら、それだけダンジョンの魔物が強く、攻略範囲が広いのかもしれない。…そう考えると、9階層まで行けたのは快挙と考えるべきなのかな?一日で2階層まで行けたら、そりゃ目立つか


 「見えてきました…その原因を探ってほしいということですね?」


 「うむ…タダでとは言わん。わしにできる範囲で便利をはかろう。それに、君たちだけで未開の地へと放り込むこともせん。この任には9階層までを踏破したパーティーメンバーをつけよう。その者たちと、合同で調査にあたってほしいのじゃ」


 丁度、ドワーフのガルダインを呼んで、鍛冶場を拵える必要があると思っていた。このじいさんに恩を売れば、ここでの活動も容易になるだろう。元々ダンジョンアタックは、行けるところまで潜るつもりだった。目的ついでに感謝されるなら万々歳だろう。


 「わかりました。その依頼を受けましょう」


 バレリスはおおと安堵の息をついて、俺の手をとった。何度もお辞儀をしている。どうやら感謝しているようだ。スタンピードが一度発生してしまうと、都市に魔物が溢れる。当然、事態を収拾させるのがずっと難しくなるだろう。


 「おお、それは重畳…。それに、9階層と聞いても全く動じず怯まぬその姿勢、心から頼もしく思う」


 「人助けができるなら、何よりです(ついでに恩も売れるしな)」


 「後日、くだんのパーティーを紹介しよう。どうかスタンピードを沈めてほしい」


 「その…一緒に調査をする予定のパーティーは、どんな構成なんですか?」


 「うむ、そのものたちは『イエローアイ』と名乗っている。傭兵を兼任している冒険者集団じゃが、所属人数がちと多い。ここじゃ色々と有名な集団じゃ。構成もその都度変わるでの…決まった編成はしないようじゃ。もし不都合があれば話し合ってみてほしいが、それでよいかの?」


 カルミアたちの実力を信じていない訳では無いが、安全マージンは取れるだけとったほうが良い。パーティー編成は重要なので、一緒に戦う相手のことも知っておく必要がある。しかし、バレリスの話だと相手の構成は会ってみるまで分からないな。何も問題がないと良いけど…


 「とにかく、イエローアイの皆さんと解決できるように、頑張ってみますよ」


 

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