表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
132/478

132話


 サトルたちと階層主が戦う様子を木陰から見ていた三人組は、目の前で起きた出来事を飲み込めずにいた。


 「おっおい…見たか?い、今のは」


 「…ウム」


 「はー。どう見ても、人の為せる技とは思えなかったね」


 見たこともない鎧が瞬く間に武器へと変形し、味方の一人に投げられたと思ったら、衝撃波が発生して辺り一面を破壊の嵐に巻き込んだ。付近で残ったのはクレーターくらいだ。


 「弱ったところ全てを掻っ攫うつもりが、戦いに巻き込まれて、俺たちが死ぬ所だったな…うん?待てよ」


 「はー。あのパーティーについていけば、儲かるんじゃないか?」


 「…ウム」


 「よし、いけるとこまで行ってやろうぜ!」


 許可を得ずにパーティーの追跡をすることは、あまりマナーが良くないとされているが、このパーティーに、そんなマナーを気にする者は居なかった。初心者パーティーは、サトルたちには知られないように尾行を決行する。



* * *



 小躍りしたくなるとはこのことだろう。俺にもようやく、分かりやすくて、強力なスキルが獲得できたのだ!更に、パーティーメンバー全員が、新しいスキルを獲得している。ダンジョンに挑戦した日にレベルが上がる…なんて嬉しい成果だろうか。そして、パーティーメンバーの彼女たちは、強くなったことや、新しい技や魔法の会得を、既にその身で感じ取っているようだった。


 一息ついて、イミスが壊滅させたホブゴブリンの群れから、無事だった魔石とホブゴブリンが持っていた杖を回収しつつ、俺たちは下層へと降りる。魔石や魔物の部位が討伐証明になるらしいので、できる限り回収していく。


 長く、大きく、暗い階段を降りる。壁にはご丁寧に、松明が等間隔で壁にかかっている。どういう仕組みなのか、俺たちが通ると壁掛け松明が燃える。そして離れると消える。とてもエコだった。家に飾るのに丁度よいと思い、一つ頂こうと思ったが、魔法の壁に阻まれて松明へは手が届かなかった。…カルミアからの白い目が、俺の背中に突き刺さるようだった。


 二階層に到達する。出入り口となる階段横には、一階層の入り口で見た石碑と同じようなものが設置されている。手を当てると魔力が石碑に供給され『1階層・2階層』と、各階層の文字が浮かび上がった。これを押せば、帰ることができそうだ。


 石碑から手を離して周囲を見回す。一階層とは大きく雰囲気が変わり、俺がよく知っているクラシックなダンジョン風な空間になっている。今立っている地点は四角型の地形で、空間は広いものの、壁も天井も目で見えるほどの距離にある。まるで石切職人が整えたような材質の壁で、石の僅かな隙間には、緑が苔むしているのが分かった。


 広い空間は一つの道につながっていて、廊下は四人がギリギリ横並びで歩けるほどの幅しかない。廊下に罠が仕掛けられている場合、回避するのは難しいだろう。フォーメーションを変えるべきだ。


 「みんな、ここから先は、カルミアさんを先頭に、最後尾をイミスさんにして進もうと思う」


 「エ、どうしテ?」


 サリーが質問する。まぁ当然の疑問だろう、フォーメーションがバラバラでも、個々の力でどうにかなってきているからな…。


 「敵の奇襲に備えるためだよ。最前列は当然危険だけど、最後尾が最も危険だ。奇襲をかける場合、物陰に隠れて、相手が進みきったあと、背後から挟み撃ちにするのが効率が良い。そこで、防御力の高いイミスさんに後ろを守ってもらうんだ」


 「分かった!ウチがみんなの背中を守るね!」


 先頭から、カルミア、俺、サリー、イミスの順番に並び進む。俺は松明を持って、なるべく先頭の灯りを照らす。まずは、右手法を頼りにマッピングだ。


 通行用の細長い空間を進み続けると、一部だけ壁の色がおかしな場所を通る。その時は、特に疑問を感じなかったので、そのまま進むが…カルミアの足元からカチっと音がした!


 すると変色した部分の壁が突如動き出し、両サイドからカルミアをプレスすべく壁が迫る。とんでもない加速度だ


 「カルミアさん!危ない!壁に潰される!」


 「これくらいであれば…問題ない」


 カルミアは両手を広げ、迫ってくる壁に対して対抗する構えを見せた。


 「…おいおいまさか」


 石が擦り切れる音をがなり立てながら、勢いよく迫り来る壁は、カルミアの手に触れると、激しい衝突音が響き渡る。煙が立ち込めて状況が分からないが、心配だ


 「カ、カルミアさん!?大丈夫かい!?」


 煙が晴れると、そこには両手で完全に壁をとめたカルミアが居た


 『どうしたの?』と言いたげな顔で俺を見ていた。


 「…これで、サトルが安心して通れると思って」


 壁は、カルミアの手元から蜘蛛の巣のような亀裂が走っており、衝突時の威力を物語っている。


 罠が…


 俺は目を閉じて、静かにダンジョンへ同情した

 

 

 TIPS:スターフィールドTRPGの世界において、1レベル分の成長は、広く知られているRPGゲームの概ねレベル5の成長分に匹敵する。TRPG世界でのレベル10は、ポピュラーなRPGでのレベル50ほどの強さになるということだ。通常クラスであれば、レベル3毎にステータスが1だけ上がる。その分、ステータス1の差は、戦闘時にとても大きく影響する。サトルのクラスチェンジは、補正が強くかかるため、能力上限突破に加え、毎レベルステータスが上がっている。これが意味することとは……



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ