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127話


 「あぁぁぁぁん!?なんだこれはぁぁ!?」


 その声と同時に周囲からの注目を集めたが、受付嬢の様子を察し、皆見てみぬフリをした。…もしかして、いつもこんな感じなのだろうか?


 「えぇっと~、Bランクのギルド…カード、です」


 受付嬢はカウンターに足を乗せたまま、眉を限界まで引き上げて睨みを効かせる


 「ほおおん!?それが、ここで、なんの役にたつと思ってんのかぁ~あ~ん??」


 受付嬢はギルドカードを受け取って、そのカードで俺の頬をペシペシさせてきた。…なんだコイツ!?キャラ濃すぎるだろう。というよりなんでそれで受付できてんだよ…!俺は可愛い受付嬢に話しかけられて、チンピラのような冒険者に絡まれるのを期待していたのに!受付嬢に絡まれるって意味不明だよ!助けて!


 「すす、すみません。初めてなもので」


 すると、俺たちのやり取りを見ていた冒険者ニ名が近づいてくる。一人は体格がよく、モヒカンヘアーで服装がやけにトゲトゲしている。もう一人は全身黒いタイツのような格好をしており、何故かガニ股の前傾姿勢で手を常にワキワキさせている。


 「っヘヘ、姉御もお人が悪い。…おい、そこの。ちょっとだけお勉強が足りないようだな」


 更に変な奴に絡まれた。姉御と呼ばれた受付嬢は、そのままの姿勢で目だけをギロっとチンピラに向ける。


 「なんだ、ジャック。お前がやんのか?」


 ジャックと呼ばれたチンピラは、舌を出して不気味に笑う。ジャックの隣にいる前傾姿勢の男は手をワキワキさせているだけで会話には入ってこない。


 「ジュル…へへっへ。姉御。俺の顔に免じて、その辺にしてくれませんかね」


 「ッチ…お前がやるってんならしっかり教育しな!」


 「へへ、姉御、感謝しやす」


 それだけ言うと、受付嬢は元の笑顔に戻って、次のお客様を待つ大変お行儀のよい姿勢に戻った。ジャックはそれを見届けると、俺に顔を向ける


 「よぉ~、お前…一から教えてやんよぉ!イーさん!あれを出せ!」


 「イー!」


 手をワキワキさせた前傾姿勢の男はイーさんと言うらしい。イーさんは甲高い声を浴びせながら、懐から何かを取り出そうとする。そこで、カルミアが警戒して抜刀しようとするが…


 「イー!」


 イーさんが出したのはただの資料だった。手作り感MAXで、可愛らしいお花のデザインまで添えられている。そこには『ダンジョンギルドのきほん』と優しい文字で書かれていた。


 「へへへ…これを読めば、お前も立派なダンジョンギルドメンバーの一人って訳よ。姉御は一見さんをああやってイビっちまう。だから俺はこうやって引っ張り出して、資料を手渡してんだよ」


 ジャックは照れくさそうに頬を人差し指でかいている。…あれ?もしかして、受付嬢に絡まれた俺が困っているところを、チンピラにしか見えないジャックが助けてくれたのか?それじゃあ俺は、逆のパターンを経験したのか…?あれ、おかしいな。全然嬉しくないぞ?でもお礼は伝えなければな…


 「あ、ありがとうございます」


 「へへ、いいってことよ。じゃあ、資料を見ながらでもいいから聞いてくれ」


 ジャックは施設内の迷いそうな場所を一緒に回って教えてくれる。


 「…それで、ここが新規ギルドカード発行の手続きをする場所だ。ここで手続きをしたカードを受付に出して、受領証を奥の門番に渡す。それでダンジョンに行けるってことだな」


 「なるほど、それをすっ飛ばして違う拠点のカードを見せたから、怒られちゃったんですね」


 丁度、受付の奥では門番が二人おり、その奥で光る玉のようなものが配置されていた。観察していると冒険者が門番に何かを話して、通してもらい、光る玉に触れる。すると触れた冒険者が消えて何処に行ってしまった。おそらく、転送か何かの類だとは思う。あれを使ってダンジョンに向かっているんだな。


 「そうだな、ここじゃあ他ギルドでの地位や名誉なんかひけらかしても、何の意味もねぇってことを言いたかったんだろうぜ」


 俺は新規でダンジョンギルドカードを登録する。渡されたカードには踏破階数0と記載されている。ダンジョン深くまで潜ればこの値が上がっていくのだろう。


 「あとは…アレだな。受付の上にある数字の板が見えるか」


 「はい、あれは何ですか?」


 「あれは魔物一匹あたりの討伐代金だ。あの値がプラスだと良い値段で買い取ってくれる。マイナスだと低い値段になるな」


 板の内容に注視すると、今はゴブリン-10、オーク+10といった表記になっていた。ジャックは話を続ける。


 「あれだけじゃ基準となる値段が分かんねぇだろう。だからさっき渡した説明書の最後の項目に、魔物あたりの基準価格を書いてあるから見てくれや」


 「イー!」


 イーさんが、俺から説明書を奪い取り、最後の項目にあるゴブリンと書かれた場所を開いて手渡してくれた。そこにはゴブリン銅貨15枚と書かれている。つまり、今はゴブリン-10だから、一匹あたりの討伐取引価格は銅貨5枚ということか。慣れたらすぐに相場が分かりそうだが、複雑だな…


 「なぜこんな複雑な制度があるんですか?」


 ジャックは手を組んで難しい顔をした


 「そうだな、この都市ではスタンピードが稀に発生する。難しいことは分からねえが、間引きを調整するためと、スタンピードの兆しを測るためだって言われてんな。スタンピードは大抵、一種類の魔物が大量発生する。この相場が大きく動いたときがその兆しだってよ。専ら、俺たちはこの板を見てどこまで潜って、今日は何を狩るか決めてんだから、あんまり気にしたことはねぇ。これをうまく利用して稼いでるやつもいるらしいがな」


 「…イー!」


 イーさんがジャックの服を引っ張って受付に向かって指を指している。どうやらまたあの受付嬢が荒ぶっており、新たな犠牲者が生まれようとしている最中だった。


 「おっといけねぇ、俺たちは行ってくる。また分からねぇことがあったらいつでも聞いてくれや」


 ジャックはビシっと片手で合図を決めて颯爽と助けに向かって行った。かっこいいなおい


 

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