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119話


 ―数日後。ギルドから領主様への謁見許可を受理してもらって、いよいよ、面会の日を迎えた。俺たちはそれぞれ正装に身だしなみを整えて、領主様の執務室の前で待たされているところだ。


 この屋敷は、王城と言われるほど荘厳な作りではないが、それでも数々の調度品が配置されており、屋敷全体も要塞のように頑丈で広い作りになっている。一階は窓がないのも特徴だろう。屋敷は領主様の性格が現れるというが、間違いなく自他共に戦闘能力を重視するタイプな気がする。


 領主のアイリス様とは、この世界へと転生した日以来になるが、どんな話になるんだろうか。


 「ウヒョヒョ…入ってよ~し!」


 調子の外れた声が扉の向こうから伝えられたので、自分で扉を開けて、執務室へと入室する。王城であれば、謁見の間があるんだろう。転生した日に居た場所は、パーティー会場のようだったので、このような少人数では場所的に面会には適さないと判断したのかな。


 「よく来てくれた」


 扉を開けると、そこには椅子に腰掛け足を机に乗せながら酒を飲んでいる女性が片手をあげる。金髪碧眼、二十代くらいだろう。赤い軍服のような姿がよく栄える。獲物を狙う狼のような鋭い目と、鍛えられて引き締まった体が特徴的だ。今は胸元を大きく開けて、自身のスタイルを自慢するようなファッションになってしまっている。一言で言うと領主様というより、荒い性格の冒険者っぽい。


 そばには、とてもとても見覚えのあるノームと、何故か疲れ切った顔をした騎士の男が控えていた。


 「ウヒョヒョ、挨拶することを許す!というより、はやくしなさい!はい!」


 こいつ…何処かで見たことあるんだが…誰だったかな?偉そうでムカつくな


 俺は言う通り、頭を下げて挨拶をおこなった


 「お初にお目にかかります。冒険者ギルド『竜首のごちそう亭』所属…Bランクのサトルです。そして俺のパーティーです」


 俺に合わせて、カルミア、サリー、イミスが頭を下げた。ちなみにスカーレットはゴーレムなので、武器扱いされてしまい、入り口で待たせることになっている。今頃クリュと遊んでいるだろう。


 「ご丁寧にどうも。傭兵志願日のパーティー以来になるかな?シールドウェスト領主、アイリス・ジャーマンだ。アイリスでいい」


 アイリスはニカっと笑って酒をドンと乱暴に机へと置いた


 「はい、アイリス様」


 「ずっと、噂や部下から聞いていたよ、サトル君。君たちは素晴らしい!とくにサトル君が持っているスキル…かな?そちらのギルドや情報網を通して色々と調べさせてもらったが、君の能力は蛮族王討伐のためには、絶対に必要となる能力だ。是非、召し抱えたいところだ…クク」


 「ウヒョ!?アイリス様!?そ、そのようなゴブリンの骨…」


 「タルッコ。お前は今は黙っていろ」


 「は、はいい…っく!」


 タルッコは充血した目でこちらを睨む。なにあいつ!怖すぎるんだが!?


 ツカツカと歩いてきて、俺の肩に手を置いて顔を近づけてくる。俺は今日、喰われる前の羊の気持ちを味わうことになるとは思わなかった。


 「あ、ありがとうございます!と、ところでお話とは…?」


 全力で話題を転換させてみる。アイリスはわざとらしく肩をすくめつつ、俺から離れてくれた。そして、机にもたれかかり、腕を組んで話を続ける


 「まぁ…そう焦るな。…蛮族王は元々、取るに足らない賊だったのは知っているか?」


 俺はその辺りの情報にまだ詳しくないので、カルミアへ助けを求める。カルミアはアイコンタクトを受け取って、代わりに発言してくれた。


 「…ある日、その取るに足らないはずの蛮族は、魔力の衣を纏い、強き力を得たと聞き及んでいる。討伐に向かった冒険者や騎士たちを皆殺しにしたらしい」


 「うむ、そこの娘が言う通りだ。それから、ただの蛮族が新たなる王だと名乗りをあげて以来、南にある未開の大地…砦に集落を作り、その場を中心に領有権を主張している。今も、侵略という形で領地を奪い続けているのだ。不当の占拠だけなら、まだ良い。厄介なのが、奴がそれだけじゃなく、魔物を扱う能力も備えているということだ。そして、年々その勢力は広がっており、無視できない状況に至っている」


 この流れは…


 「はい」


 「傭兵を集めた理由は君も知っている通りだ。だが、力を持つ者というのは、そう簡単には現れない。精々、10年に一人だろう。そして、力ある者をより開花させる者など、現れたことなど無いのだ。君のような能力は聞いたことも、見たこともないと言う事。絶対に手放すことはできないという事。意味は、分かるかな?」


 断れない流れを完璧に作られてしまった。ここで『いいえ』を選んだらゲームオーバーだろう


 「はい」


 「よろしい。サトル君。詳しくは詮索しない。改めて頼む。どうか我が国のためにも、その力を貸してくれないか」


 「はい」


 「ありがとう。では今日から君は…ククク。今までの多大な功績を称え、蛮族王征伐軍の『将軍』に叙任することにしようか」


 「はい…え?」


 「ウヒョ!?」


 …イエスマンをしていると、人はいつの間にか将軍になるようだ。


 とんでもない話になってきたぞ…



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