表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
116/478

116話


 俺は今、グランとロマネたちが協力してスタージの群れに立ち向かっている様子を見ている。それぞれが役割を理解し、長期的に立ち回れるように戦っていた。討伐完了まで時間の問題だろう。


 「う~ん、想定以上だ。相手の数も、そして…それに立ち向かい、今まさに勝利を掴み取ろうとする彼らも…」


 「…やっぱり、サトルの能力はすごい」


 残り15匹…グランを先頭に斬り込み、すかさずロマネへスイッチする


 「カルミアさん、それは違うよ。彼らが努力して、乗り越えて、ようやく掴み取った。俺はその手伝いをしただけだ。それぞれの世界を受け入れて手を差し伸べ、困難を飲み込んで、それでも成長するなんて、俺たち大人でも中々できることではないと思う。本当に凄いのは彼らたちだ」


 残り10匹…モルモルが血を滲ませた手で必死に調合している。ポーションが尽きないように、彼も戦っているんだ。恐怖の対象がそばにいるのに、背を向けて調合できるのは、仲間を信じているからだろう。


 「サトルはあの子たちが好きなんだネ!」


 サリーの言う通りだと思う。ただのクエスト、早く終わってほしいと思っていた気持ちは、はて…何処かに行ってしまっていたな。


 残り5匹…


 「ウチの出番無かったかな…」


 グランがバテてしまったので、ロマネたちとスイッチ。アンセ、ピュリニー、ニエールで戦い仕留める。


 カルミアやサリーのような超がつく強力なスキルや合体攻撃がなくても、ここまで戦えるんだ。


 最後の一体をチャーノがクロスボウで射抜き、ロマネが反撃を阻止、そしてグランがトドメを決めた


 とうとう全てのスタージの群れを討伐してみせたのだ!防具も武器も、そして体中ボロボロだが、グランの宣言通り、泥臭くも足掻きにもがいて、その手で勝利をもぎ取ったのだ。


 グランはブロードソードを地面に突き刺し、拳を振り上げた!


 「はぁ…はぁ…勝った…サトルたちの力を借りずに、オレサマたちだけで、勝ったんだぁあああ!!」


 仲間たちも拳を振り上げ、雄叫びをあげる。本当に限界ギリギリだったのか、すぐにみんな地面に座って荒い呼吸を整えた。


 ここまで頑張ってくれたんだ。労いの言葉も必要だろう。


 「グラン、チャーノ、ロンキ、モルモル…騎士候補生たちを支えながら、敵をたくさん倒したね。そして…ロマネ、アンセ、ピュリニー、ニエール…冒険者候補生みんなを最後まで守り通して、最後まで諦めずに、ただの一人も犠牲を出さなかった。…みんな、本当によく頑張ってくれたね」


 俺はみんなに声をかけてまわる。恨み言のひとつでも言われる覚悟はしていたが、みんなとっても良い笑顔で、戦果を報告してくれた。


 「サトル!見てたか!オレサマたちの勝利を!」


 「サトルさん!私達も頑張ったのでありますよ!」


 グランとロマネ…二人共、互いを見つめ合う。また喧嘩するのかな?と思ったが―


 「まぁ…お前らがいなかったら勝てなかった。その…アリガトな」


 「な…そうでありますな。で、でもグランたちが頑張ったのも確かであります。騎士は礼を尽くすのが基本であります!!」


 「なんだそりゃ…お前、まだ候補だろ。相変わらず変な奴だな!!」


 「へ、変とはなんでありますか!前言撤回であります!!」


 みんなが彼らのやり取りに笑い合う。


 この依頼を通して、仲間と手を取り合うことの大切さを学んだ彼らなら、これから先は、俺たちが居なくても、学び舎を守りながらも成長していけることだろう。…これで、本当の意味での、クエストのクリアだな!完璧だ!


 俺は手を叩いて、注目を集める


 「よーし、みんな!報告して帰るまでが依頼だぞ!帰り道も油断しないように。銀貨はきちんと一人ひとりに手渡す。多少、俺からのサービスとして色をつけておくから、楽しみにしてていいぞ!」


 「やったぜ!俺っちはロマネに花を買ってやるんだ!」


 「もしゃもしゃ…草を買う」


 「戦術の参考書や魔導書も良いですね!」


 「みんな!待つであります!!私に考えが……」


 みんな、欲しい物や買いたいものを言い合っては喜んでいる。…うん、やっぱりこの子たちの笑顔は輝いてみえる


 結果的には、依頼は大成功と言っていいだろう。スタージの群れは全て討伐。しかも、大きな怪我人も出なかった。村人や家畜もほぼ無傷で、村全員が俺らに感謝していた。夜までには骸を片して、魔石は全て村に寄付。そこで更に喜ばれて、村をあげて宴まで用意してくれたのだ。


 きっとこの子たちは、ここまでたくさんの人から感謝されることの経験が無かったはずだ。毎日学び明日を生きることを考えることに、必死になるしかない。そんな状況だったはずだから。でも、そんな彼らは今、英雄としてそこに立っている。


 あまりの感謝されっぷりに皆、動揺していたが、とても晴れやかな表情だった。


 自分たちがこの人たちを守ったという事実が、きっと彼らをもっと強くしていくだろう。


 宴を楽しんだ翌日は、早朝からシールドウェストへ帰還することになった。


 帰路の途中、銀貨をそれぞれに先払いでグランやロマネたちに渡した後あたりから、彼らが皆を集めてなにか内緒話をしているようだった。


 内緒話の内容が気になって詳細を聞いても、サトルには帰るまで絶対伝えないとか言われるし。サリーとかイミスには伝えているのがちょっと納得がいかない。


 サリーは人差し指を口にあてて


 「サトルにとって、嬉しいことだと思うからまっててネ!」


 と言っては詳細を話してくれないし、モヤモヤするぜ。でも可愛いから許す


 …依頼を終えたら、この子たちとの関わりも減るだろう。別の地方へと出向くこともあるかもしれない。きっとそれに気がついているだろうか。なにか、プレゼントでも用意してくれているのかな


 そんなことされたら別れるのが辛くなっちゃうなぁ…



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ