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112話


 グランとロマネが訓練用の剣をぶつけ合うのを合図に、他のパーティーメンバーも動き始めた。真っ先に動いたのはロマネだ。


 「全員!守備陣形!グランを囲い込むぞ!」


 全員がナイトという特殊な編成を利用し、一気にグランを叩くつもりなのだろう。全員が盾を構えつつ囲い込む。しかし、グランは動揺せず冷静に対処してみせた。


 「そっちがその気なら、乗ってやる!オレサマが引き付ける!ロンキ!チャーノ!」


 「む~~~ん」


 ロンキは[勇気]のフレーズ…と言ってもむ~んしか言ってないが、きちんと想いをフレーズにのせているはずだ。独特な鼻歌を歌いはじめる。するとグラン、チャーノ、モルモルにきらきらとしたオーラがかかり、腹の底から勇気が出てくるようなパワーを与えた。


 チャーノはロンキの鼻歌を聞いたと同時にクレイゴーレムを相手方に突撃させた。グランへの集中攻撃を分散させるつもりなのだろう。


 ロマネはその動きを見てすぐに対応方法を考え出し、それを実行に移す。


 「グランへの集中攻撃を中止![ダメージディバイド]で私がゴーレムとグランへの攻撃を対処するであります!!ピュリニーは[マジック・ミサイル]で援護!ニエールの分身はまだ使わないであります!」


 それぞれが短く返事を返し、ロマネはクレイゴーレムとグランの猛攻を盾で耐え凌ぐ。グランを囲い込む形がロマネを囲い込む陣形に目まぐるしく変化する。


 「今だ!モルモル!」


 「むしゃむしゃ…草の可能性を喰らえ……!」


 モルモルが予め作り置きしてあったのだろう、ポーションをピュリニーに投擲する――


 「く、くさい!姉さま、お気をつけ下さい!臭い…玉で…す!」


 ピュリニーにポーションが当たると同時に鼻がひん曲がりそうな臭いを充満させ行動不能にさせる。…あれはサリーの戦術に似ているな…もしやひっそり教えてたな?


 しかし、モルモルも無事ではなかった。[マジック・ミサイル]が相討ちするようにモルモルへ着弾して吹き飛ばしたのだ。これで両者行動不能だな。


 「ニエール!エコーナイトの力を見せてやるのでありますよ!」


 「言われなくても、僕の作戦通りですよ…いでよ!」


 ニエールの足元から影が消え、立体的な形として召喚された。ニエールそっくりな影は捨て身の構えでグランへと突撃する。


 「グランを守って!お願いゴーレムさん!」


 影の進行方向へチャーノのゴーレムが立ちふさがった。腕をふりかぶって影の攻撃を拳で阻止する。双方の激突によってゴーレムと影は消滅した。


 想定を超える一進一退の攻防を繰り広げるが、一番驚いていたのはロマネだった。


 (あのグランが仲間を頼っているのでありますか!?しかも連携まで完璧であります…いったい何があったのか…)


 「オラオラ!ぼーっとしてんなよ!!今までのオレサマたちじゃねぇぞお!」


 「ぐ!」


 グランの猛撃がロマネを襲うが、そこにロマネ大好きなアンセが守りに入る!


 「うおおお![ロマネを絶対に守る]!ぞおおお」


 このネタのようなスキルは、ロマネを対象にダメージをカバーする効果がある。ナイトを守るナイトってなんだよ…と思うが、これが功を奏した。スイッチするようにアンセへダメージが切り替わったので、結果的にダメージ分散に成功する形となったのだ。


 TRPGに関わらず、少数派ではあるものの、RPGにはナイト(壁)系を二人編成するという手法は、実は昔から存在する。ひとつの壁がピンチになっても、もうひとつの壁がすかさずスイッチするため、戦局の立て直しが容易になるのだ。四人編成以上のパーティーで採用されやすく、爆発力は落ちるが長期戦になればなるほど有利に運びやすい。ただし、こういった戦法は、敵の攻撃が時間で強くなっていく相手には弱い傾向がある。


 全員がナイトなので、互いに攻撃とカバーができるというメリットを全面に押した作戦によって、ジリジリとグラン陣営の体力を削る。…先程とは形勢逆転か。


 グランの攻撃を弾いて、ロマネの剣が迫る―


 「トドメであります!」


 「もしゃもしゃ…さ、させない、よ…」


 倒れていたモルモルがフラフラと走りながらも剣の軌道に入ってグランをかばう。訓練用の武器なので大怪我はしないはずだが、ぶつかったら相当痛いぞ。


 「な…!」


 ロマネは振りかぶった剣を引っ込めてバックステップするが、その隙をグランが活かす。バックステップで距離を置いたロマネへ、剣の先端を向けて特攻する。


 「うおおおお!」


 ロマネは更にバックステップし、盾を前方に構えて突撃に備える。


 「はあああ!」


 両者の剣と盾が激しく衝突し、お互いがお互いの首筋に剣を当てた――


 「……そこまでよ」


 俺の横に立っていたカルミアは、いつの間にか二人の丁度間に立っている。両手で二人の腕を掴んで剣がこれ以上進まないように固定している。


 「…ねぇ、サトルは貴方たちに、こんなことをさせるために力を与えてくれたの?」


 「そ、それは…」


 「…」


 カルミアは二人を優しく?地面に転がす。目では追えなかったが、ちゃっかり武器も回収していた。


 「…罰として、今日と明日はサトルとのお昼ご飯禁止よ」


 「そ、そんな!」


 「ひどいであります…」


 大きな喧嘩も起きたが、お互いぶつかって上手くカルミアが収めてくれた。数日後にはスタージ討伐へ出発だ。戦闘力は申し分なく育ったと思う。あとは連携だけだな…



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