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111話


 数日後、広場では真面目に特訓している冒険者候補と騎士候補の姿があった。


 何も言わず出ていったグランは帰ってきてからというもの、憑き物が取れたように振る舞うようになった。イミスと相対するときは常に周りの仲間を見て動いているし、動きも日に日に良くなっている。更に、スキルまで獲得したのだ。


 グランのクラスはバトルマスターといって、このクラスは攻撃自体に妨害や追加効果のある技を重ねることができるのが特徴だ。今回獲得したのは[受け流し]という初歩的なスキル。しかし効果はバカにできない。相手が対等かそれ以下の場合、物理攻撃を軽減することができる。格上には成功しづらいのが欠点だが、どんな技からも繰り出すことができるので、特に対人や体格の近い魔物との戦いで高い効果を発揮する。


 グランが頑張っている姿を見せ続けてからは、冒険者候補パーティーの皆もより張り切っているように見えた。その証拠に、グランがスキルを獲得してからは、それに追い付こうとするように皆スキルを獲得している。


 チャーノとモルモルは後方支援系のクラスだが、戦闘もこなしたいらしくそれぞれ作成したアイテムを使用してサポートを行っている。チャーノはゴーレム技師なので、イミスのゴーレムと合体するタイプとは異なる。つまりゴーレムを作って戦わせるタイプのクラスだ。戦闘に備えて予めゴーレムを作成し、戦いではゴーレムに命令する戦法をとる。イミスのようなタフネスさは無いが、その分ゴーレム自体の能力が高い。今はまだ見習いなので、クレイゴーレムを一体のみ動かすのが精一杯。しかし、ゴーレムの身長は作成した者の倍ほどあり、パワーは十分だろう。


 モルモルは幼い頃から拾い食いの癖があったらしく、特に薬草を見分ける能力に長けていることが分かった。サリーが作成するような、とてもキケンなポーションはできないが、この数日でちょっとした傷を回復できるポーションをいくつか作れるようになっている。戦闘はからっきしなので、戦いはサポート程度になるはずだ。


 そして、スターフィールド上では強クラスだったチャンターのロンキ。いつもはむーんむーんとか鼻歌ばかりだが、ちゃっかりスキルを獲得していた。チャンターは想いをフレーズに乗せることで様々な魔法の効果を広範囲に"再現"させることが可能。発動条件は歌うだけ。なので戦いながら歌うことだってできる。ただし、十分に育たないと覚えられるフレーズは限られているため、再現できる魔法もまた限られている。獲得したスキル…つまりフレーズは[勇気]。このフレーズは味方へバフをかけることができるフレーズだ。他のフレーズがあれば、効果は組み合わせによって変化するのがチャンターの面白いところなのだ。


 モルモルがサポートに回り、チャーノがクレイゴーレムを操作し、ロンキがバフをかけてグランが仕留める。そういう役回りを決めてイミスへと挑戦中なのだが、惜しいところで一撃が入らない。しかし、初日に比べたら、動きは天地の差でイミスも驚いていた。


 カルミアたちも順調だし、このままいけば二パーティーでそれぞれ依頼を達成することができそうだ。


 どうなるかと思ったがなんとか形になったか?と思っているところで、ちょっとした問題が発生した。


 宿のおばちゃんが何時も作ってくれる料理を、冒険者候補の皆と食べるか、騎士候補の皆と食べるかで、両派閥が言い争いを始めてしまったのだ。


 クリュの世話をするために、ちょっと目を離したらもうお互いに臨戦態勢。


 「ロマネ!お前たちはまたオレサマたちから奪うのかよ!散々良い思いばっかりして、それでも奪い足りないってのかよ!料理くらいこっちに寄越せよ!サトルたちとご飯食べるのが、今の皆の楽しみなんだよ!それを奪うんじゃねえ!!」


 「グラン、聞き捨てならないであります!!ここの学び舎は皆平等!騎士の候補生だって、たくさん勉強して努力してここまで這い上がったのであります!騎士候補になれない、頭が悪くて問題ばかり起こすグランたちの自業自得ではないのですか!!サトルさんたちとのお昼は譲れないのであります!」


 「っは!平等だ?オレサマたちがずっと不当な扱いを受けていたのが分からないのか?それに、みんながみんな賢く正しくいられると思ってんのかよ!騎士候補になれなかった枠は見捨てるのか!?」


 「騎士様がいらしたときの、我々への選定だって、普段の生活態度と成績から決められた決定事項であります!!努力をしない人に何かを求める資格なんて無いのであります!見捨てるんじゃなくて、ただの選定でありますよ!!」


 「冒険者候補のオレサマたちが努力してないって言ってんのかよ。みんな頑張っているのが見えねえってのかよ!」


 「だからその努力が足りないと言っているのであります!!」


 「その上からが気に入らねえんだよ!」


 「それはこっちのセリフであります!」


 些細なキッカケからお互いの主張がぶつかり合い、バチバチと火花を散らすようなにらみ合いが続く。先生もアタフタしているだけだし、クリュも俺の足元で自身の尻尾を追いかけ続けているだけだし……クリュは関係ないな…。さて、どうしようかな~と考えているとカルミアが声をかけてくれた。


 「…ねぇ、とめなくていいの?」


 「正直、スタージ討伐出発前に互いの確執を残すことは避けたい。しかし、ここでとめても見ていないところで騒ぎ出すのがオチだと思う。それならサリーとカルミアがいる状況で、大怪我する人が出ないように、発散させた方が良いかもね。爆発させきって、言いたいことも言い合って……そこからしか歩み寄れないこともあると思うし――」


 「おっらああああ!」


 「はあああああ!」


 激しい剣戟が会話を遮る。俺が話しているうちに、お互いに得物をとって喧嘩を始めてしまったようだ。


 お互いにクラスチェンジをした四人が派閥の代表としてぶつかり合っており、それぞれの後方で自身の代表たちを応援する生徒たち。…想定以上に冒険者と騎士という名目の隔たりは大きかったようだ。



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