表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
108/478

108話


 クラスチェンジを終えたグランたちの反応は様々だ。グランは滾った力をぶつける先を騎士候補のロマネに絞って突撃したがカルミアに阻まれて転がされているし、チャーノは無言で土いじりを始め、ロンキは相変わらずむーんむーんと鼻歌をずっと歌っている。モルモルに至ってはクラスチェンジ前と変わらず、虚空を見つめて手に持った草を食べ続けている!…分かってはいたが、協調性皆無なパーティー結成だ!騎士候補たちのナイトオンリーなパーティーと良い勝負をしている気がする。いや、むしろ連携が取れている分、向こうのほうがマシなのかもしれない…!


 「あ~…えっと、じゃあサリーさんとイミスさん、彼らのトレーニングをお任せします!俺はよさそうな依頼を探してくるので…」


 「ウン!じゃ、みんなと遊んでるネ~!」


 「ウチはグランと特訓してるよ!」


 収拾がつかない状況になってきたので、あとは二人に任せて俺はギルドへ向かう。クエスト完了のイメージが全くつかない。だがしかし!ここは皆を信じよう!


 ギルドに入り、依頼掲示板を眺める。最低限の難易度でも問題ないはず…ただ、冒険者や騎士としてゴブリンくらいは倒せるようになっていないと、胸を張って完了しましたとは言えないからな。


 張り出された依頼内容を一つ一つ吟味しているが、中々良い依頼が無い。極端に難しいか、極端に簡単な採取系しか残っていなかったので、また日を改めようと思ったとき―


 「こんにちは、少々よろしいでしょうか?」


 感じの良さそうな男が話しかけてきた。男ヒューマンの三十代半ばくらいで、立ち振る舞いから騎士のように感じる。鎧はつけていないが、腰に佩いた剣はスタンダードな直剣タイプで、鞘の口が削れており年季が入っていた。顔つきは優しそうだが筋肉質なのが分かる。ベテランの冒険者だろうか?


 「はい。どうなさいました?」


 「実は、護衛の依頼を受けた後に、先程、私の出身である村から、こちらのギルドへ救援依頼が届きまして。護衛を破棄するわけにもいかず、困っていたのです」


 依頼は一度受けると基本的に破棄はできない仕組みだ。特に護衛は時間の都合が依頼対象に合わせる必要があるため、身動きが取れなくなる。止むを得ず破棄する場合でも、ランクに影響したり違約金を支払う必要がある。


 「それは大変でしたね…村に何が?」


 「えぇ、緊急性は低いのですが…放っておく訳にもいかず…。村の家畜を襲うスタージが出てきてしまったみたいで」


 聞いたこと無い名前だな。本で確認してみよう―


 スタージ。奴は人や動物へ害をなす魔物の一種と言っていいようだ。スタージは大きなコウモリとヘビの中間に位置するような魔物で、コウモリの体に首から上はヘビ、だが口先だけは吸血のために尖っている。大きさは足の先から膝くらいまであるのが一般的で、魔物にしては小柄らしい。血液を餌としており、鋭い爪で獲物を捕まえて、相手が死ぬか、満足するまでガッチリ捕まえたまま吸血する。群れている場合が多いので、引き剥がしても引き剥がしても次々と襲いかかる厄介な魔物か…。確かにこれは家畜ではどうにもできないようだ。脅威度的に言えば、ゴブリンクラスの相手だろうが、住民が武装せず無理に戦っても犠牲がでる可能性もある魔物だろう。


 俺は本を閉じて少し考えるそぶりを見せた。男は、辛抱強く俺の返事を待っている。


 「どうですか…?引き受けてくれますか?」


 これをあの子たちへの依頼としても良いかもしれないが、問題なのは期間だな。まだ特訓中だから少し時間がほしいところ。


 「う~ん、悩みますね。このスタージは、毎日襲ってくるのですか?」


 「いえ、それが14日に1回程度の周期で現れるようになったらしく、先日村が襲われたそうなので、次はもう少し先になるかと」


 それなら、特訓期間を十分に持つことができそうだ。騎士候補と冒険者候補で力を合わせて、頑張ってスタージを倒してもらおう。もちろん引率で俺たちも出向くが、困った状況になるまでは、手を出さない。


 「少し条件をつけさせて下さい。実は―」


 俺は学び舎の子が最低限依頼を完遂できるまで育てるというクエストを進行中であることと、その子たちが今特訓中であることを話す。そのうえで、その子たちにスタージの討伐をさせてみたいことを伝えた。


 「なるほど…仕方がないですが、その条件でのみましょう」


 男は意外とあっさり承諾してくれる。故郷のことだから、少しくらい悩むかとは思ったが…


 「最初の10日ほどでしっかりと訓練して、スタージの討伐に備えます。取り漏らしがないように、俺たちも同伴するので、そこは安心して下さい」


 「えぇ、分かりました。では手付金として銀貨80枚渡しておきます。達成時にもう80枚お渡しするので、よろしくお願いします」


 「はい、よろしくお願いします」


 俺は銀貨を受け取る。丁度子供たち8人に切りよく分配可能な額だから助かった。


 男は丁寧な礼をすると、スマートな歩みで去っていく。


 そういえば、何故他の人に頼まなかったのだろうか?それによく考えたらギルドを通さずに金のやり取りしちゃったけど、これは問題ないのだろうか…


 ちょっと不思議な点もある依頼だが、子供たちに丁度良いので受けてしまった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ