107話
昨日は騎士候補たちのクラスチェンジが完了した。本日は冒険者候補たちのクラスチェンジだ!カルミアはさっそくロマネたちと広場で剣の打ち合いをしている。通常バージョンとはいえ、クラスチェンジした四人相手に涼しい顔で剣を捌くカルミアは、やはりというべきか突出した能力だと思う。一分もたたず、騎士組は転がされてしまったが、ロマネだけは根性で立ち上がり向かっていってる。
さて、冒険者組も進めなくてはな…
「よし、今日は冒険者候補たちのクラスチェンジだ!サリーさん、イミスさん、気になる子はいたかい?」
サリーはまっ先に手をあげる。イミスも見つけてくれたようだ
「はィ!アタシの杖を気に入ってくれた子がいたノ!連れてくるネ!」
選定基準がズレている気がするが気にしないことにした
「ウチも連れてくるよ!ゴーレムの良さを分かってくれる子に悪い子はいない!」
「ふたりとも、ありがとう!よろしくね」
しばらく広場でカルミアたちの訓練様子を眺めていると四人の子を連れてサリーとイミスが戻ってきた
「連れてきたよォ~」
昨日と同じように集まった子たちに、同様の自己紹介をする。こちらもやはりというべきか、冒険者候補たちのリーダー的存在であるグランがいた
「みんな、集まってくれてありがとう。俺はサトルだ。さっそく集まってもらった四人でパーティーを組んでもらう。最初に君たちをクラスチェンジさせるから、最初の一週間くらいは、広場でパーティー連携の練習をしよう。新しい力に慣れつつ、連携の練習をサリーとイミス指導でしてほしい」
「オレサマはグランさまだぜ!早くクラスチェンジさせてくれ!」
鼻をくいっと人差し指でぬぐったあと、両手を腰にあてて俺を見つめる。その目は自信とイタズラ心に満ち溢れているようだった。子供にしては体格がしっかりしていて、身体能力がずば抜けているが、ちょくちょくイタズラしてくるのもこの子だったな
次に喋ったのはボーっとした顔つきで何を考えているのかよく分からない男の子だった
「むーん。ロンキ」
……え?自己紹介、終わり?
「えへへ、この子がアタシの杖の良さを分かってくれたノ。すごいでしョ!」
なるほど…サリーのお気に入りね……うーんしかし
「むーん。むーん。むーん」
ロンキは鼻歌を歌って体を揺らしている。…もういいや、次にいこう!俺は頷いて次の子に自己紹介を促した。
「チャーノだよ~、ねぇお兄ちゃんなんで本持ってるの~なんでなんで~」
イミスがチャーノの紹介を補足する
「この子はウチのゴーレムを真似て、たった一日で形だけだけど、土で模型にしたのよ!もちろん動きはしないけど、形だけでも作れたのってすごいでしょう!とっても好奇心旺盛なのよ。ウチの酒場で働いていたら絶対人気だったわ」
手先が器用な女の子なのだろうか。チャーノは手が土で汚れており、目には好奇心が宿っていた。すると純ゴーレムクリエイター系のクラスだろうか?楽しみだ
よし、次で最後の子だ
「もしゃもしゃもしゃ…うん、草うまい」
少し太った体型の男の子だ。手には謎の草が握られており、定期的にそれを口に運んでいる。食べることに必死なのか、ずっと口をモゴモゴさせて自己紹介どころではなさそうだ。絶対にサリーが連れてきたなこれは…サリーをジト目で見ると、サリーはニコニコ顔で俺を見つめており何度も頷いた。サリーの表情は笑顔プラスドヤ顔で自信満々である。
「この子はネ!モルモルっていうノ!」
「ふ、ふ~ん…そうなんだ……え、じゃ、じゃあみんな、なりたいクラスとか相談しなくていいのかな?そのままクラスチェンジする?」
「オレサマは強くてカッコイイのがいい!騎士の奴らに負けないほど強いクラス!早くしてくれ!」
「むーん」
「モルモル今日は何食べてるの~何食べてるの~?」
「もしゃもしゃもしゃもしゃ……」
うん、見事に協調性皆無だ。素晴らしい!もう帰ってもいいかな!!頭が痛くなってきた!
「…よし、もういいや!みんなまとめてクラスチェンジだ!(投げやりバージョン)」
*対象 グラン チャーノ ロンキ モルモル のクラスチェンジを行います*
*条件を満たしていないため、クラスの選択はできません*
*チャーノ ロンキ モルモルのクラス適性が無いため、サトルのクラスチェンジ執行による補正、能力の修正はありません*
グランには適性があり、他はない結果だな。まぁある程度予想通りなのだが…クラスチェンジは本人に意思がないとどんなクラスになりたいのか、定まらない心配があるが、大丈夫なのだろうか。
「さぁ、君たちの可能性を魅せてくれ…!」
*グランは バトル・マスター へクラスチェンジしました*
*チャーノは ゴーレム技師(見習い) へクラスチェンジしました*
*ロンキは チャンター(見習い) へクラスチェンジしました*
*モルモルは 薬師(見習い) へクラスチェンジしました*
冒険者候補の皆もクラスチェンジが完了した。こちらは騎士候補たちと違って非戦闘員の生産系クラスがニ名、ゴーレム技師と薬師だ。このニ名は、必然的に後方で援護をする役回りになるだろう。
グランのクラスはバトルマスター、このクラスは[戦技]と呼ばれる技術を使う。通常攻撃に加えて、何かひとつ特殊なアクションを追加することができるのが最大の特徴だ。扱える武器も制限がなく多彩で、レベルが上がれば戦技の質も上がる。戦技には相手の武器を落としたり、転倒させたりする追加効果があり、力が拮抗している相手へは純粋に強力な能力だと思う。
この中で一般的にイメージがつかないクラスといえばチャンターだろう。これはTRPGの種類によっては強クラスに入る。チャンターは歌を歌って様々な事象を広範囲に引き起こすのが特徴だ。吟遊詩人系のクラスに近いが、チャンターは楽器ではなく、歌声で効果を発揮させるため、武器で攻撃しながら戦うこともできるのだ。レベルが上がると効果範囲と内容も強力になるが、今回はクラスチェンジの能力補正が無いため体の脆さをどうカバーするかがカギになるだろうな。