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106話


 特別なクラスチェンジでは、世界が灰色になり時間が止まったような状況になるが、通常のクラスチェンジではそんなことも起きず、淡々と進行した。俺が直接キャラクターシートに書き写す必要もない。自動的に当人が成りたいクラスへとチェンジしていく。


 「さぁ、君たちの可能性を魅せてくれ…!」


 気持ちだけでも、しっかりとクラスチェンジを行う。


 *ロマネは ナイト・オヴ・ザ・シールドウェスト へクラスチェンジしました*


 *アンセは ナイト・プロテクター(見習い)へクラスチェンジしました*


 *ピュリニーは エルドリッチ・ナイト(見習い)へクラスチェンジしました*


 *ニエールは エコーナイト(見習い)へクラスチェンジしました*


 そして、全員分のクラスチェンジが完了した。……うん?見習いがついているな。完璧とはいかなかったのか…?いやそれより重大なことに気がついたぞ!全員ナイトじゃねぇか!バランス悪いな!さっき話し合ってたの何だったんだよ!


 というツッコミが出そうになるが、本人たちは真剣に話し合って決めたようなので、黙っていることにした。しかしながら、考えれば考えるほど、全員ナイトとかバランス悪いパーティーだなという感想しか出てこない……この編成で依頼を受けるとか、頭が痛くなってくるぞ。


 一応、ピュリニーのエルドリッチ・ナイトは魔術が使えるし、ニエールのエコーナイトは、エコーと言う自身の複製の影を呼び出して戦うことができるややトリッキーなナイトだ。二人を起点に、どうにか戦術を組んでもらうしかないな。ロマネのクラスだけは、ルールブックにない初見のクラスだ。恐らくシールドウェストを守る意思のような気持ちが、クラスになったのだろう。『クラス適性持ち』も関係しているかもしれないが…。


 通常のクラスチェンジは、当人の意思が優先される。ただ明確にクラス名を思い浮かべた訳では無いだろう。きっと、『こうありたい』みたいな気持ちがクラスとして昇華され形になったんだ。俺の能力はだいたい分かってきたが、もっともっと調べる必要があるだろう。


 「う~ん、まぁ上手くいったと、思う」


 「ば、ばかな!本当に!?信じられないです!」


 ニエールは信じられないというような顔をして自身の体をチェックしている。急激な変化もあるだろうし、ビックリしているのかもしれない。


 ピュリニーも、自身に魔力が強く宿ったことを悟っただろう。自分自身の手をじっと見つめる。


 アンセはより力強くなった雰囲気になり、ロマネへマッスルポーズでアピールするが、ロマネの目線は俺だけに向いていた。…アンセを見てやりなよ!


 「ロマネ、どうしたの?」


 「…は!?いえ、なんでもないであります!!無事、自分に力が満ちていくのが分かります!不思議なことに、サトル様…いえ、サトル王が!何かしてくれたことが分かるのであります!!」


 「急だな!?しかも王!?お、王ってなんだよ…普通にさん付けか呼び捨てでも良いよ。王とかはやめてくれ」


 「っは!!承知しました!サトルお~っ…さん!!」


 その区切りだとサトルおっさんになるからやめてほしいが、もういいや。


 謎の忠誠心が目覚めた、ロマネは俺を王呼ばわりするのですぐに訂正させた。彼女は将来的にシールドウェストに仕えるのだから、俺が王じゃダメだろう。絶対領主に怒られて面倒なことになる。


 「え~コホン。これで、無事に全員クラスチェンジできたわけだが…自分の力を御することに時間を要すると思う。既にロマネは力になじんでいるようだが、足並みを揃えたいから、しばらくは訓練だ。引き続き、カルミアの指導を受けてほしい。順当にいけば一週間後くらいには依頼を受けてもらいたい。今日の所は解散にする。カルミア、よろしくね」


 「えぇ、引き続き、彼女たちを鍛えていくわ。任せて頂戴」


 時間も時間だから、冒険者派閥組は、翌日のクラスチェンジとなった。サリーやイミスはどんな子を連れてきてくれるか、今からとても楽しみだ!


 夕方には騎士組の子も混ぜて多めに作ってもらったお弁当を食べた


 ――そしてその夜。学び舎の宿泊施設のエントランスでは、今日クラスチェンジした四人が集まっていた。


 「やっぱり!!サトルお…さんは、特別な存在であった!!それにカルミアさんも、人とは思えぬ足運びと剣の振り…私達は最高の師にありつけた!!何かで恩を返す必要があると思う!!私はサトルさんの騎士になりたいと思うほど、今!感動している!!」


 ロマネが睡眠妨害ができそうな声量で皆へ声をかける。しかし、ニエールはクラスチェンジに対しては少し懐疑的だった


 「ロマネさん。待ってください…確かに僕たちは凄い経験をしたと思います。ですが、この…常識を捻じ曲げるような、神の如き能力が何の代償もなく発動しているとは考えづらいと思います。それに、僕たちは選ばれた騎士候補生です。国に尽くすべきだと思います」


 サトルを好いていることが気に食わないのか、アンセも追撃する


 「そうだぞ!ロマネは俺っちに…じゃなかった。国のナイトであるべきだろう!クラスチェンジさせてくれたのは感謝してるけどな!あと弁当が美味かったな」


 ピュリニーはどうでも良さそうだ


 「どうでもいいわよ。そんなこと…それより、私たちはこの幸運に感謝して、明日からしっかりカルミアさんの特訓を受けるべきよ。依頼を達成できなければ、この教会への援助金も出なくなるかもしれないのよ?皆わかっているの?」


 「っは!!そうでありました!皆の意見は正しい!…失言であった!しかし、サトルさんたちには、全てが終わったら、私達で何かお礼をしたい!それで良いだろうか!?そうじゃないと気が済まないのだ!」


 まぁそれくらいなら良いか…という流れで、騎士候補たちの井戸端会議が終了した。


 ロマネの心には、今までに無いような大きな揺らぎが芽生え始めている。



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