105話
広場では明らかに冒険者志望の派閥と、騎士志望の派閥に分かれて俺たちの訓練を受ける形となった。
騎士派閥ではカルミアが人気で、今はカルミアを先頭に剣を振る練習をしている。カルミアは訓練用の木刀を振りつつ、皆を見回しながら筋が良い子を探しているようだ。特に、騎士候補のリーダーの女の子のロマネが気になるようで、結構な頻度で声をかけあっている。
冒険者派閥ではサリーとイミスが人気で、冒険者派閥のリーダー的な立ち位置のグランが、イミスのゴーレム、スカーレットに何度もちょっかいを出してはイミスに叱られている。イミスは元々酒場を運営していたから、こういった元気有り余ったガキンチョ相手は慣れているのかもしれないな。
持ち前の明るさでサリーもすぐに冒険者派閥の子供たちと打ち解けて、今は魔法が得意な女の子を集めて一緒に遊んでいるようだ。クリュを頭の上に乗せたり、奇抜な杖のデザインを子供たちからいじられて笑い合っている。…目的忘れてないよね?
「子供たち、すごく喜んでいます…サトルさん、ありがとうございます」
「いえいえ、依頼ですし。俺じゃなくて皆が頑張ってくれているだけです。こういったのが普通なのでは?」
「…たまに相手をしてくれる騎士様たちは、真面目な方も多いのですが…依頼となると当たり外れが多くて、こんなに一緒に楽しそうに遊んでくれる方は稀なんです」
頑張っても頑張らなくても貰える金額が同じなら、そういった人もいるのかもしれないな。ただ、俺はこの子たちと関わった以上、この子たちの将来にしっかり貢献したい。貰えるお金は変わらないかもしれないが、子供たちの未来は変わるだろう。
夕方までのんびり過ごして、一度皆に集まってもらった。
「みんな、子供たちのお相手、お疲れ様。良さそうな子はいたかい?」
すると、カルミアがさっそく四人の子を連れて紹介してくれた
「この子たち、剣の技量に光るものを感じた。四人とも身体能力はそこまで高くないけど、技量的な側面を磨けばきっと、強くなれると思う」
紹介された四人を見ると、やはりというべきかロマネがいる。他三名は名前を知らないので改めて自己紹介してもらおう。
「っは!!わたくしはロマネであります!」
ロマネは知っている。無駄に声がでかい子だ。顔は綺麗なのに…
「俺っちはアンセだ。一番身長が高いぜ」
のっぽな男の子、ロマネをチラチラと見ながら自身の背丈を自慢している
「わたしは、ピュリニー。ロマネ姉さまと並んで美しい女よ」
少し高飛車チックな女の子だ。ロマネの美貌に対抗しているようだが、可愛らしい妹にしか見えない
「僕はニエールです。作戦立案ならまかせてください」
モノクルをくいっと引き上げて、何が書かれているか分からない本を抱え込み直す。うん、この派閥で参謀的なやつだな。
「俺はサトルだ。さっそく集まってもらった四人でパーティーを組んでもらう。最初に君たちをクラスチェンジさせるから、(恐らく普通のクラスチェンジになるだろうが…)最初の一週間くらいは、広場でパーティー連携の練習をしよう。新しい力に慣れつつ、連携の練習をカルミア指導のもと行って欲しい」
ニエールがすかさず手をあげた。俺は頷いて発言させる
「質問があります。クラスは鍛錬を積んだ者や、神殿の加護や、その道の達人から学び続けて会得できるものだと聞いています。それに、戦闘や身体能力の才能でも左右されるはずです。この短時間で僕たち四人をクラスチェンジさせるなんて無理なのではないでしょうか」
まぁそう思うよな…。
「俺の固有スキルは、それを可能にするんだ。君たちの希望を可能な限り聞いてクラスチェンジさせるから安心してほしい」
通常のクラスチェンジも相手が『クラス適正持ち』か、そうでないかで補正値が変わってくると思う。この子たちが『クラス適正持ち』かどうかは、まだ分からない。
俺は何となくだが、最近は、相手にクラス適性があるかどうかが分かるようになってきている…気がする。完全に感覚によるものだから、レベルアップで適性持ちを判断できるスキルでも欲しいところだ。ちなみにこの子たちからはロマネ以外では適性のようなものを感じない。
適性が無くてもクラスチェンジは可能だが、カルミアたちのような成長は期待しないほうが良いだろう。カルミアたちは、偶々とんでもない適性を持っていた上に、特別なクラスチェンジを行えた例だからな。
どのみち、この子たちは、適性ありでも無しでも、カルミアのような化物じみたクラスにはならないと思っている。普通のクラスチェンジだしな。
騎士候補の四人は俺のクラスチェンジができるという話を聞いて、俺を疑いつつも、互いがどんなクラスになりたいかを仲間同士で相談しだした。
何というか、さすが騎士候補。自分がなりたいクラスを言う前に、仲間と相談して決めようとするあたりが、チームワークや規律を重んじる傾向を強く感じる。
普通のクラスチェンジは、あくまで当人の意見が強く尊重されクラスが決定するから、特別なクラスチェンジのような自由度は無いし、俺は勝手に決めることができない。これはこの子たちがクラスチェンジを行う前に明確なイメージを持ってもらう時間だ。
しばらく話し合って、それぞれのクラスを決めたようだ。ロマネが俺に大きな声で報告する
「仲間のクラスが決まりました!!クラスチェンジをお願いします!!」
ロマネの仲間全員が同じタイミングで頷いて俺を見ている
「よし、心の準備は良いな!?みんなまとめてクラスチェンジだ!(普通バージョンだけどな!)」
*対象 ロマネ アンセ ピュリニー ニエール のクラスチェンジを行います*
*条件を満たしていないため、クラスの選択はできません*
*アンセ ピュリニー ニエールのクラス適性が無いため、サトルのクラスチェンジ執行による補正、能力の修正はありません*