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102話


 闇を駆ける影がひとつ。屋根から屋根に飛び移り、石畳の大きな街路を見下ろす。町中に等間隔に設置された魔道具のランプが彼の顔を照らし出した。


 まだ幼さ残る顔つきには、年相応に似つかわしくない、怒りの炎に満ち溢れている。ポツポツと道行く人たちを眺めながら、獲物を探すように呟いた。


 「ずっと、待っていたんだ…このときを。奴らは教会にあること無いことでっち上げて、お金を先生から巻き上げて、ずいぶん好き勝手やってくれた…だから、奴らは倒すべき存在だ。これは僕がお兄さんの理想を作り上げていくために、必要な第一歩」


 そのとき、大きな街路から細道へ隠れるように歩く怪しげな男を見つける。


 「間違いない…奴からは『宿敵』の臭いを感じるよ…」


 屋根伝いに音もなく、その男の背後を追い続けた。やがて、ひとつの民家に到着する。


 民家は至って何の変哲もなく、夜遅く魔道具の灯りが窓から溢れている所以外に目立つ点は見当たらない。怪しげな男は民家の扉を6回ノックし、しばらくして扉の横にあったタルを2回蹴飛ばした。すると、扉が開いて、手招きで中へと入れていった。


 「…これは当たりかな?僕とお兄さんの理想に、君たちは必要無いんだ……クク」


 フォノスは男が入ってしばらく観察した後に、屋根から地面へと着地。男と同じ手口を使って家をノックしタルを蹴飛ばす。すかさず物陰に隠れて、誰かが出てくるのを待った。


 少しの間があったが、やがて扉がゆっくりと開く。そして、剣を抜き身で持った男が現れたのだ。男は周りをキョロキョロ見回している。


 「ん?誰もいねぇな…今日は一人しか来ねぇはずだ…イタズラか?それともレイスか?」


 男は周囲に人が居ないかをしっかりと確かめて、扉を閉めるために後ろを向いた。その瞬間――


 「どちらでもないよ。さようなら」


 殺人刀で背後から素早く男を仕留める。男は音もなく倒れた。フォノスは男の持ち物を物色して、ひとつの鍵を手に入れる。


 「これが、盗賊ギルドの鍵かな?」


 鍵の装飾に暗号めいた文字が刻まれている。所々に目と手を模したマークがついていた。


 フォノスは、何となくだが、これが重要な鍵であることに気がつく。男をタルの中にしまって、家の中に入ると、意外と中も普通の家の作りであることに驚いた。


 「さっき入っていたおじさんがいない…ということは、この家には何処かへ続く場所があるのかな?」


 床や壁…他に仕掛けがありそうな場所を念入りに探すと、一箇所だけ床の色が異なる場所を見つけることができた。


 「やった…!これは見つけたよ…クク。楽しみだなぁ」


 フォノスは家から地下へと続く道に遠慮なく入った。道は一本道で、途中からは複雑化していた。少し道を間違えると、地下水路や浮浪者のたまり場に出るため、慎重に進む。正解らしき道には罠が張り巡らされている。


 「罠がある場所が正しい道。とっても分かりやすい道標だ」


 ここもアサシン特有のスキルで罠を解除、難しいものは容易く回避して進む。やがて、ひとつの貯水場へと到着した。地下の貯水場では数名のギルド構成員らしき人物が物を運んでいたり、ナイフ投げの練習をしたりしている。


 「あぁ…臭う臭う。ここだ、ここで間違いないや」


 フォノスは貯水場の天井へと素早く張り付いて、構成員の様子を伺った。


 「ヘヘヘ…先月の徴収はどうだった?トイチで巻き上げてんだろう?」


 「いいや…俺は10日で5割…トゴだぁ!!グハハハハ」


 「やってんなぁ!?ヘヘヘ…そういや、マイケルの奴は帰ってきてねぇらしいな?」


 「あぁ、孤児共の教会で揺すってんだろう。あんな場所でも揺さぶれば出すもん出すだろ。だめならガキをさらって売りゃいいんだ」


 「そりゃそーだあ!ッヘヘヘ!」


 何という下衆な会話なのだろうか。やはり生かす価値など無い。フォノスの目に怒りの炎がほとばしる。


 「[宣告]する」


 「おん?お前何か言ったか?」「え?言ってねぇが」


 「…お前は、僕の獲物となった!」


 天井から飛び降りると同時に一閃!殺人刀で、まずは一人の首を即行で飛ばす。慌ててダガーを構えようとする男の武器を、もう片方の活人剣で弾き飛ばした。


 「…な!こんのぉ!」


 男はフォノスに殴りかかるが、フォノスは上半身を器用に反らせて回避。たまらず男はフォノスの背後へ勢いよく蹴躓く。フォノスは回避と同時、足元に殺人刀を落とした。それを振り返って見た男はニヤリと笑みを浮かべて追撃の拳を繰り出そうとするが、これがフェイクだった。


 フォノスは上半身を反らせた状態から、足元に落とした殺人刀を足で器用に拾い上げ、オーバーヘッドシュートの要領で背後へ回った男の頭へと投擲した。刀は一切の抵抗なく男の頭へと突き刺さり一瞬で絶命させたのだ!恐るべし身体能力!


 「これで全員かな?さて、本命だよ…待っててね」


 フォノスは手にした鍵で、奥に続く扉へと向かった。鍵はピッタリと合って、ギルドの内部へと入ることに成功する。


TIPS:[宣告]使用はサトルが敵を認知している必要はなく、敵のカルマが悪であれば発動自体は可能。これは、サトルのカルマが善であるため。ただし、サトルが『宿敵』を認知している場合と、していない場合では[宣告]のデバフ威力は全く異なる。


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