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101話


 「おやぁ…もう一人、いたっけなぁ~!クク…ハハハ」


 フォノスは笑いながらチンピラを見下ろす


 「ぴいいい!勘弁してください!許してください!止めていただきたい!」


 「僕の友達が痛みで鳴いたとき、お前はやめてあげたのかい?」


 「そ…それは…」


 「お前も、どちらか選ばせてあげるよ…」


 フォノスは二振りの剣をちらつかせると、チンピラの首元へ当てる


 「ひいい…!せ、せめて痛み無く殺してくれぇ!」


 「良いのかい?活人剣を受けても、更生できれば生きられるんだよ?」


 「ぐ…そんな、こと!そんなことできるわけねぇだろおお!自分自身が変われねえってことくらい、自分が一番わかってんだよおお!」


 チンピラは何もできない状況で一矢報いるつもりか、がむしゃらに攻撃をしかけるが、フォノスは後ろに回り込み、ナイフの軌道は虚しく空を斬った。


 「それは、残念だ。悪は成敗しなくちゃね。お兄さんの理想のためにも」


 フォノスは禍々しい刀を構えて一閃、加えて追加攻撃で更に一閃。刀を振るう度に紫色のオーラが美しく舞う。闇のオーラは、まるで死へと誘うかのような手の形をとっていた。怪しさと美しさを調和させたような悪を絶つ一撃は、静かに敵を斬り刻んだ。チンピラは何もできず、襲いかかる姿勢のまま、自重で倒れた。……動く様子はない。声一つあげずに倒れるもんだから、念のため近づいて調べようとすると、フォノスが声をかけてきた。


 「お兄さん。それ、もう死んでるよ」


 「え…そうなの?」


 *対象 フォノスがレベルアップしました*


 しれっとレベルアップしている!ということは本当に死んでいるんだろう。よく見ると、首元に綺麗な線が入っているように見える。斬れ味が良すぎて、斬った部分と体がつながったままに見えていたってことか?…どちらの得物も恐ろしい威力だこと。今更だが、とんでもない怪物を生み出してしまったのかもしれない。


 「フォノス、助けるのが遅くなって済まなかった」


 「お兄さんがいなければ、クリュは彼奴等のせいで死んでいたと思う。この力はお兄さんがくれたものだよね?何となくだけど分かるんだ。だから、謝らないでほしいな。ほら、クリュも無事だよ」


 俺の手の中で落ち着いているクリュの体温が伝わってくる。クリュは俺を見上げて首をかしげた。その姿に癒される。俺はクリュをなでてやった。


 「バフ?…バフバフ」


 「あとで、サリーに薬を調合してもらおう。良い傷薬なら彼女の専売特許だ」


 「それなら、クリュはお兄さんに預けてもいいかな?」


 フォノスは剣を仕舞うと、背を向けた。


 「どこに行くんだ?」


 「お兄さんが目指している理想だよ」


 「教会には、戻らないのか?」


 「僕は理想を体現できる力を手に入れたんだ。教会で学ぶ必要は、もう無いよ。それに…僕は僕で、お兄さんのために動きたいんだ。平和に暮らしてても脅威からやってくるのならば、取り除かないといけないよね。平和のためだもんね」


 フォノスは意味深な言葉を並べる。問いただそうとしたが、そこで、騒ぎの音を聞いてか教会から先生たちが駆けつけてきた。…まずいな、皆が来るぞ。


 「サトルさ~ん!何かあったんですか~!」


 フォノスは俺に笑いかけ、皆が来る前に一つ言い残して去っていった。


 「お兄さん、クリュのこと…よろしくね」


 「お、おい!フォノス~!」


 闇を纏うように、去っていくフォノス。彼は一体どこへ向かおうとしているのだろうか。なんだかモヤモヤが残った状態ではあるが、皆に状況を説明しなきゃな。


 丁度、先生たちが戻ってきた。カルミアとイミスも一緒だ。サリーは居ないな…遊んでいるのかな?


 「…サトル、なにかあったの?大丈夫?」


 カルミアは倒れたチンピラ共に目をやって、すぐに俺の体をペタペタとチェックしようとする。そして俺が抱えている犬と目が合った。


 「あ、あぁ、うん。問題ないよ…。この子が襲われてたから助けてあげたんだ」


 「…そう。それなら良かった。その子は?」


 「この毛玉みたいな犬はクリュだよ。今日から面倒見るつもり」


 イミスも興味津々にクリュに手を伸ばしてなでた。


 「へぇ~!可愛い!スカーレットにも毛をつけてみようかな?そしたら愛らしさが増すんじゃないかな?ね!」


 「マスター…ゴーレムに毛をつけても、魔物か何かに間違われるだけかと愚考します」


 クリュの話で盛り上がっていると、先生が横たわっているチンピラに気がつく。あとクリュに気がついてから、物理的な距離が遠い気がする!


 「あ、あのぅ…その大男たちはどうするんですか……」


 あっそういえばどうしようかな…。フォノスが倒した人たちがそのままだったな。…どうするべきか悩んでいると、カルミアが俺の手を引っ張る。


 「…町の衛兵に話をつけて。サトルはギルドでもBランクだし、今までたくさん人を助けてきた。襲われたってちゃんと伝えれば、信じてもらえると思うわ。正当防衛なら問題ないはずよ。こっち、ついてきて」


 この日の戦闘演習は急遽中止となり、俺はカルミアについて行って、詰め所で衛兵に事情を説明した。ちなみにクリュは一旦イミスへ預けている。


 長くなるかと思ったが、すぐに開放された。なんでも、あのチンピラ共の所有物から、襲ってきた彼奴等は闇ギルドの関係者だったことが分かったらしい。ギルドBランクの実績は伊達ではないようで、俺たちの扱いも丁寧そのものであった。…自分では知らないだけで、俺たちは結構有名になってきているのかな?影響力も上がってきている気がする。


 そして闇ギルドの存在も気がかりだ。スターフィールドでは、盗賊や暗殺ギルドをひっくるめて闇ギルドという表現を使ったりする。今回の取り立てとやらも、ちょっと気になる。


 詰め所を出る頃には夕方となっていたので、一旦宿に帰ったが、結局その日はフォノスに会うことはできなかった。…彼は何処へ行ったのだろうか?



*フォノス*


*

レベル2(上昇値)

ヒットポイント20(+8)

筋力12(+2)

敏捷力21(+3)

耐久力10

知力10

判断力10

魅力13


技能追加

運動 7

機動力 7

手先の早業 9

隠密 12

*


TIPS:アサシンの技能はローグ系のクラスであるため、隠密や鍵開けなども多彩にこなせる。速度の成長は最も高いが、耐久力が低い。


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