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僕はときどき彼女よりも弱くなる。  作者: アノニマスパリピ
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今宵は月が綺麗ですね…

 僕は、何も予定のない平日を過ごしている。

そう、世間では僕みたいな人間のことをニートという。

 生意気にも、こんな僕にも彼女がいる。

 彼女と出会ったのは、それは大学を中退する3か月前、数少ない友達主催の同じ大学内の合コンだった。

彼女に対するファーストインプレッションは、正直余り良いものではなかった。

 まず、今のご時世に紙タバコを20分に一本は吸う。そして、何より尋常ではないぐらい大酒飲みだ。

言葉遣いこそまともであるが、時々他愛のない事で笑う時、歯に明らかにタバコのヤニがべっとりついているのがチラつく。低俗な話題には身を乗り出して突っ込んでくるのに、ちょっとでもアカデミックな話になると、途端にタバコとお酒で一人の世界に入り込む。

 よくまあ、仮にも国立大学に入れたものだと逆に感心して、まるで動物園でパンダでも観るような気持ちで彼女を見ていた。

 コンパも終盤に差し掛かった頃、誰ともなく”2次会どうする?”という流れになった。

僕は、正直今回はいい出会いがなかったので、何か理由を付けてさっさと家に帰って寝ようと考えていた。

一次会の居酒屋を出て、2次会参加の是非を取っている時にその後の人生が変わる一言が彼女の口から出てきた。

 「私、今日は月が綺麗だからきっと運命の人がこの中にいると思うんで2次会参加します」


 その言葉を聞いた時、正直、僕は背中がゾクっとした。言うまでもなく”今宵は月が綺麗ですね”というのは、夏目漱石によるILOVEYOUの訳である。勿論、仮にも県内ナンバー1の国立大学の学生である僕らにとっては、常識ではあるものの、まさか彼女の口から、こんなロマンティックなWORDが不意に出てくるとは予想だにしなかったので驚きを隠せなかった。それに彼女のよく観察すると、少しエロテッィクな口元は性的に僕を刺激した。 

 その後、僕たち2人はみんなに1次会で帰るふりをして、気づいたときには彼女のワインの空き瓶とタバコの吸い殻だらけの部屋で結ばれていた。


 これが、彼女と最初に出会った日の出来事である。





 それが僕が死ぬ6カ月前の出来事である。  続く


 


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