5(サンテ視点)
「……サンテ、不味いかもしれないわ」
俺の向かいに座る愛しい伴侶のアリーナが書類片手に呟いた。
あれはフェルマ家を継いだ弟の調査書類だろう。
俺にとってかなり申し訳なく心苦しい事を以前アリーナにしてしまった。
アリーナはマークとイザベルの関係性から以前の俺たちのような事が起こらないか心配していたので、マークがイザベルだけを連れてフェルマ領に行ったと知ってかなり警戒していたのだ。
「イザベルがなんでか婚活を始めたみたいなんだけど、マークが邪魔をしているみたい」
「俺がフェルマ領に行ってみる?」
「ええ。そうね。……いや、皆で行きましょうか。ミシャルももう11歳。他領を見せてあげましょう」
そうと決まれば二人はさっさと準備を始めた。
◆◆◆(アリーナ視点)
現在フェルマ公爵邸の応接室。
ここには私、サンテが並んで座り、向かいに義弟のマークが座っている。
イザベルにはお茶を出してもらった後は席を外してもらうため娘のミシャルの相手をお願いしている。
「単刀直入に言うわ。貴方、イザベルの見合いの邪魔をしているわよね」
私の言葉に私たちが来た理由がわかったのか表情を固くした。
「その様子なら当たっているのね。ねぇ、何で邪魔してるの? 一応言うけど私たちは責めている訳じゃないわ。あなた達に私たちの二の舞をさせたくないだけ」
あれは本当につらかった。信頼していた相手だったからこそ許せなかったし辛かった。
私がサンテと向き合えるようになったのはミシャルがいたからだ。
その後はサンテにたまに意地悪をして悲しませる事で心に折り合いをつけている。
こんなに自分が酷い人間だなんて知りたくなかった。こんな思いを二人には味会わせたくない。
「……わからないんです」
マークは迷子になった子供のような表情をしていた。
「イザベルに対しての気持ちが?」
サンテが弟の肩に手を添えて励ますように優しく声をかけた。
そう、サンテは本当は優しい男だ。私の好みになるためにずっと剣を振るっていたのもわかってるし、今では弓部隊の隊長を務めている。良い面をわかっているのにそれを見つけるとそれ以上の悪い面を探してしまう。
「ならもしもを考えるんだ。イザベルが別の男に笑いかけるのが許せるか?イザベルが他の男と腕を組んでいても許せるか?…イザベルが他の男と結婚式をする事が許せるか?」
マークはずっと首を横に降っていた。
……良かった。マークは気付いたようだ。無自覚だったら危ういがマークは兄弟の中で、一番思慮深く慎重だ。実るにしろ実らないにしろ自覚すれば悪いようにはならないだろう。
私は知らずほっと息をはいた。
こちらは設定も話も考えてある次男夫婦視点でした。
ぼかして書いてますが小説に載せるとしたら月の方にしないといけなそうな話です。
ぼかして書いてあるプロットならあるので、需要ありそうなら載せてみようかなと思います。