3(イザベル視点)
マーク様のお供としてフェルマ公爵家に入って一年経った。
最初の頃は慣れない領主の仕事に四苦八苦していたが、一年経つ頃には薬草研究に時間を充てられるぐらいに余裕がうまれた。
今日は薬草研究の取引で久しぶりに王都に戻って来ていた。
マーク様から久しぶりに時間が取れたのだから両親や友達に会っておいでと暇をいただいた。
「……お見合い、ですか?」
久しぶりに会った母から言われた言葉に戸惑う。
「ええ。マーク様とは本当に恋人関係ではないのよね?」
何度も聞かれた台詞に再度頷く。
「なら、早く結婚した方が良いわよ。あなた達恋人同士じゃないかってまことしやかに囁かれているのよ」
母に言われてびっくりした。そしてよくよく思い返してみる。
マーク様と初めて会ってからずっと一緒だった。子供の頃は友達として。私が成人してからは使用人として。そしてマーク様が公爵になる際は王都から私だけ連れていった。
仕事着もマーク様の色である緑色のを支給されている。
……なるほど。確かに。
私としては不敬かもしれないがマーク様の事は弟のように思っていたのでまったく思い至らなかった。
そこ待て考えて私は先ほどまで後ろ向きだった婚活に前向きになった。
このまま私と噂になっていたらマーク様にお嫁さんが来づらいだろう。
本当はこのままマーク様の側で夢のお手伝いをしたいが、噂になるくらいならきっと私の未来の伴侶もマーク様の未来の伴侶も私たちがこのまま一緒にいるのは面白くないだろう。
そう考えて一抹の寂しさが襲うが首を降って振り払う。
マーク様は公爵、お子様は爵位をひとつ落とした侯爵になるが、どちらにしろ高位貴族だ。私なんぞが足を引っ張る訳にはいかない。
私は母の申し出に承諾した。