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「コレをどこで?」
魔女様はリンゴの「ような」それを一瞥すると、視線を僕に戻し静かにたずねた。
「コレは今村で流行っているルーシェルラという果実です。新種のリンゴだと言われていますが、ぼ、僕は・・・」
魔女様に話す為に来たというのに、僕は言葉に詰まってしまう。
僕の感は間違っていないと思う。
そう、思うけれど、それを魔女様が知った後、村にどんな影響があるのか分からない。
分からないことは、不安だ。
そう、でも魔女様が知らない所で何かが進んでしまったら、それだってどうなるか分からない。
村の他のみんなは何も言っていなかった。
つまり気付いていないっていうことだ。
だから僕はこうするしか無いと思って境界線を越えたんじゃ無いか!
僕は決意を新たにまっすぐに魔女様を見つめ返す。
魔女様はコレをどこで、と聞いた。
ただの果実だと思ったらそんな聞き方はしない。
やっぱり魔女様には分かるんだ。
誤魔化す必要は何もない
「僕はコレをサイラスさんから貰いました。
この果実、ルーシェルラは新種のリンゴなんかじゃない。
普通のリンゴに魔法がかかったモノです!
サイラスさんは魔女様と村との約束
『自然物に魔法をかけることを禁ず』を犯していると考えます。
そして、村の皆はソレに気づかず、この果実を口にしている。
だけど、僕がそう言った所でそれを証明することも、どういったものなのかも分からない。
畏多くも魔女様には、この村の不実を心からお詫びするとともに、
どうかこの果実へかかった魔法がどういったものであるのか、今後どうように対応すべきなのかをお教えいただきたいのです!!」
僕は緊張しながらも、しっかりと口にした。
小さい頃からずっと絶対破ってはいけないと言われてきた約束。
それを(サイラスさんは分かっているとは思うけど)村の皆んなが知らないまま許容しようとしている。
魔女様がこれを村の皆んなの総意と思ってしまわないよう、
僕は自ら報告すべきだと思ったのだ。
「よく分かった」
魔女様は一言そう言った。
そして、ひどく楽しそうに笑顔で
「では村を焼き払うとしよう」
そう言った。