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シラユキヒメ

作者: こ豆太郎

 昔々あるところにそれはそれは美しいお姫様がおりました。姫はその類い稀な美貌のために継母である王妃の妬みをかい、王妃は猟師に姫を森で殺してしまうよう命令します。しかし、不憫に思った猟師が王妃への報告を偽り、姫様の命を助けました。命を救われた姫様は森で出会った7人の小人とひっそりと暮らすのですが、姫の存命を知った王妃が自ら行商に変装し、小人たちが留守の間に姫様に毒林檎を食べさせてしまいます。小人たちが家に帰ってみるとそこには倒れたまま動かない姫の姿がありました。

驚いた小人たちが姫の体を揺すりますが、姫は目を覚ましません。しかし胸に耳を押し当てると、ゆっくりとですが確かに鼓動は聞こえます。どうしたらよいかわからない小人たちは、森一番の賢者と呼ばれる老人を呼び、姫の容体をみてもらいました。

 老人は意味ありげにフムフムとうなずくと、これは魔女の呪いだといいました。呪いを受けた姫は年を取ることなく、眠り続けるというのです。そしてこの呪いは運命の殿方からの口づけでしか、解けることはないというのでした。

 小人たちは老人の話を聞いて頭を悩ませました。姫にとっての運命の殿方というのがさっぱりわからなかったからです。話し合いの末、ものは試しと小人の一人が姫に口づけを試みました。しかし小人が顔を近づけると姫の顔はそれてしまいます。右から近づけば左に、左から近づけば右に、顔を押さえつけ近づこうものなら、姫の拳が小人の頬を打ちました。小人全員が、おまけに老人もが姫に口づけしようと試みましたが鼻息一つ届けることができません。さんざん頬を打たれた小人と老人はつまりこれが運命ではないという事だ。ということにしました。

 その後小人たちは姫のために雑貨屋を営み、買い物に来るお客に男がいると、買い物の割引券と引き換えに姫に口づけをお願いするようにしました。しかしどの客が試しても姫と口づけすることはできません。中には強引に姫の唇を奪おうとする輩もいて、そのたびに姫の磨き上げられた拳がお客の顎を打ち抜くのでした。そんなとき小人は割引券に添えて真っ赤な林檎をサービスし、お客の機嫌をとるのでした。

 日が経つにつれ、7人の小人が交代で切り盛りする24時間営業の雑貨屋は巷で人気になり、店名を「セブンドワーフマート」と決めてからは川の畔店、山の麓店など店舗を増やしていきました。森の老人のドミナント戦略やら何やらで、王国中にセブンドワーフマートの看板が立つ頃には7人の小人はとても裕福になり、鉄道やホテル、はてはアパレルショップまで展開された事業の資産を合わせると、一国の王のそれを上回るとさえ言われました。しかし姫にとっての運命の相手はいまだに現れません。

 そして月日はながれ、年老いた小人たちが己の余命を悟り始めたころ、月に一度の本社会議で一人の小人が言いました。「もう余命幾ばくもない私たちでは姫のお世話を続けることができない、それにここまで大きくなってしまった事業を継いでくれる跡継ぎもいない。これから先どうしたものか。姫さえ目覚めてくれれば、お世話の心配もなくなり、事業の後継者もできていうことないのだが」。それを聞いて残りの小人たちは大きくうなずきました。

 その会議は眠り続ける姫を安置した寝室で行われていたのですが、その愚痴ともいえるその発言に小人達が大きくうなずくと、ベッドを眠っていた姫が大きく伸びをして目を覚ましたのです。その後小人たちの事業を引き継いだ姫は末永く幸せに暮らしましたとさ。

 おしまい。 



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